日記43 決着! ②
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「何故その力を見せてくれなかったんだ」
ヴァレリウスは、首が今にも落ちてしまいそうな程の穴が、喉に開きながらカルロッタにそう言った。
「……見せられるなら、すぐ見せますよ」
「そうか、契約魔法か。まあ、納得だな。目の前にして分かる。お前の力は驚異的過ぎる。そこにいるだけで世界の法則が僅かに乱れている。お前は気付いていないだろうがな」
ヴァレリウスの喉は完全に再生すると、何度か首を動かしてきちんと繋がっていることを確認した。
「しかしいきなり首狙いか。戦いたくないと言う割りには、随分殺意が籠もった一撃だ。こちらもそれに答えよう」
ヴァレリウスの鉄の翼が大きく羽撃くと、撒かれる粉塵の量も増えた。彼の背に装着された黒い箱が持つ魔法か、その粉塵はヴァレリウスの意思の通りに動いていた。
その直後、彼の指先から小さな赤い輝きが発せられた。万一にも、正面から来ればカルロッタに当たることは無いが、それにしてもその輝きは恐ろしい程速かった。
カルロッタの類い稀な動体視力を持っていても、その動きを目で負うのは相当な負担が掛かっていた。
すると、赤い輝きが撒き散らされた粉塵が密集した箇所に入ると、その粉塵の中で複雑に乱反射を繰り返し、不規則な軌道を描いた。
ようやくその粉塵の中から脱出したと思えば、ヴァレリウスは始めからそれを予想してのか、その先にまた粉塵が密集していた。
更にヴァレリウスは無数の赤い輝きを指先から発すると、カルロッタの周りには赤で彩られた無数の線の軌道が刻まれた。
その内の一つがカルロッタの背後目掛けて素早く空を走ると、カルロッタは驚異的な反射神経で即座に防護魔法をその場に展開した。
しかし、その輝きはカルロッタが即座に展開した何重にも重ねられた防護魔法を容易く貫き、彼女の背の左下、脇腹の辺りを更に貫いた。
してやったり、ヴァレリウスの表情は正にそう言っていた。
その赤い輝きは、まだ何百と残っている。もしその全てが一斉にカルロッタを襲えば……しかしヴァレリウスは、それでも彼女を倒せないと思っていた。
そして、その予想は極めて正確だ。恐らくカルロッタは、このままヴァレリウスを無視し、魔法兵器に向かうことも可能なのだろう。だが、それでは結局ヴァレリウスが妨害、もしくはカルロッタの仲間を狙う。
きっとヴァレリウスはそうするだろうとカルロッタは予想しており、更にヴァレリウスはカルロッタはそう予想するだろうと予想していた。
二人が思い描いている互いの性格は極めて正確で、それでいて完璧。故に、カルロッタはここから逃げない。故に、ヴァレリウスはここから離れない。
「ならばここで死ね」
ヴァレリウスがそう言うと、赤い輝きは不可解な軌道を描き、カルロッタを襲った。
「貴方みたいな人がいるから……!」
カルロッタの言葉の直後、自身に向かって来る赤い光線の全てがその場から消えた。
いや、消えたのでは無い。その全てがカルロッタの遥か上空に転移魔法で移動させられ、赤い光線同士が衝突し、相殺し合っていた。
「こんな無意味な戦いばかり、世界に溢れる!」
「無意味な戦い等ある物か!!」
ヴァレリウスは自らの魔法が無力化された怒りよりも、カルロッタと戦いの最中、言葉を交わすことに喜びを感じていた。
「逆に何故、お前は闘争に身を委ねない! それ程の力! それ程の才能! それ程の血統! 戦いの為の全てが揃っていながら、何故お前は戦わない!! カルロッタ・サヴァイアント!!」
「こんな無意味な戦い、私も! 誰かも! 世界すら! 貴方以外望んでいない!!」
「ならばそれを戦いで否定してみせろ!!」
カルロッタは超圧縮された火の最上級属性魔法を白い杖の先から放った。一本では無い。彼女の周囲に浮かぶ宝石の腕達も自らの肉で作った宝石の杖を構え、そこから全く同じ、いや、"高貴な魔法石"の効力でより強力になった一撃をそれぞれ放った。
ヴァレリウスは自身に向けられた五本の魔法に対し、飛び交う粒子を更に集めた。
その粒子とカルロッタの魔法が激突した瞬間、その粒子によって魔力が乱れ、消失するまでは行かずとも威力は大きく減衰していた。
そのままヴァレリウスはカルロッタの魔法を自分自身の魔法で方向を捻じ曲げ、地面へと落とした。
「貴方の破滅願望を叶える為の戦いで、何人死ぬと、誰が死んだと思うんですか!」
「そうか! 気の毒だったな! こうやって謝れば満足か? こうやって謝罪すれば満足か!! それとも、死で償えと!? ならば私を殺してくれ!! お前になら、良い! 凄く、かなり! 非常に! 良いッ!!」
直後、ヴァレリウスは口を大きく開くと、そこから発色の強い青色の煙を自分の体が隠れる程吐き出した。
一吸いすれば体が硬直し、二吸いすれば血液が固まり始め、三吸いすれば脳に血栓が出来、数分の内に死に至る。
そんな煙を、ヴァレリウスは自分自身の魔法で縦横無尽に操り、カルロッタの周囲を囲った。
煙の包囲はカルロッタの呼吸を妨害しが、彼女はすぐに自身の周りに台風の様な暴風を発生させ、その煙を操るヴァレリウスの強制力以上の力で、煙を発散させた。
「カルロッタよ! それは優しさでは無い! それは無知と言う!」
「貴方はそれ以上に愚かじゃ無いですか!」
「ああそうだ! 私は無知で蒙昧な愚か者だ! だが、だからと言ってお前が聡明になる訳でも無いだろう!!」
「私が何を知らないって……!」
「世界さ! 不条理さ! 無意味なことだ! 世界の全てに意味があるのでは無い! 神は意味を持ってこの世界を作り出したと言うが、そんな物は眉唾物だ! 意味すら無い世界こそ、真なる自由意思が横臥出来ると思わないか!!」
「自由だからって何でもかんでも――」
「『やって良い訳が無い』と!? ならば聞こう! 誰が私を罰する! 誰が私を止める! お前は何方にもなれると言うのに!!」
カルロッタは酷く嫌悪感を示した表情を浮かべ、ヴァレリウスはそんなカルロッタに若干の高揚感を覚えた。
「自由意志! これこそ、嘗て星皇が望んだ世界のあり方、人のあり方だ! よって人々は自由を謳歌し、また自由意思すら獲得するに至った! 人々は容易く善を行い、しかし人々は罪を犯す様になった!」
「何が……何を、言いたいんですか、貴方は!」
「罪を犯した者は裁かれる! だが、誰がその罪を裁く! 神か、星か!? だが私は未だ裁かれない! 人々は自由に善を成し、自由に罪を犯す! 罪を犯せば罰せられると言うだけで、誰にも止める権利は無い! ならば、なればこそ! 私を、いや、俺を! 解放兵団の俺を! 裁いてみせろォ!!」
ヴァレリウスがまた青い煙を口から吐き出し、それを手で触れると、煙は粘土の様に固まった。
彼はもう片方の手で空中を叩くと、本来カルロッタ程の技量が無ければ作れない、空中に魔法陣を刻む芸当を見せた。
それとほぼ同時に、カルロッタの周囲に全く同じ魔法陣が何十も刻まれた。
魔法陣の形から推測するに、彼が得意とする空間属性の魔法だとカルロッタは悟った。しかし、それにしては魔法陣の形に違和感を持つ。
カルロッタの警戒の最中、ヴァレリウスは固めた青い煙を、槍投げの様に思い切り投擲した。しかしそれはカルロッタに向けてでは無い。自分が刻んだ魔法陣に向けて投げたのだ。
その固まった煙は魔法陣を通り抜け、カルロッタの周囲に刻まれている魔法陣から速度と魔力を増して、また次の魔法陣に向けて飛んでいた。
「一辺倒な攻撃ばかり!!」
「ああ、通じるとは思っていないさ!!」
煙の固まりは、何度も魔法陣を通り、瞬間移動を続けながら速度と魔力を増していくと、遂には固める魔法の効力が耐えきれなくなり、半ば無理矢理の形で崩壊した。
崩壊と同時に、蓄えた魔力と威力は破裂し、カルロッタの反応を容易に追い越す程の速度で広がった。
初めて、この戦いで初めて、カルロッタは命の危機を知った。
ただの魔力、言ってしまえばただの、単純な魔力の爆発。だからこそ彼女は反応出来なかった。
衝撃となった魔力はカルロッタの体に触れた瞬間、抉れる様な傷を与えた。ようやく意識が追い付いたカルロッタが防護魔法を展開した、更にその瞬間、ヴァレリウスは拳をその場で突き出した。
カルロッタとの距離は決して遠くなく、しかし拳が届く程近くも無い。
だが、その拳の先が新たに刻んだ魔法陣を通り、また新たにカルロッタの後頭部の近くの空中に刻まれた魔法陣から、そのヴァレリウスの拳が現れた。
予測不可能、つまり、回避不可。自身の体を改造し、一般的な亜人と同等の身体能力を引き出せるまでになったヴァレリウスの拳が、カルロッタの無防備な後頭部を思い切り殴った。
簡単に意識が彼方へと飛び、カルロッタの頭の中は真っ白になった。
その一瞬、時間にして一秒にも満たない刹那、ヴァレリウスの猛攻が彼女を襲った。
魔法陣を通して、ヴァレリウスは執拗にカルロッタの頭に拳を叩き込み続けた。その間も決して魔法の手も緩めず、無防備となったカルロッタの肺の中に、青い煙が入り込んだ。
更に赤い輝きが放たれ、絶体絶命と言える状況まで落ちてしまった。
だがその瞬間、カルロッタの意識が回復した。
カルロッタは瞬時に状況を察すると、まず肺の中から風属性の魔法の応用で青い煙を無理矢理吐き出した。
既に決して少なくは無い量が血中に溶けたのか、彼女の意識は戻りたてだと言うこともあり、少しだけ頭の中がぐちゃりと様々な色が混じり、視界が揺らぐ感覚を覚えた。
向かって来る赤い輝きは前と同じ様に転移魔法で上空へと追放した。そして、また迫り来るヴァレリウスの拳は単純に防護魔法で防いだ。
「ソーマの野郎が作った万能結界が効くと思うな!!」
ヴァレリウスの叫びと同時、カルロッタの防護魔法に激突した彼の拳が白く爆ぜた。
爆ぜた拳が直撃すると、カルロッタの周囲を囲う防護魔法はあっと言う間に崩壊した。その拳の威力では無い。
だが、カルロッタも無策では無い。拳程度なら、今の意識が朦朧としている彼女の動体視力でも簡単に避けることが出来た。
そのまま一気にカルロッタは降下すると、"偽者"を使い何時もの可愛らしい自分の精巧な偽物を作り出しそれを一気に上昇させた。
更にもう一体、先程のと同じ形の偽物を作り出し、それは転移魔法によってヴァレリウスの背後、更にその遠くに移動した。
そのまま、上昇しているカルロッタの偽物は『黄金恒星』を、ヴァレリウスの後ろにいる偽物は『白銀衛星』をヴァレリウスに向けて放った。
辺りは、多くの熱気と多くの冷気によって、空気が歪み暴風が吹き荒れた。その中間にいるヴァレリウスは特にその影響を受けており、その場で命を保つだけでも困難な、地獄とも言える環境を作り出していた。
彼は左右から迫り来る黄金と白銀の輝きに目を灼かれながらも、その思考は決して止めなかった。
彼の魔法、"空に憧れた少年"は、ウルリッヒの魔法と同じく、力の方向を捻じ曲げるのに限界がある。
この両方から迫る星天魔法は、何方か片方を相手にしても捻じ曲げ避けることは出来ないだろう。
残された道は、迎撃か、逃走か。
迎撃が不可能なことを、ヴァレリウスは良く知っていた。その威力を、その存在を、間近で目撃した数少ない人間なのだから。
星皇の御業、それと同等の威力を引き出すなんて不可能だ。
だからこそ残されたのは、逃走。しかしこの戦闘から逃げることは出来ない。それは自分のプライドが許さないし、カルロッタへの冒涜にもなる。
よって、逃げるのは戦いでは無く、二つの魔法から。
逃げるべき方向。単純に考えるのなら、上だろう。本物のカルロッタは下に、二体の偽物は左右に遠く離れている。なら、安全なのは上。
しかし、わざわざカルロッタが逃げ道を残す程、生意気で小賢しく、狡賢い女性だとも、ヴァレリウスは思わなかった。
つまり、この状況での最適解は――。
ヴァレリウスは、下で待ち構えているカルロッタに目線を合わせ、にこりと笑みを見せた。
その笑みが一瞬で狂気のそれになると、ヴァレリウスは危険を顧みず、本物のカルロッタに向けて一気に加速した。
「下手な誘いだな!」
この後の展開を、ヴァレリウスは大凡予想出来ていた。
下で本物のカルロッタとの戦闘中、偽物のカルロッタが二体とも攻撃を取り辞め、一気にこちらへ攻めて来る。背後を突かれたヴァレリウスは、絶体絶命となる。こんな所だろうと予想していた。
しかし、彼も無策で突っ込んだ訳では無い。
見れば、カルロッタの偽物の周りにヴァレリウスの鉄の翼から舞う粒子が集まっていた。その粒子は魔力を反射する、つまり、偽物の魔法は大きく乱され、ヴァレリウスには届かない。攻撃の手は、一手遅れる。
ヴァレリウス、そしてカルロッタ程の実力であれば、その一手の遅れすら勝敗を決する理由になる。
勝った、それが決まる程では無いが、ヴァレリウスはその予感がしていた。
だが、不思議なことに、本物のカルロッタは微動だにしない。そこに、ヴァレリウスは重大な違和感を覚えた。
次の瞬間、世界は大きく変わった。
「『固有魔法』」
その声は、不思議なことに、上から聞こえた。カルロッタの偽物では無く、更にその上。
ヴァレリウスが咄嗟にそちらへ視線を向けると、そこには本物のカルロッタと全く同じ容姿の彼女がいた。
その瞬間、ヴァレリウスは悟った。
下にいるカルロッタは、偽物だと。
始めの偽物を作り出した瞬間、カルロッタは不自然に急降下した。安全を考えるのなら転移魔法でも問題は無いはずなのに、わざわざ降下を選んでいた。
恐らくその瞬間、本物のカルロッタは今の自分とそっくりの偽物を作り、それを急降下させ、下に待機させた。
そして、何らかの魔法で気配や、姿を消したカルロッタが上で待機し、攻撃の機会を待っていたのだ。
想像が及ばなかった、ヴァレリウスはそんな自分を恥じた。そしてカルロッタに向けて、またもや尊敬とも言える関心と、愛おしさと、期待の感情を言葉で発した。
「大好きだァ!!」
ヴァレリウスの上空にいるカルロッタは、無慈悲に呟いた。
「"我君臨せし大聖堂"」
厳かつ厳かな白い壁は何処か神聖だった。壁際に複数の祭壇が並び、美しき彫刻や絵画が飾られていた。
上を見上げても中々天井が見えず、ステンドガラスから眩しいくらいの光が差し込んでいた。
そこには白い花弁がひらりはらりと舞っており、心地の良い歌と香りが漂っていた。
本来は、ソーマの『固有魔法』。カルロッタは体験し、ある程度ソーマの人となりを知っていた為、ようやく発動出来たのだ。
しかし、完璧では無い。齢十八のカルロッタが、五百年以上を生きている人物の心情を理解すること等出来ないのだから。
よって、その効力はソーマのそれと比べて酷く矮小で、自分以外の人物の魔法を支配力は微々たる物だ。
だが、自分の魔法を強化するだけで、充分。
ヴァレリウスは咄嗟に、自分の体からルテーアを溢れさせた。
ヴァレリウスはルテーアを自分の体内で生み出すことが出来る。しかしそれを操り、『固有魔法』を操るまでは行かず、行けなかった。
よって、ただ自分の体から溢れさせ、結界魔法の応用で自分の周りにルテーアを漂わせた。
その影響で、ヴァレリウスの周囲だけだが、『固有魔法』の効力が著しく弱まった。
だが、あくまで弱めるだけ。無効化までは至らない。
だが、既にカルロッタは、ヴァレリウスがルテーアを扱えることを知っていた。どれだけ抑えても、僅かにヴァレリウスの体から漏れているのだから。
瞬間、上空のカルロッタは指揮棒の様な白い杖を上に掲げると、ステンドガラスから差し込む眩しい光よりも、強く輝く光が数百、数千、数万と現れた。
それは、夜空すら昼にする星々の輝き。五百年前、ヴァレリウスはその星々を目にしたことがある。
多種族国家リーグが、帝国を名乗る直前の独立戦争の時。当時の覇権国家の凡そ三十万の軍隊を壊滅させた滅亡の星々。その、単純で、伝説の魔法の名は――。
「"煌燦の流星群"」
ルミエールから渡された、星天魔法の全てが記された魔導書。その内の一つの魔法をようやく解読出来たのだ。それがこの一つ、"煌燦の流星群"である。
数多の星の輝きは単純な魔力の塊ではあるが、星天魔法と言うだけあり威力は桁違い。カルロッタが愛用する単純な魔力の塊の数十倍の威力が、その一発一発に込められている。
更に"我君臨せし大聖堂"の効果により、その威力は何乗にも膨れ上がる。
ヴァレリウスは、半ば本能的な感覚で防御の体勢を取った。決して間違いでは無い。
幾ら威力が凄まじい物であったとしても、ヴァレリウスの周囲に近付けば『固有魔法』の効力は著しく減衰し、更に周囲を漂う粒子により魔力は乱れ、例え星天魔法でも威力は大きく減少する。
その程度であればヴァレリウスの黒い箱が持つ魔法で迎撃も出来れば、自分の独自の魔法で軌道を捻じ曲げることも可能だ。
遂に、ヴァレリウスは星皇の魔法を防いだのだ。今まで藻掻き、何度も何度も手を伸ばし、その度に山嶺の高さを知った。
だが、遂に、ヴァレリウスは星皇の魔法に手が届いたのだ。
「どうした! どうした!! どうしたァ!! 無意味な戦いを終わらせるんだろ!? 俺も倒せないでどうする!! そんなので魔王を殺せると思うか!!」
カルロッタは何も答えない。
そこに、ヴァレリウスはまた違和感を覚えた。
言葉を発さない程の集中力を見せているのは見て分かる。だが、一切の感情すら見せないのは違和感を覚える。
感情を隠す理由は何だ。また、何かを狙っているのか。しかしこの状況で、何を狙うと言うのか。
この状況では、一見ヴァレリウスが不利。短期的に見ればその通り。
しかし、見て分かる通り、ヴァレリウスは防御に専念すれば、カルロッタには彼を殺せる術が無い。長期的に見れば、ヴァレリウスが圧倒的に有利。
カルロッタが幾ら魔力総量が桁違いでも、『固有魔法』と『星天魔法』の同時使用を続ければ、何れ限界が訪れる。ヴァレリウスの想定では、一分以内に。
カルロッタもそれには気付いているはずだ。
「……そう、お前も気付いているはず。いや、待て。気付いていながら、何故……。……不味いっ!! 何か!! 何かが不味い!!」
それに気付いた瞬間、ヴァレリウスの背後に隆々とした気配と魔力が突如として現れた。
明確な敵意、圧倒的な熱。ヴァレリウスの背に現れた彼は、その拳を、たった一人自分だけが信じる正義を込めて力強く握った。
ヴァレリウスが反応するよりも先に、その拳は無抵抗のヴァレリウスの左頬に叩き込まれた。
その衝撃に遅れ、更にその数倍の力を発した"力の男"が発動した。
「言っただろう!」
マンフレートはそう叫んだ。
「必ず俺が、殺してやると!! ハーッハッハッハァ!!」
「このッ……なり損ないがァ!!」
「なり損ないに一撃入れられる気分はどうだァ!!」
一瞬、ヴァレリウスはマンフレートの攻撃に防御を割いた。その一瞬で、カルロッタの魔力の塊が複数ヴァレリウスの体を貫いた。
その一瞬の硬直、更にマンフレートはヴァレリウスの体に連撃を繰り出した。一発一発には勿論"力の男"が発動しており、流石のヴァレリウスもその連打に死を感じた。
「俺を……俺を、侮辱するなッ!!」
ヴァレリウスが左腕を薙ぎ払うと、マンフレートの体は一瞬で『固有魔法』の外に移動させられた。
その直後、カルロッタは『固有魔法』を解除し、ヴァレリウスに笑みを向けていた。
してやったり、その笑みからはそんな感情が見え隠れしていた。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
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