第26話 綺麗な金髪
「「「「「「「おかえりなさいませ、レオン様」」」」」」」
屋敷の中に入ると、多くの執事やメイド達に出迎えられた。
「貴族ってのはこう毎度毎度、人に仰々しくされるのな」
さっきも騎士がレオンに膝をついて挨拶をしていたのを思い出した。
「ああ、俺はもう慣れてしまっている」
俺は冒険者としてのレオンしか知らないので本当に貴族だったんだなぁと、ただ思った。
「彼は俺の客人だ。今夜泊まってもらうから部屋まで案内してくれ」
「かしこまりました」
それなりにお年を召した執事の男が一歩前に出てきて返事をした。
俺は一旦レオンと別れて、その執事に客室まで案内された。
「部屋広っ……」
案内された部屋は想像以上に広くて1人では持て余しすぎてしまう空間だった。
「うーん、落ちつかねぇなぁ……」
俺はソファで寝転がってダラダラとくつろいで、後から来ると言っていたレオンを待っていると、扉からノックの音がした。
恐らくレオンだろう。
「はーい」
「入るぞ……って少しくつろぎすぎやしないか?」
レオンはソファに寝転がっている俺を見てそう言う。
「執事の人にどうぞおくつろぎくださいって言われたから俺はそれに最大限応えただけだ」
レオンは軽くため息をついた。
「父上に会ってもらおうかと思っていたが、まだ外出中だそうだ」
「そうか」
「先に夕食を用意させよう。何か食べたい物はあるか?」
「んー、肉が食えれば何でもいいかな。それより身体を動かせる場所はないか?」
「ん?なんだ?あまり明日に疲れは残さないほうがいいぞ?」
「日課だよ。昨日丸一日寝て何もしてなかったからな。さっきの戦いも身体が鈍ってよく動かなかったんだ。飯を食う前に身体を動かしておきたい」
「そうか。ではこの屋敷の地下の訓練場に行ってくるといい。俺は少し片付けることがあって一緒に行けないが案内を付けよう」
広めの庭のようなスペースを借りようかなと思ってただけなんだけど……。屋敷内にそんな場所があるのか、驚きだよ。
レオンは部屋の外に顔を出して廊下にいたメイドを呼んだ。
この家のメイドはこの人を含めて皆容姿が整ってる。
他の貴族の家を知らないが、こういう見てくれが良いほうがいいのだろうか。
「カイを地下訓練場まで案内してやってくれ」
「はい、かしこまりました」
俺は地下訓練場に行くために部屋を出てメイドの後ろに着いて行く。
ステフみたいな艶のある綺麗な金髪だ、俺は前を歩くメイドの姿を見てふとそう思った。
こういう綺麗な髪を維持するにはちゃんと手入れをしなくてはならないのだろうか。
ステフはそんな様子はなかったけれど裏ではしっかりとやっていたのだろうか。
ステフは今頃どうしているだろうか。
なぜ殺されるとわかっていてホイホイとアイツらなんかに連れて行かれたのだろうか。
ステフなら逃げることができたはずだがなぜそうしなかったのだろうか。
レオンが言うには俺を厄介ごとに巻き込まないためらしいが、それが本当ならそんなことでステフが犠牲になるなんてあっちゃならない。
早くステフに会って話したい。
俺のためにあんな行動をとったのかどうか聞きたい。
俺はぼーっとステフのことを考えていると、前を歩いていたメイドとぶつかってしまった。
どうやら立ち止まったメイドに気が付かずにぶつかってしまったようだった。
「あ、すみません」
「いえ、先ほどからずっと上の空のご様子でしたが何かお困りごとでもございましたか?」
「いや、その、あなたの髪が綺麗だったから……」
俺は咄嗟に思ったことを口に出した。
「…………もしかして私、今口説かれていますか?」
メイドは俺にニコリと笑みを俺に向ける。
「……ん? いや、違う違う違います! そういうつもりじゃあ全くありません!!」
俺は自分がした発言を思い出して全力で否定する。
確かにこれでは俺がこの人を口説いているみたいだ。
友人の家の初対面の使用人をいきなり口説くだなんて印象が悪すぎるだろ。
「何もそんなに必死に否定しなくとも……」
メイドが苦笑いで答えた。
「すみません、言葉足らずで。知り合いの髪もあなたによく似て綺麗な金髪だったので思い出しちゃって」
「その方はカイ様の想い人なのですか?」
「想い人? 違いますよ、彼女は俺の師匠で恩人なんですよ」
「そうでしたか。私のそういう勘はよく当たるのですが外れてしまいましたね。カイ様のその方のことを話す姿がそう見えてしまいました、失礼いたしました」
「いえ、大丈夫です」
女の人というのは何でも色恋の話に持っていきがちだ。
「つい立ち話をしてしまいましたね。この階段を降りると訓練場に到着いたしますので、もう暫し私について来てください」
階段を降りて行くメイドに続いて、俺も階段を降りて行く。
階段を降りて少し歩き、廊下の一番奥の扉の前まで来た。
「ここが訓練場です。何かあれば中の入り口近くに据え付けてある遠話の魔道具でお呼びくださいませ」
「ありがとうございます」
メイドはペコリと頭を下げ、その綺麗な金髪を揺らして去って行った。
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