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魔法使いちゃんの予定無き旅  作者: ウラエヴスト=ナルギウ
第三章 ノルダ合衆王国
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日記42 雪の決戦! ③

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 先に解放兵団の拠点に潜入したフォリアが魔法兵器に向かって"十二重奏の(デクテットデュオ)狂気(・ラ・フォリア)"を放った。


 しかし、余程強固な結界魔法でも張り巡らされているのか、その炎による汚れの一つも見えない。


「傷付くわね、結構自信のある一発だったのに」


 それに続いてヴァレリアが自分が作った二輪の発明品に跨り、それで一気に走り出した。


「フライムート!」


 ヴァレリアは後ろに乗っているフライムートに向かって叫んだ。


「分かっている! ウルリッヒの場所だろう! こっちに向かっているぞ!」

「あーもう最悪! はいっ! もう降りるわよ! どうせ来るんだったら迎撃準備!!」


 二人はすぐにそれから飛び降りると、ほぼ同時に未だ傷が癒えていないウルリッヒが上空から槍を突き立てヴァレリアの発明品に突き刺した。


「外れか」


 ウルリッヒが無慈悲にそう呟くと、空間魔法が一気に発動し、その発明品がぐちゃりと曲がった。


 すると、その無惨な自分の子を見たヴァレリアは、空を劈く悲鳴に近い奇声を発した。


「いやァァッ!? アァッ!! アッァッ!?」

「喧しいぞヴァレリア・ガスパロッド!!」

「だってフライムート! 私の!! 私のォッ!!」

「敵に集中しろ! 来るぞ!」


 ヴァレリアが武器を構えるよりも前に、ウルリッヒはその魔法を駆使し既に彼女の眼前に現れていた。


「お前……ああ、思い出した、思い出したぞ! 貴様か! さあ復讐と行こうか!!」

「絶対に許さないわよ……! よくも、よくも私の大事な……!! ブッ殺してやるウルリッヒィ!!」

「かかって来い人間如きが! 貴様もあの女の様にしてやろう!」


 ヴァレリアは果敢にも素手でウルリッヒに立ち向かった。体術には自信が無いが、天性の体の柔軟性とバネでウルリッヒの顎に強烈な足蹴りを食らわせた。


 しかし、ウルリッヒの巨体はびくともしない。少しだけ痛むのか、右目の瞼をぴくりと動かしただけだった。


「うっそぉ……」


 次の瞬間、私の体は宙を舞っていた。


 ああもう! 隙が無い! こんなんなら最初から構えておけば良かった! 後ろに人がいるから邪魔だったのよ!


 それともう一つ、こいつ対策の発明品なんて、無い! つまり正面から戦ってもどうやっても私は負ける!


 じゃあもうフライムート頼り! さあどうにかしてよ英雄!


 そう思い目線を動かすと、どうにもフライムートが見当たらない。……おっとぉ、大ピンチかこれぇ?


 やはりウルリッヒは更に私の上に現れ、その赤い長槍を構えて私に向かって力強く薙ぎ払った。


 だがちらりと見えた。ウルリッヒの更に上空に、彼の姿が見えた。


 ウルリッヒはその気配に気付いたのか、私への警戒を緩めて背後にいる彼に視線を向けた。


 そこにいたのは、フライムートだった。その左手には風変わりな鞭を握っており、既にその鞭の先端がウルリッヒの蟀谷に迫っていた。


 だがウルリッヒの体は物理的に不可能な軌道を描きながら地面へと勢い良く落下し、両の足で仰々しく仁王立ちしていた。


 あの態度……あの太々しい態度、ムッかつくわぁ……。


 私も何とか着地をしたが、不思議とその瞬間をウルリッヒは狙って来なかった。絶好のチャンスだと思ったのに。


 いや、フライムートへの警戒が高いのか。あっちからしてみれば未知の敵。それも当たり前だが、それはそれで何かムカつく。私はそこまでですか、そーですかそうですか。


 フライムートも無事に着地し、手に持っている鞭を撓らせながらウルリッヒに鋭い視線を向けた。


「ヴァレリア・ガスパロッド」

「そろそろフルネーム呼び辞めてくれない? 怖いんだけど」

「怖がらせているからな」


 こいつッ……! こいつもムカつく!


「……さて、あれが噂のウルリッヒか。随分デカいな」

「貴方見たでしょ。私達の記憶」

「それはそうだが、実物で見るとまた違う威圧感がある。……魔法使いなら覚える、この違和感。亜人が魔力を帯びていると言う圧倒的な違和感。それだけでもう戦いたくない」


 それじゃ困るわよ。戦ってくれないと。


「勝算はあるんでしょうね」

「そっちこそ無いのか。あるから来たと思ったが」

「んじゃちょっと時間稼ぎお願い。武器取り出そうとしたら絶対襲って来るわよあいつ」

「良いだろう」


 ……今更だけど、私戦う時ずっと時間稼ぎお願いしてるわね。


 フライムートは一人でウルリッヒに歩みを寄せ、その風変わりな鞭を一度払った。その先端には槍の穂先にも似た重りが付けられており、それが空を切る度にひゅんひゅんと音を鳴らしている。


「鞭か、厄介な戦い方をしそうだ」

「良く分かってるじゃ無いか。お前が最高に嫌がる戦術で、その誇りとやらをとことん叩いてやろう」


 フライムートの周囲に、今までとは比にならない程の眼球の数が浮かんだ。


 それにウルリッヒは心底驚愕し、魔法の多様さに感銘を受けたのかその黒い毛並みを撫でながら何度か頷いていた。


「成程、目から光線でも出るのか?」

「それよりももっと便利なことさ」


 ウルリッヒは即座に空間を歪め、フライムートに向けて突進した。


 フライムートは右腕に何mか巻いていた鞭を伸ばし、ウルリッヒの足を狙って鞭を払った。


 先端の速度はどんどんと音速に近付き、やがて目にも捉えられない速さへ到達した。


 しかしウルリッヒの動体視力ははっきりとその鞭を捉えたのか、軽く跳躍して鞭を躱した。


 余裕そうな表情を浮かべたまま、ウルリッヒはその腕をフライムートに向けた。その直後のことだった。


 伸ばした腕に、フライムートが作り出した眼球が物凄い速度で激突し、鈍い音と共にウルリッヒの腕が大きく仰け反った。


 その隙にフライムートは更に距離を詰めた。大凡鞭を使って戦う人間が、果敢にも近距離での戦いに身を投じたのだ。


 理由なんて分からない。いや、今はそんなことを考えるだけ無駄か。付き合いは短いが、信じるしか無い。


 フライムートは今もまだ鞭に気を取られているウルリッヒの意識を突き、敢えて不利な肉弾戦に持ち込んだ。


 身体能力なら圧倒的にウルリッヒの勝利。しかし意表を突かれた形での殴打は、見事にウルリッヒの顎下に直撃した。


 幾ら強靭な亜人と言えど、所詮人。その衝撃はそのまま脳の中で響き、一瞬とは言え意識を手放す。


 そこからのフライムートの追撃は、正に一方的だった。


 あそこまでの武術の心得があるならば、亜人との戦闘に於いて余りにも危険な近接の肉弾戦は、寧ろ安全。それを証拠に、あそこまで一方的な戦いになっている。


 しかしすぐに目を覚ましたウルリッヒは、その剛腕をフライムートに向けて振るった。だが、それが振るわれるよりも前にフライムートは動き、間一髪でそれを避け後退した。


「驚いたぞ」


 ウルリッヒは口の中に溜まった血反吐を吐きながら、フライムートへ称賛の言葉を向けた。


「俺がやられて一番厄介なことを的確に何度も何度も突いて来る。近接は来ないだろうとの読みで魔法を使おうとすれば、それを阻止し。更にその隙を突いて逆に肉弾戦を仕掛け一撃で気絶させる。見事だ」

「随分と素直だな。それに余裕そうだ。一方的な戦力差にまだ気付いていない訳じゃ無いだろうに」

「一方的? 俺とお前が? 笑わせてくれる」


 ああ、そうだ。ウルリッヒはまだ、全力では無い。それはフライムートも分かっているはず。だから隙を突くしか無かったのだから。


「出し惜しみは無しだ。全力で相手をしよう」


 ウルリッヒは、長槍を片腕に突き刺し、そのまま躊躇いも無く切り落とした。


 あの時の戦いで見せた、何十の人の腕。それがまた這い出て来たのだ。それでもフライムートは困惑も動揺も見せず、ただ冷静に鞭を振るった。


 不規則に揺れる鞭の先端は、右へ勢い良く進んだかと思えば急に曲がって上へ、更にまた左へ行ったと思えばまた右に曲がったりと、その軌道の予測は不可能。


 しかしウルリッヒはにやりと笑い、十本の人の腕を鞭に向けた。恐らく軌道を意のままに捻じ曲げようとしたのだろう。


 だが、その直後にフライムートの手元の近くのボディを足で踏み付け、更に軌道を曲げウルリッヒの魔法の包囲網を擦り抜ける様に動いた。


 鞭の先端の刃はウルリッヒの首元に向かって殺意を向けた。しかし超人的な反射速度で、ウルリッヒはその刃もまた間一髪で避けた。


 しかし完全な無傷と言う訳にはいかず、その切っ先は黒い毛と肌を少々切り裂いた。


 ウルリッヒは何処か納得し切れないと言った表情で後退し、フライムートの顔をギロリと睨んだ。


「妙だ。いや、先程からずっとそうだったが。……さては、それがお前の魔法か? 心を読むのか?」


 あいつ……妙な所で勘が鋭い。いや、洞察力が高いのか?


 フライムートは何も答えず、また鞭を振り回した。


「沈黙は肯定と捉えよう。名は何と言う」

「……フライムートだ。それ以上は不要だろう」


 音を切る鞭の残像がフライムートの周囲を囲い、これ以上ウルリッヒが近寄らない様に警戒している様に見えた。


 ウルリッヒはそれ以上何も聞かず、口を閉ざしたまま槍を構えて高く跳躍した。


 フライムートは鞭を持つ腕を撓らせ、ウルリッヒに向けて振るった。先程よりも正確に、そして素早くウルリッヒに鞭の刃が向かった。


 しかしウルリッヒ、意外にも今度は鞭に目も呉れず、何十もの人の腕の全てをフライムートに向けた。


 だが、発動よりも先にフライムートは自分の背に三つの眼球を集め、それで自分の体を力強く押した。


 そしてフライムートは鞭のグリップを逆様に持ち替えると、鞭の軌道がまた大きく曲がった。そのままフライムートはグリップ近くのボディをもう片方の手で掴んで捻り、更に複雑に軌道を曲げた。


 更に鞭のボディの中腹辺りで空を飛ぶ眼球が、そのボディに体当たりをして更に捻じ曲げた。


 鞭の先端の刃はウルリッヒの背に回り込む様な軌道を描き、今度こそウルリッヒの体に直撃した。


 音速にも近い先端の速度から繰り出される斬撃、ただの亜人であればそれで勝負は付いた。しかし、彼はウルリッヒ。自身の魔力で魔法を使える、特別な亜人。


 ウルリッヒは鞭の刃が直撃する直前に、槍を手放し自分の手を背後に向けたのだ。軌道を捻じ曲げるまで強く空間を曲げることは出来なかった物の、その速度は確かに弱まっていた。


 そしてウルリッヒは鞭を掴み、その怪力を存分に使いそれを思い切り引いた。


 一瞬、フライムートの体はウルリッヒの怪力に引っ張られ宙に浮いた。しかしすぐに鞭から手を離し、事無きを得た。


 だが、これでフライムートは最大の武器を失った。恐らくウルリッヒもそれが狙いだったのだろう。


 しかし、フライムートの瞳には未だ闘志が漲っていた。次の瞬間、彼の体は空を飛んでいた。


 見れば、フライムートの背を押していた眼球の数が増えており、それが彼の体を思い切り押して空を飛んでいたのだ。


 してやったりと思っていたウルリッヒにとって、これはまた意外な行動。呆気に取られたのか、フライムートの初動の阻止を逃してしまった。


 両者は、また近接戦に移った。フライムートの拳は、肘に眼球が思い切り打つかり速度とキレを増してウルリッヒの腹部に襲い掛かった。


 しかし、そんな一撃で倒れるウルリッヒでは無い。ウルリッヒは人の腕を向けようとした。


 だが、その人の腕に数多の眼球が、潰れる勢いで体当たりして来た。派手な打撲痕を残しながら、人の腕はフライムートへの狙いを外してしまった。


 その隙を、フライムートは逃さない。


 連撃、連撃、連撃、それは拳と蹴りの嵐。その威力は後ろから押す数々の眼球の体当たりによって速度を増し、ウルリッヒにとっても致命的な物であった。


「空間属性は相当なイメージが必要」


 フライムートはそう語った。


「故に、イメージから少しでも外れれば発動が難しくなる。だから普通の魔法使いはそれでも大丈夫な様に、ある程度状況を簡略化させた発動条件にするんだが……やはり元が亜人、そこまで想像が出来ないらしい」


 ウルリッヒが反撃の為に体を少しでも動かそう物なら、その先の動きを察知したかの様に、的確にそれ以上の動きを潰す一撃を繰り出す。


 ウルリッヒが拳を握れば、その手首を蹴る。ウルリッヒが脚を上げようとすれば、太腿の外側に眼球を直撃させる。


 心が読めると言うだけで、戦いはここまで一方的になるのか。私は関心と共に、恐怖すら覚えていた。


 だが、突然フライムートの動きが止まった。


 同時に彼は口から血を吐き出し、空から落ちて来た。


 見れば、ウルリッヒは拳を振るっていた。しかし、それすらフライムートは知ることが出来たはず。避けるなり迎撃するなり、どうにでも出来るはず……!


「こいつ……!」


 フライムートは掠れた声で言っていた。


「殆ど何も考えずにストレートに……! 何も考えずに全力で殴って来やがった……!!」


 私は落ちて来るフライムートの体を受け止めると、それとほぼ同時にウルリッヒも地面へと降りた。


 ウルリッヒは息を荒くしていたが、その口角はにたりを上がっていた。


「流石だ。ここまで……ハァッ……! 俺の体に、ただの肉体でここまでの……! 魔法を使う亜人だからこその不意打ち! ああそうだ! 俺は元々、この身一つで戦って来たのだ! 始めから、魔法なんと言う俗な術を使って来た訳では無いのだァ!!」


 亜人の身体能力に厄介な魔法。やっぱり相性抜群……!


 けど、お陰で準備はもう出来てる。


「フライムート、戦える?」

「……少し、休む。三十秒だ。頼んだ」

「任せなさい」


 私の両腕には、歯車と蒸気と魔力が回る発明品に覆われていた。これを付ければ、私の腕の筋力は数倍にまで膨れ上がる。それでもウルリッヒの怪力に届くはずも無いが。


 そうね……この腕の鎧の魔具の発明品に名前を付けるなら……()()()()()()()()()()()()()()()だろうか。どうせまた名前を覚えられないけど。


 ついでに組み立てておいた回転鋸を軽々と片手で担ぎ、もう片方の手でプロイエッティレ・ミトラリャトリーチェを構え、その銃口をウルリッヒに向けた。


 どっちも色々改良はしているが、流石に片手だと起動は難しいわね……。ウルリッヒがちょっと待ってくれれば良いんだけど。


「……どうした? 来ないのか?」


 ウルリッヒは煽る様にそう言っていた。


 ……どうやらあいつには、余裕が無い様だ。フライムートの攻撃が思っていた以上に効いているらしい。


 それなら好都合と思い、二つの発明品を起動させた。何方も蒸気が巡る轟音と、それが噴出する音を発した。私達は、それを狼煙とした。


 始めに動いたのは私だった。ウルリッヒの魔法には、軌道を曲げられる上限があるのは前の戦いで知っている。しかし今の戦力ではそんな実力者は揃っていない。精々フォリアがいればまだ何とかなるかも知れないが、今は私だけで何とかするしか無い。


「さぁ! 来い!」


 ウルリッヒは人間の腕を私に三本向けると、私の体は容易く宙へ浮かんだ。


「小賢しいわよウルリッヒ!!」


 そう叫びながら、プロイエッティレ・ミトラリャトリーチェの引き金を引いた。その三つの砲塔から放たれる無数の魔力の弾丸は、確かにウルリッヒに向かっていた。


 彼の魔法で軌道を捻じ曲げ、きっと一発も当たることは無いだろう。しかし、先程のウルリッヒとフライムートの戦いで気付いたことがある。


 ウルリッヒは、恐らく同時に二つのことが出来ない。正確に言えば、魔法を使う際はそれで頭がいっぱいになるのだろう。魔法を混じえた肉弾戦を仕掛けようとしないのが何よりの証拠。それをしようとしても、単調な動きになってしまう。


 この一瞬、私はウルリッヒの魔法の拘束から外れる。これを生かし、左脚のガーターリングの効果を発動させた。ウルリッヒは私の気配を捉えることが困難になっただろう。


 何時の間にか私の気配が消えたウルリッヒは、急いで辺りを見渡した。その混乱の一瞬こそ、私が狙っていた物。


 ウルリッヒの背後に回っていた私は、手に持っていた回転鋸をウルリッヒに向けて思い切り振り下ろした。


 しかし、やはり一瞬、それに気付いたウルリッヒは人間の腕を二本向けると、回転鋸は左へ吹き飛んだ。


 だけど、これも想定内。私は回転鋸からすぐに手を離し、ウルリッヒに空になった手を向けた。


 この腕の発明品の効果は、別に筋力増大だけでは無い。私の武器を魔法で引き寄せる効果もある。その引き寄せる対象を、ウルリッヒに指定する。


 ウルリッヒの体は勢い良く私の手に引き寄せられ、私の掌が彼の後頭部にぴたりとくっついた。


「"蒸気(リラシオ・ディ)放出(・ヴァボーレ)"」


 鎧の中を巡る蒸気が、一気に放出した。前の戦いで大きなダメージは無かったが、それでも彼の巨体は吹き飛ばされる。


 吹き飛んだウルリッヒにプロイエッティレ・ミトラリャトリーチェの銃口を向け、更なる追撃の弾丸の嵐を発射した。


 全てが彼に届く訳では無い。しかし、吹き飛んだ影響で生まれる死角から来る魔力を察知出来るはずも無く、ウルリッヒの左肩に一発、魔力の弾丸が貫いた。


 それを皮切りに二発、三発とウルリッヒに命中した。


 だが、これで倒せるなら苦労はしない。


 ウルリッヒは雪の上で倒れた。しかしすぐに力強く立ち上がり、私に向けて槍を投げた。


 不味い、そう思った時には、既に槍は私の眼前に迫っていた。


 だが、偶然にも雪が溶け足元が泥濘んでいたのか、私の体はバランスを崩し右へ倒れた。向かって来る赤い槍は私の蟀谷を掠めた。


 危なかった、いや、それどころでは無い。私は死んでいた。偶然生かされた。


 こう言う時は、天に感謝すれば良いのかしら。それとも私の運にかしら。


 すぐにウルリッヒに目線を戻すと、彼はフライムートの鞭を人間の腕で握っていた。それを何度か振り回したかと思えば、彼はすぐに走り出し、私に向かって鞭を振った。


 鞭は嵐の日の海流の様に、全く出鱈目な軌道を描きながら私の頭を狙った。恐らくウルリッヒの魔法によって軌道が幾重にも捻じ曲げっているのだろう。


 初撃は上半身を後ろへ倒すことで何とか避けられた。しかし次、この次の一撃。


 その鞭はぐるりと私の周りで円を描き、雪の下へと潜った。そのまま向かった先は、私の下。半身が後ろに倒れているからこそ出来た、大きな弱点へ。


 半身を後ろに倒していると言うことは、背が地面に向いている。その大きな弱点を狙って、ウルリッヒは鞭を操っているのだ。


 すぐに、起き上がらねば。しかし、そんな思考だけは速く、体は思考に追い付かない。


 遂にここまでかと思った矢先、突然鞭の動きが止まり、その勢いを失くし地面へと落ちた。


 すぐに私が体勢を立て直すと、その隣にはフライムートが立っていた。


 フライムートは何故だかにやにやと笑みを浮かべており、片方の目を隠している眼帯を撫でていた。


「……ああ……」


 フライムートは声を零した。甘い声だった。


 今、フライムートは自身の魔法により、彼が護りたいと願う家族の姿を見ていた。


 自分の家族では無い。彼が初めて恋を知った、エーデリに住む仲睦まじい家族の姿だった。


 自分がそこにいなくても良い。ただ、この光景が何時までも続けば良い。変わらない物なんて無くとも、その変化が悪い物で無ければ良い。


 彼の闘志の中に、また温かな勇気が湧いて来た。彼女と、その夫と、二歳になる二人の子を見るだけで、彼は勇気が湧いて来る。


「言っただろう、ウルリッヒ。空間属性魔法の弱点を説明しただろう」


 見てみれば、ウルリッヒの鞭を握る手に眼球が打つかっていた。


「魔法使いでクソ真面目なのは長所だが、お前は戦闘に魔法を使うだけだろ。何でそんなに魔法の発想が固いんだ」


 フライムートは私を一瞥し、一言。


「さあ、残り数分だ。やるぞ」

「勿論」


 私は回転鋸を手元に引き寄せた。


「あんな奴、さっさと倒して祝杯にしましょう。あ、勿論貴方の奢りね」

「……何だお前……」


 フライムートは呆れた様に溜息を零した。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


大体……あと、三話ですかね? もうちょっとで戦いは終わります。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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