第27話 ルーカス・マクファーレン
綺麗な金髪のメイドの後ろ姿を見届けた後、訓練場の扉を開いた。
地下だから狭くて閉塞感のある所を想像していたが、その想像に反して天井も高く、動き回っても全然問題ない広さがあった。
家の地下にこんなのが作れるのかと関心していると、訓練場の奥のほうで小柄な赤髪の男が目をつぶって胡座を組んでいたのが見えた。
……人の気配はしなかったぞ……?
俺は人なら誰しもが少量は持っている魔力を感知することで人の気配を探ることができる。
魔力感知に関しては結構自信があったんだけどな。
この男はよほど魔力隠蔽に長けているんだろう。
彼はレオンの弟か?
俺と同い年か少し下かな。
レオンに兄がいるのは聞いたことがあったが、他に兄弟がいたというのは聞いたことがない。
赤髪の男について考えていると、彼がこちらに気付き、立ち上がってこちらに近づいて来た。
「やあ、お客人かな? 初めまして、僕はマクファーレン侯爵家長男のルーカス・マクファーレンだ」
長男!? この人がレオンの兄なのか。
ルーカスさんは、デカい体つきのレオンの兄とは思えない細身で小柄な体型だ。
「初めまして。レオンの友人のカイといいます」
「カイくん…………ああ! あのステファニー・ヴィオネの弟子の! なるほどなるほど……」
ルーカスさんは俺のことを値踏みするような目で見てくる。
うーん、あまり良い気分はしないな……。
「このタイミングで君がここに来るってことはさ、つまりそういうことだよね?」
そういうことというのは、多分ステフを取り返しに行くことを言っているのだろう。
「はい、そうなりますね」
「そっかそっか。カイくん、僕は王国貴族としてそれを黙って見過ごすことはできないかな」
「……レオンにはそんなこと全く言われませんでしたが」
「レオンは人情に厚い、言い換えれば甘い性格をしているからね。父上もレオンと似た性格だ。恐らく君の行動を黙認するだろうね」
「そうですか。ではルーカスさんもついでに俺を見逃してくれやしませんかね?」
「それは王国貴族としてできないと先に言ったばかりだろう?」
そりゃそうだよな、しょうがねぇ。
レオンには悪いがお前の兄貴をしばらく動けなくさせてもらうぞ。
俺が覚悟を決めて臨戦態勢に入ろうとしたとき、ルーカスさんが俺に提案をしてきた。
「カイくん、模擬戦をしてみないかい?」
「……模擬戦?」
「そう、模擬戦だよ。僕もレオンの友人を無闇に痛めつけたくないからね。君が勝てば見逃すし、こっそりと今ステファニー・ヴィオネを移送している隊の構成、戦い方、その他諸々知っている情報を全て提示しよう。君が負ければそのまま1週間くらい身柄を拘束させてもらおうかな」
この提案を受けたとして、俺にとってデメリットが無さすぎる。
この提案がなくともどうせルーカスさんに負ければ捕まっていただろうし、勝てば本来得られないであろう情報が手に入る。
ルーカスさんは何を考えているんだろうか。
「それは俺にとって都合が良すぎないですか?」
「なぜそう思うんだい? 君が僕に勝てる可能性を考えればこのくらいの条件が妥当だと思うけれど?」
「俺に負ける気はないと?」
「更々ないね。……レオンから話は聞いていたんだ。キーストリアにステファニー・ヴィオネがいて弟子がいると。あのステファニー・ヴィオネが弟子を取るだなんてさぞすごい魔法使いなんだろうと思っていたんだけれど、蓋を開けてみると魔力量も少なくて実力も無さそうな君だった。これじゃあ、ステファニー・ヴィオネもあまり大したこと無さそうでがっかりだよ」
「ああん?」
ステフを馬鹿にされたような言い方をされ、自分の頭に一気に血が上ったのがわかった。
「師匠を馬鹿にされて怒ったちゃったかい? 悔しかったら模擬戦で僕に実力を見せてみるんだね」
俺はルーカスさんの提案に承諾し、模擬戦を行なうことになった。
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