水の咆哮 第2章-3
2か月近くたちましたが、更新です。
午後8時50分。
モノレール駅――その東口側の入口にて均衡を保っていた状況は、一気に崩れた。
姿を隠した円麗が、巧みにNINJAたちの隙をつき、次々と無力化させていった。
同時刻。
神皆葉は、NINJAたちの無線でのやりとりを聞きながら、双眼鏡で戦域を確認していく。
その最中、装着しているインカムから声がこぼれてきた。
『こちら麗。東口側の10人及び西口側の10人の無力化を確認。でも、残りの5人は確認できない。そっちから見える?』
「こちら皆葉。上からでも見えない」
2人は疑問を覚える。
無線機から聞こえてきた情報から判断すれば、残る襲撃者は5人いるはずだ。
しかし、その姿は見えず、襲撃が収まったかのように思える。
「……おかしい。負傷者を回収するわけでも、襲撃を継続するわけでもなく、何もしないなんて」
『たしかにそうね。何らかの策を講じているは……ず!?』
「麗さん?」
動揺する声を最後に、通信が切れた。
「いったい何が――ッ!?」
* *
「……まさか、こんな手で来るなんてね」
麗は目の前の状況に追いつめられていた。
急速に迫る驚異――それは、大型のタンクローリーだった。
運転手はなく、自動操縦で麗に向かってきている。
「そこまでして、私たちを始末したいってこと!?」
わざわざ大型のタンクローリーを特攻させようということは、おそらくその中にはガソリンが満載されていることが予想される。
たとえ逃げたとしても、タンクローリーの規模からして、爆発の影響は免れることはできない。しかも、
「自分たちの味方がいるっていうのに!?」
麗は吼える。
仮に逃亡に成功したとしても、倒れているNINJAたちは確実に死ぬ。これまでの皆葉と麗の行動から、2人は敵を殺傷しない――助けるために行動するだろうという思惑から、NINJAたちはこの攻撃手段に出ている。
すなわち、自分たちの味方を人質に、NINJAたちは2人を始末しようとしている。
(どうする?)
麗は思考する。
自身の持つ手札は、にわか仕込みの魔術と、NINJAから鹵獲した小火器、サイドアームのエアガン。それらを駆使して、目の前の驚異に対抗できるか。
(時限装置が仕掛けられてたら、さすがに私には無理。とりあえず停止させてから、彼に任せるしかない……か)
覚悟を決めて、麗は魔術による光学迷彩を解く。
「イメージ、イメージ……」
麗は精神を集中させる。これから起こそうというのは、規模が大きい魔術のため、微細な調整が要求される迷彩を維持し続けたままでは不可能だからだ。
麗は地面に手を触れる。タンクローリーが激突するまで、残り500メートル、時間にして20秒もない。
「……リキファクション!」
地面に”地”の魔術の輝きが走る。
麗の手から向かってくるタンクローリーの方へ、その軌道上のアスファルトが茶色の魔力光によって歪んでいく。固体から液体へと、その形状が変えられていく。
(タンクローリーのサイズはおよそ11メートル。全部を覆えなくても、空転させられるだけのスペースを液状化できれば……くッ!)
麗の表情が苦痛に歪む。タンクローリーを停止させるためには、長さだけでなく深さも要求される。魔力の急速な消耗によって、麗の疲労が加速度的に増えていく。だが、
(やってやるわよ。私は自分の意思でここにいるんだから。あのトーヘンボクで遊ぶために、私はやってやるわよ!)
麗は堪える。既に15メートルは液状化しており、後は空転させられるだけの深さが出せるか。
「残り10、9、8、7」
目測で、残り時間を図る。
「6、5、4」
タンクローリーが眼前に迫ってくる。
「3、2ッ!」
2秒前のカウントダウンと同時に、麗は魔術行使をやめ、即座に側転――タンクローリーの軌道上から免れる。そして――
「……どうにか、上手くいったわね」
タンクローリーは丁度、先刻まで麗がいた場所で、車輪を空転させて停止していた。
「さて、後始末は彼に任せると――ぐッ!?」
身を起こそうとした矢先、麗は苦悶の声を漏らす。右足が鮮血に染まり、焼かれたように痛みを訴える――狙撃だ。
「……まさか、この瞬間を狙……って」
麗は回避行動に移ろうとするが、右足の負傷により力が入らなかった。鈍った動きの前に、麗は格好の獲物だった。
今度は胴体を撃ち抜かれ、自らが液状化させた地面に沈み込んでいった。
何とか続きは、今月中に更新したいと思います。




