↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
水の咆哮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/222

水の咆哮 第2章-1

「さて、そろそろ準備はできた?」

 円麗は、自分の準備を終えて、神皆葉に問う。

「ああ。僕も十分だ。だが、少しやっかいなことになっているようだ」

「というと?」

 麗の疑問に、皆葉はタブレットを取り出して、画面を見せる。そこには、モノレールの運行状況が示されていて、


『商業区にテロリストが潜伏しているという情報あり。確認がとれるまで、モノレールの運行は停止』


「つまり、学校まで戻るには、徒歩しかないと?」

「まともな移動手段なら、残念ながらそうなる。他の手段がないか調べてみたけど、タクシーを含めて何もかもが封じられている。おまけに、外出自粛のお達しも出ている」

 皆葉はタブレットの表示画面を切り替えて、警察のHPを麗に見せる。


『商業区にテロリストが潜伏している情報を入手しました。市民の方々は、今いる建物から出ないようにしてください。警察が順次確認していきますので、確認ができましたら外に出ていただけます』


「要は、組織立って私たちの行動を妨害しているわけね」

「そういうこと。おとなしく従っていたら、多分ここに警察が来るまでに、決闘の時間が過ぎてしまう」

「ちなみに、君がやった”契約術式”で約束が護られないと、どうなるの?」

「——おそらく、強制的に、設定した場所に飛ばされるはず。でも、その過程については把握できていない。瞬間的に学校に移動しているのか、それとも強制的に飛行させられるのか」

「それは……どちらにしても、マズいわね」

「ああ。瞬間移動なら、相手が待ち構えているところに突然放り出されてしまえば、無防備なところを襲われてしまう。強制飛行だとしても、ルート上におそらく、NINJAが待機しているだろうから、格好の標的になる。だから」

「——もう、行くしかないわけね」



   *   *



 とある高層ビルの屋上に、人影が2つあった。彼らの手には、スナイパーライフルと双眼鏡があり、人気のないビル群を監視していた。

 

 午後8時20分。監視しているビルの入り口から、人影が現れた。

「目標Sが出現。商業区へ向けて前進している模様」

 双眼鏡を持つ男は無線で報告する。

『了解した。狙撃は可能か?』

「周辺に障害物はなし。いつでも可能」


『よし——撃て』


 命令が下されるや否や、引き金が引かれた。

 スナイパーライフルから弾丸が吐き出され、人影向けて飛んでいく。


距離はおよそ1キロメートル。中々難しい距離ではあるが、熟練の人間なら成功率は高い距離だった。この2人についてもベテランの技量があるため、通常なら成功するはずだった。だが、


「ッ!?」

 狙撃手は驚く。狙いは正確だったにも関わらず、弾丸はわずかに人影から逸れ、地面に着弾してしまった。

 観測手は報告する。

「狙撃失敗。続けて第2射に移る」

『了解。工作班による攻撃を開始する。隙を見て撃て』

「了解」

 通信が終わるやいなや、狙撃手は空薬莢を排莢し、次の弾丸を装填する。

「目標は……何!?」

 観測手が再び双眼鏡を手に取ると、人影は驚くべき行動に移っていた。

「嘘だろ……?」

 狙撃手も驚く。

 人影は、狙撃班のいるビル目がけて、ルート上にあるビルの外壁を走っていた。通常の物理法則ではありえない、それこそ重力の方向が変わっているかのような疾走だった。

「慌てるな。結局は、ただ走っているに過ぎない。落ち着いて撃て」

 観測手は告げる。

「ああ」

 呼吸を整え、狙撃手は狙いを定める。

 観測手の言うように、目標は一直線に走っているに過ぎない。ならば、採ることのできる行動は限られてくる。

「十分に引きつけて——撃て」

 目標との距離が近づいてくる。500メートル。400、300、200……

 カチリ。およそ100メートルのところで、狙撃手は引き金を引いた。

 弾丸は、正確に目標の胴体めがけて飛翔していく。



 ビル群の外壁を走る人影——神皆葉は、弾丸を意に介すことなく、ビル同士の隙間を横走りのまま跳躍していき、立ち向かって駆けていく。コンマ数秒の世界で、皆葉は採るべき行動を選ぶ。

 走りながら、耳にあるピアスに手を触れると、ピアスは鉤爪のついたロープになる。

 皆葉に迫る弾丸が、およそ10メートル手前まで来た時、皆葉は横に向けて跳んだ。弾丸は虚空を通り抜けていく。

 宙に身を投げた皆葉は、ロープを投げた。投擲先は、2人の人影があるビル——付近の街灯。鉤爪は街灯にしっかりと固定される。

「うおおおおおお!」

 ロープを両手に握り、皆葉は振り子運動で宙を舞う。2人の人影があるビルめがけて反動を活かして跳躍——同時にロープはピアスに戻る。そして、

「——ッ!」

 懐にあるトランプを手にし、空中ですばやく2枚を投擲する。

「がっ!?」

 カードが2人に突き刺さった瞬間、両者とも身体に電流が走り、気絶させられる。2人が倒れると同時に、皆葉はビルの屋上に着地した。



「さて、こんなところか」

 狙撃班を無力化した皆葉は、2人の装備を奪っていた。武器弾薬の他に通信機器を探すが、2人が所持していたのは無線機のみで、この襲撃作戦を把握できるものはなかった。

「敵の規模は不明——なら、予定通り動くしかないか」

 皆葉はビルを後にし、建物の側面を駆け下りていった。



 *   *



「随分派手にやっているわね」

 午後8時25分。神皆葉から5分程遅れて、円麗は動き始めた。

 皆葉が囮となって縦横無尽に動き回り、皆葉を狙う敵を背後から麗が挟撃する、それが2人の導き出した作戦だった。

「そろそろ私のことも忘れてくれたかしら——ん?」

 鞄に入れてあるスマートフォンが振動する。

「神奈ちゃん……なるほどね」

 神奈からの伝令——敵の規模と状況が記されていた。

「敵の位置は分からないけど、彼が上手く動いてくれれば」

 麗は懐からエアガンを取り出し、皆葉が駆け抜けた跡に続いていく。



 *   *



 人通りのなくなった商業区——商業施設が続くビル群のいくつかに、NINJAの構成員がいた。

 彼らは無線機で相互に情報共有し、神皆葉の動向を補足していた。

『狙撃班沈黙、目標Sはビルの側面を走って移動中』

「ビルの側面だと!?」

 物理法則を無視した行動に、NINJAの構成員は一様に動揺する。

『落ち着け。目標が魔術師といっても、敵は小僧が一人なだけ。我々が束になってかかれば、仕留められる!』

「了解」

 各々の持ち場でNINJAたちは、武器を構える。


『目標はモノレール駅を目指している模様』

 続報が届く。

「よし、行くぞ」

 モノレール駅で待機していた3名が動き出す。

 3名の内1名は双眼鏡を構える。双眼鏡は、ビル群を駆け抜ける人影——神皆葉を捉えた。

「目標の到着まで距離——600」

「了解」

 2名はアサルトライフルを手に、ビル群の方に銃口を向ける。

「距離——500、いや400!?」

 神皆葉は、常人ではありえない速度で走っていた。地上より不安定であろう、ビル群の側面という状況下にも関わらず。

「落ち着け、目で追えない速度じゃない。カウント0で打ち込むぞ」

 神皆葉の姿が双眼鏡に頼らずとも見える距離まで近づいてきた。双眼鏡を構える隊員はそれを手放し、アサルトライフルを手に取る。


「……撃て!」


 3人による十字砲火が始まる。敵が魔術師である以上、生半可な銃撃では防がれる可能性が高いので、NINJAはタイミングをずらすことによるリロードの空白を埋めるより、制圧力を重視した。しかし、

「ッ!?」

 神皆葉は銃撃が始まった瞬間、道路向かいにあるビルに向かって横向きに跳躍していた。

「くそッ!」

 同時に射撃をしてしまい、かつフルオートだったため、3人のアサルトライフルは既に空だった。あわててリロードをするが、その瞬間、


「うおおおおおお!」


 向かい側のビルに飛び移った神皆葉は、今度はNINJA3名がいるモノレール駅に、跳躍してきた。

「撃てー!」

 リロードを終え、神皆葉に銃口を向ける。既に神皆葉は、彼らがいるモノレール駅に足を着けていた。

 混乱が続く中、NINJAは再び十字砲火を試みる。

「ふん!」

 神皆葉は左手を眼前に突き出す。すると、弾丸は神皆葉を避けるように左右に逸れていく。

「撃て、撃てえ!」

 銃撃の効果がないのは既に理解しただろう、だがNINJAは混乱のただ中のせいか、冷静な判断ができなかった。アサルトライフルの弾倉が空になると、それを手放し、ハンドガンで銃撃をする。

「無駄なことを」

 神皆葉は左手をつきだしたままつぶやく。アサルトライフルの銃撃と変わらず、ハンドガンの弾丸もあさっての方向に消えていく。

「撃て、撃て、撃て……」

 既にハンドガンの弾倉も空になり、引き金を引いてもハンドガンのハンマーは空を切るばかりだった。だが、NINJAは願うように引き金を引き続ける。


「——」

 神皆葉は呆れたような表情を浮かべ、ゆっくりとNINJAに近づく。

「————はあ」

 溜息と共に、近くにいた一人の男に、神皆葉の拳が突き刺さった。

「がは……」

 腹部を殴られた男は悶絶し、昏倒する。

 続けて、もう一人の男も同じく、殴られる——昏倒する。そして、

「あんたが指揮官か?」

 2名の隊員に指示を出していた男に向けて、問いが投げかけられた。

「あ、あ……」

「指揮官かと聞いている」

「ち、違う。こいつらを指揮してはいるが、全体の指揮官は他にいる」

 戦意を失ったのか、男は質問に大人しく応える。

「なるほど……よし」

 神皆葉は意識のある男に近づくと、


「僕の質問に応えてもらおう」


 男を殴り、気絶させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。