表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータス『0』の観測兵 ~クラス転移を離れた少年は、砲火と魔法の異世界で昇進させられる~  作者: ハルキーノ
第三章 ”自己”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/128

四章十七話 羽黒承がいない隊列

《辺境者の歌》 四章 十七節

『欠けた名は隊列の後ろで、足音の数を一つ狂わせる。』


2374- 王都外縁集合所 三郷視点


 羽黒承がいない隊列は、少し歩きにくかった。


 人数は足りている。


 荷も足りている。


 任務票もある。


 それでも、列の後ろのあたりが、なんとなく物足りなく見えた。誰か入るあてがあるわけでもないのに。なのに、三郷は何度も振り返りそうになった。


「三郷」


 桐谷が呼んだ。


「前」


「見てる」


「見てない」


「見てるって」


 言いながら、三郷は前を向いた。


 見てはいる。


 ただ、前を見る時に、後ろも一緒に見ようとしている。


 それが駄目なのだろう。



 任務票は厚かった。勇者班、と上に書かれている。羽黒の名前はない。


 当然だ。当然なのに、そこを確認してしまう。


「戻る場所くらい、見つけてるだろ」


 昨日、そう言った。


 言ったからには、そう思うしかない。


 思うしかないことと、本当にそう思えていることは違う。


 三郷は荷紐を締め直した。


 少し強すぎた。


 袋の口が歪む。


「締めすぎ」


 佐々木が言った。


「緩いよりいいだろ」


「中の瓶が割れる」


「……それは困るな」


 三郷は紐を少し戻した。羽黒なら、最初からそう言っただろう。


 いや。言う前に、たぶん瓶の位置を変えている。



 出発前の点呼で、名前が並んだ。三郷弦。桐谷幸。


 佐々木宗助。山崎才我。ほかにも、いつもの名前が続く。


 羽黒承。その名は、呼ばれない。


 呼ばれないことに慣れたらまずい、と三郷は思った。


 でも、慣れないままだと、前に進めない。面倒くせぇな、俺。声には出さなかった。


 出したら、桐谷に聞かれる。聞かれたら、たぶん面倒な顔をされる。



 隊列が動き出した。


 足音がそろう。


 そろいすぎていて、逆に一人分のずれが分かる。


 三郷は笑った。笑うと、前の二人が少し肩の力を抜く。なら、笑っておけばいい。


 そういう使い方なら、まだできる。王都外縁の門が近づく。


 羽黒がいない隊列は、今日も前へ進む。進むしかない。


 その言葉だけは、あまり好きになれなかった。


――――――――


面白かったら、下記のリンクから評価やレビューをいただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/822139841314440520/reviews

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ