六章十二話 零のそばの微かな値
《王録》 六章 十二節
『零のそばで、微かな値が布の下に灯る。』
翌朝、もう一度東側を回った。
見落としがある気がした。
それでも行った。
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瓦礫の中に、ゼロではない生命があった。
最初、目の錯覚だと思った。
この場所で、この状態で、生命がゼロではないことは考えられなかった。
近づいた。
肉塊だった。形は人間だと分かる。でもそれ以上の識別は——できなかった。
表示は、ゼロではなかった。
極めて低い。でも、ゼロではなかった。
喉の奥が、変な音を立てた。理解より先に、体がそれを拒んだ。
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名簿を確認した。
生命の表示と、名前を照合した。
高橋桜華。
不死のクラスメイト、という話は聞いていた。
聞いていたけれど、この状態で確認することになるとは、思っていなかった。
生きているというその一点だけで、隣の名前も分からない遺体たちとまるで違う扱いを受ける。それが正しいのか、まだ判断がつかなかった。それでも、指は無線機へ伸びていた。
救護班を呼んだ。一言だけ言った。
「まだ生きてる」
自分の声が、平坦だった。
表示を見てしまった以上、黙っている選択はなかった。見なければ、たぶん動けなかった。
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生命のゼロと、ゼロではない生命が、同じ場所にあった。
どちらも正直だ。表示は嘘をつかない。
準備など関係なく、それはそこにある。
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