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魔法使いちゃんの予定無き旅  作者: ウラエヴスト=ナルギウ
第三章 ノルダ合衆王国
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日記43 決着! ③

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 闘争。


 それは本来、何かを守る為に行われる。


 自分の命、誰かの命、飯、土地、財、愛、恋。


 そう言う意味では、やはりこの戦い、歪と言わざるを得ない。


 マンフレートの拳は、またもやヴァレリウスの顔面に叩き込まれた。


 ヴァレリウスは疑問に思っていた。何故、自分よりも技量、魔法、その全てで劣る、この男に圧倒されるのか。


 そしてそれを、屈辱と、彼は捉えた。カルロッタとの嗜好の戦いを、その闘争で悦に浸っていた彼は、その邪魔をして来たマンフレートを心底軽蔑した。


「俺とカルロッタの間に挟まるなァッ!! 筋肉団子ォッ!!」


 一瞬の隙を掻い潜り、ヴァレリウスはマンフレートの顔面を鷲掴んだ。


 その瞬間に、ヴァレリウスの掌は巨大な黄色い爆発を起こした。だが、マンフレートは爆破の瞬間、自慢の防護魔法が発動し、致命的な一撃は避けていた。それがまた、ヴァレリウスの怒りを買った。


「このッ……!! 何処まで私を不愉快にさせる!!」

「戦いとはそう言う物だ! まさか五百年も生きていて知らんはずもあるまい!!」


 戦いとは、相手を追い詰め、自分を勝利へと向かわせることが重要である。ならば相手にとって不利となる行動を起こすのは寧ろ推奨される。


 まさかヴァレリウスが、それを知らないはずも無く。


 そしてカルロッタは、この場の誰よりもそれを理解していた。


 怒り心頭で、兎に角マンフレートを先に始末したいとばかり思ってしまったヴァレリウスに産まれた、心の隙。


 意識の外から襲い掛かった、何よりも強烈な衝撃。それがヴァレリウスの右腰辺りを貫いた。


 無数に放たれたカルロッタの魔力の塊、本来であれば簡単に防ぐことが出来ただろう。心が、戦い以外に向いてしまったからこそ出来てしまった、付け入る隙。


 ヴァレリウスは空間魔法で即座にその場から離れ、一度体勢を整えた。


「……あの、あいつが邪魔だ。嫌な所で掻き乱してきやがる……」


 ヴァレリウスは恐ろしい形相でマンフレートを睨み、しかし先程の失態を繰り返さない為にカルロッタにも意識を向けていた。


 マンフレートは足下に防護魔法、いや、この場合は結界魔法と呼ばれるだろう。結界魔法を足場として、空中で立っていた。


 つい先程思い付いたこの使い方だが、意外にも上手くいったとマンフレートは内心燥いでいた。


「さぁ、貴様の所為で時間が足りん! 早急な決着と行こうか!! ヴァレリウスゥ!!」


 マンフレートは猛々しくそう叫んだ。


 その、その叫びに、ヴァレリウスは付け入る隙を見出した。ヴァレリウスの顔には、不敵な笑みがあった。


「随分女々しい」


 ヴァレリウスはそう言い放った。続けて彼は言った。


「魔法とは確かに一部女性的な物ではあるが、魔力さえあれば万人が使える法であり、術だ。それを、女の手助けを得てようやく俺に……。実に情けない」


 戦いとは、相手を追い詰め、自分を勝利へと向かわせることが重要である。ならば相手にとって不利となる行動を起こすのは寧ろ推奨される。


 ならば、口から出る挑発すら、戦術の一つであろう。


「男らしくあれとは言わないが、弱気としか思えないな! 名は何だったか、ああ、そうだ! マンフレート! なぁ、マンフレート!! お前もそう思うだろう!!」


 ヴァレリウスは、マンフレートの発言からある程度の性格を予想していた。


 大きな誇り、自信、しかしそれで支えることでようやく壊れかけの自分を支えている程の、弱々しい心。


 ヴァレリウスの発言は、その弱々しい心に刃を突き立てる行為。それがどうなるかは彼にも分からないが、何かしらの変化が現れるのは確信していた。


 そこが、更なる隙となる。


 カルロッタは、少なくとも『固有魔法』と星天魔法の同時使用で疲労しているはず。あの場から動かず、一瞬の隙だけを狙って攻撃を仕掛けて来るのが良い証拠だ。


 だが、疲労しているのはヴァレリウスも同じ。マンフレートの連撃と先程までのカルロッタの猛攻により、彼もまた隙だけを狙って先手で攻撃するしか無い。


 そしてこの中で、唯一マンフレートだけが場違い。実力が伴っていない。だが、この状態なら容易にヴァレリウスの命にまで拳が届く。


 均衡状態、無策で動けばそのまま押し切られる。


「なあマンフレート! やってみせろ! その猛々しい力で! 俺を!」


 その挑発に、マンフレートは――。


「くだらんことをする」


 冷静に言葉を返した。


「挑発のつもりなら無意味だ。今の俺には、勝利しか見えていない!! ハーッハッハッハァッ!!」


 カルロッタは、勝利よりもマンフレートの感情を優先した。ヴァレリウスへの勝利よりも、ヴァレリウスに憤り、また正義を燃やしたマンフレートの為に、自分が不利になろうとも彼の感情を優先した。


 なら今度は、マンフレートが感情よりも勝利を優先する番。


 苛立ち、侮辱、それを感じなかった訳では無い。しかし、それすら飲め込める信頼が、互いに交わされていた。


「行くぞカルロッタ!! 俺が合わせよう!!」


 マンフレートの叫びとほぼ同時に、カルロッタは杖をヴァレリウスに向けた。


 だが、今のカルロッタの調子は良いとは言えない。シャルルとの戦いでは、その戦いに自分にとっての価値すら見出し、もう二度と味わえないと断言出来る程の最高の精神状態も合わさり、あの状態ならリーマとの戦いでも一矢報いることすら出来たであろう。


 だが、今は寧ろその逆。この無意味な戦いに辟易としており、山岳の高度や、極寒によって、精神面も好調とは言えない。


 まだ経験の浅いカルロッタにとって、その実力の多くは精神状態に大きく左右されてしまう。彼女ならではの弱点と言う訳では無いが、明確に、戦いの練度が上がれば致命的と成り得る、悪癖と呼べる代物。


 今のカルロッタの実力は、彼女自身の実力の幅で見れば底辺に近い。カルロッタ本人もそれを自覚しているからか、消耗している状態で、何処まで戦えるかと不安になっていた。


 だからこそ、まずマンフレートは勇気を見せた。


 マンフレートは自分の足下に作り出した結界魔法を大きく広げ、ヴァレリウスにまで届く足場にした。


 その上を全力で踏み込み、全速力で突進した。


 彼がその場で拳を振るうと、"力の男(マハト・マン)"が発動し、空中を走る衝撃がヴァレリウスに向かっていった。


 その衝撃は、ヴァレリウスの粉塵すら吹き飛ばし、ヴァレリウスの体に激突した。


「空間属性……では無いな。この感じ……何だ、全く……! 不可思議な魔法を使う!!」


 ヴァレリウスの鉄の翼から撒き散らされる粉塵は、魔法を跳ね返す。しかし、マンフレートの"力の男(マハト・マン)"は、少々事情が異なる。


 例えば魔法で作り出した炎、その火は魔力を燃料としている為、魔法を跳ね返せば当たり前だが炎も散る。


 だが、マンフレートの魔法は、魔力で衝撃を作っている。その衝撃は魔力では無いのだ。故に、ヴァレリウスの辺りを舞う粉塵の効力は無力化される。


 大雑把に言ってしまおう。ヴァレリウスの対カルロッタを想定していたこの装備の天敵、それがマンフレートの"力の男(マハト・マン)"である。


 ヴァレリウスの体がほんの僅かに蹌踉めいたその一瞬、カルロッタがヴァレリウスの背後に転移魔法で現れた。


 だが、ヴァレリウスは右手の小指を背後のカルロッタに向けると、そこから赤い輝きが発せられ、それがカルロッタの額を撃ち貫いた。


 しかし、そのカルロッタは額を貫かれたにも関わらず動き続け、ヴァレリウスに両手を向けて風の最上級魔法を放った。


 ヴァレリウスはすぐに悟った。


「クソ、偽物か!」


 ヴァレリウスは即座に魔法を発動し、吹き荒れ、体を捻じ曲げ山すら削り取る風の向きを大きく変えた。


 しかし、流石最上級魔法。一筋縄では行かず、制御して攻撃に転ずるよりも、ヴァレリウスは脱出を優先した。


 だが、ヴァレリウスが風の渦から逃げた先に、マンフレートが拳を構えて飛んでいた。


 カルロッタが巻き起こした風に背中を押され、マンフレートは自身の全速力以上の速度でヴァレリウスに迫った。


 脱出を優先した為か、逃亡の為には一瞬の思考が生まれる。その一瞬が過ぎるよりも速く、マンフレートの渾身の拳が、ヴァレリウスの背中に叩き込まれた。


 そして、マンフレートは声高だかに叫ぶのだ。


「"力の男(マハト・マン)"!!」


 直接、ヴァレリウスの体に叩き込まれた衝撃は、ヴァレリウスが情けなくも悲鳴を大きく発する程の威力を誇った。


 彼の鉄の骨、鉄の肉をまるで硝子の様に叩き壊し、衝撃は鉄の翼にまで広がり、それに罅を走らせた。


 その衝撃によってまた風の渦に巻き戻されてしまったヴァレリウスの鉄の翼は、捻じれた風によって曲がり、そのまま捩じ切れてしまった。


「つくづくあの筋肉団子……!!」


 そんな忌み言すら掻き消す様に、風に紛れてカルロッタがまたヴァレリウスの背後に現れた。


 偽物か、本物か。その二択の思考。本来必要の無い思考。それが何方であろうと、結論は同じ。迎撃でしか無いのだ。


 しかし、度重なる攻撃、度重なる衝撃。自慢の発明すら壊されたヴァレリウスは、自分すら知らない内に困惑していたのだ。


 本物のカルロッタは、ヴァレリウスの足下にいた。


 放たれるのは数千の光り。魔力、そしてエーテルの輝き。


 仮に真っ直ぐ放ったとして、ヴァレリウスがその直撃の瞬間までに移動出来るであろう可能性の場所、その全てを確実に狙い撃つ高純度、高密度の魔力の塊。


 例えカルロッタでもその一瞬で作り出せる限界を大きく超えている。時間にして凡そ三秒、いや四秒は溜めの時間が必要のはずの魔力の量。


 マンフレートの渾身の拳。それすらも、この夥しい数の魔力の塊を放つ為の前座であった。


 空間属性の魔法には、他の魔法よりも、更に明確なイメージ、想像が必要不可欠。それを怠れば、体の一部分だけが全く別の場所へ飛ばされたり、まず発動すらしない。


 この時、この瞬間、ヴァレリウスの脳内に巡ったイメージは、敗北と、高揚であった。


 到底受け入れてはならない敗北、それはこの魔力の弾丸、その群れを見れば一目瞭然だろう。


 敗北を前に感じる、自らの高揚。自らの興奮。カルロッタに倒されると言う至上の喜び。


 一つ問題があるとすれば、マンフレートなんて言う間に挟まる邪魔者がいることくらいだろうか。


 ヴァレリウスは、最早数を数えるのも辟易する程の、無数の魔力に貫かれた。


 だが、ヴァレリウスはまだ諦めた訳では無い。この勝負を、たったこれだけの危機で、諦めるはずも無い。


 ヴァレリウスは不安定なまま、転移魔法を発動した。


 不安定なままの発動は、不完全な転移となり、体の一部だけになる。それが特に重要な部位ならば、絶命の危機すら起こり得る。


 しかし、何とヴァレリウスは、それを狙ったのだ。


 自分の重要器官、脳を始め、脊髄、心臓、肺、その他生命の維持に重要な器官だけを、不安定なまま転移させたのだ。


 無論、それは不安定が故に、それぞれがバラバラに別の場所へ転移してしまった。だが、そんな状態でもヴァレリウスの脳は動いている。


 ヴァレリウスの脳機能が停止するまでの凡そ一秒。彼はそこに全てを賭け、あの絶望的な状況から逃亡に成功したのだ。


 まさかこんな方法で脱出するとは、カルロッタすら呆然を口を開く程の発想力。この瞬間、ヴァレリウスは一瞬でも、カルロッタを上回ったのだ。


 ヴァレリウスの脳は散らばった各部位を集めようと、たったそれだけの機能しか無いにも関わらず、魔法を発動したのだ。


 一秒、この一秒、何よりも長い。死が迫っている、なんて生易しい状況では無い。最早生きていることが不自然。死んでいないとも言えるこの状況が、不自然。


 だが、黙って見ているカルロッタ達では無い。カルロッタは脳へ、マンフレートは心臓へ一直線に向かった。


 だが、ヴァレリウスがこんな状態になる直前に、鉄の翼達に与えた魔力の命令。


(護れ)


 それは律儀にも、主が自分から離れた今も命令を遂行しようと奮闘している。


 あくまで、守る。あくまでも、護る。故に厄介。


 確実に、カルロッタとマンフレートの二人の行手を塞ぎ、確実に、二人の行動を制限する。


 たった一秒の足止めで良い。たった一秒、たった一秒だけ何もさせなければ良い。


 そうこうしている間に、遂にヴァレリウスの周囲に全ての器官が集まった。瞬間にその心臓に搭載されている回復機構や発明品によって、瞬時に内蔵を守る肉と血が復元された。


 最初に脳を守る様に頭蓋骨が形成されると、その上から筋肉が付いた頃、ヴァレリウスはその状態のまま口を開いた。


 魔法を発動させ、自身の義腕を転移させて無理矢理再生しかけている肉と繋げ、そこから長い管が伸びた。


 長い管は、周囲に散っていた黒い箱に接続された。すると、ヴァレリウスが大きく開いた口の中に、真っ白な輝きが集まった。


「"竜咳嗽(トッシーレ)"」


 ヴァレリウスの一言の後、その口の中から、竜の光線と殆ど同じ魔法が放たれた。一本では無い、それが何本も、大きく湾曲しながら、マンフレートの大柄の体すら覆える程の太さの光線が何本も放たれた。


 本来であれば何でも無い攻撃。一本程度ならマンフレートも楽々と防げるだろう。だが、それが何本も、四方八方から狙って来るとなれば話は別。


 ならばどうするか。マンフレートは笑ってみせた。


「ならばこそッ! なればこそッ!!」


 マンフレートは叫び、自らを奮い立たせた。


 そして、何と、向かい来る光線に自慢の剛腕を向けたのだ。


 その光線と手が激突した瞬間、寸分の狂いも無く、マンフレートは"力の男(マハト・マン)"を発動させた。


 "力の男(マハト・マン)"の効果は、衝撃を発生させることである。ならば、向かい来る衝撃に対して寸分の狂いも無く、全く同じ力で、全く反対の方向へ、一切の誤差無く衝撃を叩き込めば、汎ゆる攻撃を理論上は無効化出来るのでは無いか。


 マンフレートは居ても立っても居られなくなった。彼もまた、魔法使いなのだ。己の好奇心には逆らえず、また逆らうことは美徳では無い。


 瞬間、マンフレートの腕は嫌な音を立てながら、関節とは逆の方向へ曲がった。


 関節が外れただけで完全に折れた訳では無いが、それでも筋肉は部位によっては断裂しており、骨もまた罅が走っていた。


 だが、マンフレートは満足そうに笑っていた。何故なら――。


「見ろ! 成功だ!」


 そう、これは成功である。本来であれば、直撃すれば絶命は免れない一撃。防護魔法で守るのも手ではあっても、やはり死角から攻撃が来れば無事では済まない。


 だが、この方法であれば、腕の一本を犠牲にすれば完全に防げる。これこそ、ある意味敵の攻撃を完全に防ぐことの出来る、最恐の盾である。


「これこそ、全てを守る盾だァッ!!」


 マンフレートはボロボロに片腕を、誇る様に天へと向けた。


 それに応える様に、ヴァレリウスは笑っていた。憎たらしく思っていたマンフレートに対して、遂にヴァレリウスは彼を正義の使徒だと認めたのだ。


「だからこそ、全力でお相手しよう! マンフレート!! 喜べ!! 貴様はこの戦いで、俺の敵となったのだ!!」


 ヴァレリウスは自らの魔法を使い、ありったけの黒い箱を自らの周囲に転移させた。


 その数、実に二百強。それ程の幼き命が、言葉巧みな彼の個人的な欲求の為に犠牲となったのだ。


 そして、ようかく完全に再生した裸のヴァレリウスは、その義腕と鉄の翼の中央にあった黒い箱を取り付ける部位を繋げ、更にそこから管を何百と伸ばした。


 その管の一本一本が黒い箱と繋がったと思えば、ヴァレリウスは大きく笑った。


「分かるだろう! カルロッタ! さァ、さァ、さァさァさァ!!」


 ヴァレリウスもまた、魔法使い。好奇心には逆らわない。


 ヴァレリウスは、『固有魔法』を体験したのは初めてでは無い。五百年前に星皇、そしてその皇妃であり親衛隊隊長のルミエールを相手にした時に、その世界へ誘われたことがある。


 無論、それを体験したからと言って『固有魔法』等使えるはずも無いが、肌でそれを感じるのは重要だ。それでも実力が伴わなければ、やはりそれが出来るはずも無く。


 五百年前のヴァレリウスは、無論そんな魔法の最高到達点を扱えるはずも無く、その経験はドブに捨てられてしまった。


 しかし、この五百年。彼は魔法と技術と頭脳に費やした。それ以外の全ては、同じくドブへ捨てた。


 命も、誇りも、自らの尊厳も。たった一つ、夢だけは、諦めなかった。


 だが、未だ彼は、『固有魔法』を扱える実力には至っていない。この姿を見れば分かるだろう。彼は、他者の命を代償に、ようやくカルロッタと戦えるのだ。魔法ですら無い技術で、ようやく魔法しか使わないカルロッタと戦えるのだ。


 彼の魔法だけの実力は、恐らくマンフレートにも劣る。その才能の無さを担保する為に他の技術を流用して来たのだ。


 つまり、今回も同じ。


 ヴァレリウスは、他者の脳機能と、その脳の中に僅かに残っていたルテーアを掻き集めた。


 エーテル及びルテーアは、それ自体は人類皆持っている物。ただ、それを扱えない者が殆どで、更にそれが使えない程に矮小な量しか無い者がまた殆ど。


 だが、持ってはいる。極々少量ではあるが、確実に。


 そして、『固有魔法』発動の為の処理すら、黒い箱に納められた脳機能に託した。


 生まれたのだ。ヴァレリウスは、新たにこの世界へ、生まれ落ちたのだ。


 彼の髪は真っ黒に染まり、その目は金色に輝いた。


「『固有魔法』ォ!!」


 本来であれば、あり得ない。ヴァレリウスの魔法の実力は、それを発動するまでに到達していない。


「さあ皆、子供達! 俺に力を別けてくれ!!」


 辺りの景色ががらりと変わった。


「"我々は皆(オンヌーノ・ディ・)久遠に従うべき(ノイ・ア・ウナ・)一つの星を(ステッラ・ダ・)見る(セグイーレ)"」


 それは、永遠に続く青空であった。


 上も、下も、右も、左も、全てが空であり、地面は一切存在しない。世界全てが空である。


 そして、本来体を下へ押し付ける重力すらそこには存在しない。空気と、青い空しかそこには存在しないのだ。


「やったァァッ!! 成功だァァッ!! はァッ、ハァッッ!! はッ、ハァァッッシャァッ!! ヤッタァッァッ!!」


 奇声とも捉えられるヴァレリウスの叫びの直後、カルロッタとマンフレートの二人の体は、空の上を縦横無尽に駆け回った。


 勿論二人の意思では無い。二人の魔法では無い。


 この世界が、そうさせているのだ。


 方向感覚すら見失い、目を回し、そしてそんな二人をヴァレリウスは子供の様に笑って見ていた。


 だが、これだけで終わるはずも無い。『固有魔法』の真価が、これだけで終わるはずも無い。


 空が、歪んだのだ。青空は歪み、そこには見えない()があった。


 空間が歪み、拉げ、それ以上進めない空間、故に、面。壁とも言い換えられる。


 だが、通常の面や壁とは違い、そこは歪んでいる。その場所に物体が侵入を試みれば――。


 振り回されているカルロッタとマンフレートの二人は、その歪みに、体の一部が入った。


 マンフレートは右腕と右肩、カルロッタは左脚と腰の一部。


 そこに入り込んだ瞬間、その空間と同じ様に歪み、拉げ、内側の筋肉と骨が皮膚を突き破った。


 歪んだ空間から抜けても、その箇所は戻らず、寧ろ出血によってより悲惨な怪我になった。


「チッ、狙いが外れたか」


 ヴァレリウスは舌打ちと共にそう言っていた。


 この魔法に、カルロッタは、寒気を感じていた。


 あの一瞬、歪んだ空間を通る一瞬。その歪んだ空間を通った箇所には汎ゆる魔法、魔力が流れなかった。恐らく血液等も循環していなかっただろう。


 つまり、歪んだ空間に入ったその瞬間、回復は不可能。もしヴァレリウスの言葉通り狙いが外れただけで、これが頭に通れば、一切の抵抗を許さないまま絶命へと落とされる。


「何だお前等、ぞっとした顔で。まるでこれから、『世紀の大悪党ヴァレリウスに負けるかも知れない』なんて思ってそうな、わっるい表情じゃ無いか。負けないでくれよ、勝ってくれよ、()の為に」


 初めての『固有魔法』によって、今までの五百年以上の人生で一番の高揚感で頭を沸騰させているヴァレリウスは、屈託の無い笑みで二人を見下していた。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


次で終わると思われます。多分……。


本当はヴァレリウスなんてそんな強くないんですけどね。強く見えるだけです。


ああ、あと黒い箱の元ネタは、ボ卿のアレです。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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