水の咆哮 第2章-2
4か月ぶりの更新になります。
お待たせしてすみません。
そこは研究区にある一室だった。迷彩服を着た男が1人、机においてある無線機からの続報を待っていた。
午後8時25分。
無線機から、一つの報告が流れてきた。
『——目標Sとモノレール駅にて対峙。3名で応戦したものの、目標Sの猛攻により負傷、撤退。目標Sはモノレール駅で待機している。おそらく、停止したモノレールを動かそうとしている模様』
「わかった」
迷彩服の男——作戦の指揮官は報告を聞くと、対応策を練る。
「……残存隊員は、モノレール駅に向けて前進せよ」
数分の思考の後、指揮官は判断を下す。
『了解』
無線機からの返事を聞くと、指揮官は無線機を机に置き、カップにあるコーヒーを口に入れる。
(モノレールを動かす……確かに、魔術師ならできるだろう。だが、何か引っかかる)
指揮官は考える。なぜ、モノレールを動かそうというのか。
商業区から新緑高校まで、まともに歩けば、2時間程度はかかってしまう。ならば、モノレールを使おうという発想はあるだろうが、魔術師ならば他の手段をとることもできるはず。
(目標S——神皆葉は、魔術によってあらゆる無機物に生命を付与し、機械なら自動操縦させられると聞く。ならば、モノレールに限らず、そこらにある自動車を手に入れれば簡単なはず。それをしないのは——)
情報を整理していく指揮官。不可解な行動から、一つの回答が導き出される。
「——そういうことか」
男は懐からスマートフォンを取り出す。
「私だ。用意してもらいたいものがある」
午後8時40分。
皆葉が占拠したモノレール駅、その周囲にNINJAが集合しつつあった。
総勢25名——皆葉によって撃退された隊員を除く、予備班も含めたこの作戦に参加している全隊員がこの場にいた。
彼らはロケットランチャー等の重火器を手に、与えられた任務——神皆葉の襲撃に臨もうとしていた。
「B班10名は東側から、C班10名は西側入り口から進行する。A班5名は、この場で待機。必要に応じて重火器で攻撃」
『了解』
現場の指揮官が命じる。
NINJAたちは、各々の班に応じた動きを開始する。
* *
「……」
1人の男が、モノレール駅の周辺にある高層ビル——その屋上に立っていた。
男は漆黒の衣を身に纏い、モノレール駅周辺の顛末を見ていた。
モノレール駅に陣取る神皆葉は、地上から来るNINJAを狙撃銃で攻撃している。
しかし、NINJAは一方向からだけではなく、モノレール駅に東西2つある入口を、二手に分かれて進行している。
当然、一方向に気を取られれば、もう片方がおろそかになる。皆葉がカバーできているのが東側のみで、西側にも注意を払っているものの、取りこぼしがでてしまっている。
狙撃を免れた8名のNINJAが、西側入口からの進入に成功した。
「なるほどな」
男は観察する。その眼は、モノレール駅の外観を透し、内部を映し出している。
皆葉が注意を向けていない方の西側の入口は、丁度改札口のところに分厚い岸壁——バリケードが構築されていて、人が出入りできる隙間はない。外側から崩すには、爆発物を使うしかない。
NINJAたちはバリケードに爆発物を設置しようとするが、
「ッ!?」
突如、バリケードに手をかけようとしていたNINJAに電流が走る。
「なんだ?」
唐突の異変に、他のNINJAらは困惑する。しかし、続けざまに1人、2人と、同じような手口で彼らは気絶させられていく。
「そこか!?」
気絶させられた隊員の順番から、おおよその位置を割り出し、そこにアサルトライフルの銃口を向ける。だが、
「くッ!」
無事な隊員は二人。彼らはお互いに向けて、銃口を向けてしまっている。
「ざーんねん」
嘲る女の声が響いた。同時に、2人のNINJAに異変が起きる。
『ぐあッ!』
1人にはこれまでと同じく電流が走り、もう2人にはその胴体に小さな弾丸が突き刺さっていた。
2人は前のめりに倒れていった。
「さて、後はどれだけ来るか」
NINJA以外誰もいない空間に、1人の少女が現れた。少女——円麗は、電流を使って倒した男の正面で、エアガンを構えていた。
麗は他に敵がいないことを確認すると、身につけているインカムに手を触れる。
「こちら麗、西口の敵5名の無力化に成功。そちらは?」
『こちら皆葉、東口側は3名を無力化した。残りは遮蔽物に隠れて狙撃できない』
「了解。西口側の残党を相手しながら、仕掛ける」
「わかった」
通信が終わる。麗は無力化した5名を拘束しつつ、適当な武器を奪っていく。
「さあ、頑張りますか」
麗は身につけている指輪——魔術媒介に意識を向ける。指輪は黒い輝きを放ち、麗の周囲を闇で覆っていく。全身が闇に包まれると、麗の姿は周囲に同化して見えなくなっていた。
「”神の道化”ではない小娘が、中々おもしろいことをやってのけるものだ」
遠くから観察している黒衣の男は、独りごちる。
円麗が行っているのは、”闇”の魔術による光学迷彩。
通常、光が対象物によって照らされることで、人は物体を視認できる。ならば、光を遮れば、視認することはできなくなる。
しかし、単純に”闇”を纏えば姿を隠せるかというと、今度はその”闇”が違和感を生じさせてしまい、完全に姿を隠すことはできない。
麗は、現在の環境に合わせた、不自然にならない程度の”闇”を発現させることで、完全ではないものの極端に視認しづらくしていた。
「もう1人の小僧は——単純に狙撃しているだけか」
黒衣の男は、東口側に視線を向ける。
神皆葉の狙撃を受けたNINJAたちは、一様に手足を撃たれていた。
被害を受けた隊員の手当のため、無傷な隊員はそちらに注力せざるを得なくなる。
「お綺麗なやり口だが、果たしていつまで通じるかな?」
嘲うように、男はつぶやく。
——その時、異変が起きた。
もう少し、皆葉&麗対NINJAの戦いが続きます。
次の更新は、できれば1か月以内にできればと思うところです。




