水の咆哮 第2章-5
モノレール駅から約1km離れたビルの屋上。そこには、皆葉たちを襲撃した部隊の残党が残っていた。
狙撃手が1名、観測手が1名、そしてリーダーたる男が1名いた。
「目標Sに挙動あり。魔術を行使するのか、髪が赤く染まっています」
「赤――”火”の魔術を使うつもりか。
――何らかの動きがあり次第、タンクローリー及び同伴者Mを撃て」
リーダーは命じる。
「了解」
『了解』
目の前にいる部下2名と、無線からもう1組の返事が来る。
無線の先にいるのは、同じく狙撃手と観測手が1名ずつ――30名の襲撃者たちの内、最後の予備班である5名だ。その内の1人が、襲撃者たちのリーダーを兼ねている。
リーダーは、25名の人員を使って皆葉たちを消耗させ、最後のタンクローリーと狙撃によって、”詰め”にかかろうとしていた。
「……」
NINJAたちの集中力は極限にまで高められている。少なくない犠牲を払うことで、ようやく皆葉を追いつめられているため、失敗は許されない。
1秒1秒がいやに長く感じられる中、変化が起きた。
『――魔術を停止してやろうか?』
無線から、声が流れてきた。
「?」
『魔術による防御を解除してやろうかと言っているのだ、下郎ども』
怒気をはらんだ声――神皆葉の声が響く。
「どういうつもりだ?」
リーダーは返答する。
『なーに。このまま硬直していても面白くないからな。だったら、少し折れてみるのも良いと思ってな。というわけで、
――解除したぞ』
その一言とともに、どこからともなく、神皆葉の手には拳銃が握られていた。
「はっ、たかが拳銃で、この距離をどうにかできると思うのか?」
『確かに。だが、誰がこいつで貴様等を撃つと言った?』
「何?」
リーダーは困惑する。その時、
「目標Sに動きあり!」
観測手が報告する。双眼鏡に映る神皆葉は、
『撃つのは……こいつだ!』
引き金が引かれる。
銃口から弾丸が放たれ、同時に神皆葉の髪は赤色から黒へと変わる。そして、
「なん……だと?」
放たれた弾丸は、同伴者M――円麗に命中。着弾と同時に、円麗の身体は業火に包まれていった。
困惑するNINJAたちを後目に、高らかな笑い声が無線機から流れてくる。そして、
『――さあ、覚悟はできているだろうな、下郎どもが!』
大いなる怒りが込められた咆哮が、木霊した。




