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第28話 模擬戦開始


「じゃあ簡単にこの模擬戦のルールを取り決めようか。僕が決めたルールに何か異議があるのなら言ってね」


 俺はそれに無言で頷く。


「まず君の意識を失わせるか、降参と言わせれば僕の勝ち。その際君に重傷の怪我を負わせてしまったら僕の反則負け。君の勝利条件は……そうだなぁ、僕に足の裏以外を床につかせることができれば君の勝ちでいいよ。僕にどんな傷を負わせても問題なし。その腰の剣でもなんでも使って僕の両の足を切り落とすつもりで来なよ」


「舐めてんのか?」


「舐めてる? あーそうだね、舐めているからこそ僕は簡単にこんな条件を出せるんだろうね」


「ああもう我慢ならねぇ。負けてからやっぱり無しだとか言うなよ!」


「もちろん。マクファーレン侯爵家次期当主、ルーカス・マクファーレンの名において誓おう」


「後悔させてやるよ」


「じゃあルールはさっき決めた通りで。君はその腰の剣でも何でも使ってくれて構わない。僕の方はいつでもいいから君のタイミングで始めてもらってもいいよ」


 ルーカスさんは、大きな欠伸をして退屈そうにそう言った。

 さっきからルーカスさんの言動はいちいち鼻につく。


「その鼻へし折ってやるよ」


 俺はルーカスさんの言う通り、迷わず腰の真剣を抜いた。

 足を切り落とすとかそんなことはさすがにしないが、剣を使わなければ目の前の相手に勝てる気はしなかった。


 さっきから肌がピリピリとする。

 原因はこの男の魔力だ。

 戦闘態勢に入ったのか、魔力隠蔽を止めて身体から溢れんばかりの魔力を漂わせている。

 くそ、お前の兄貴がこんなヤバい魔法使いだなんて聞いてないぞレオン……。

 魔力量だけで見れば俺が格下、まともにやってもジリ貧になるだろう。


 なら、相手に魔法を使わせる前に一撃で決める!

 俺は魔力で極限まで強化した脚力で一瞬で間合いを詰め、横薙ぎに剣を振るう。

 ルーカスさんは反応できていないのか、魔法を発動する様子も無く全く動かない。


「もらったぁぁぁぁぁあ!!!」


 俺の剣での一撃がルーカスさんに届きそうだったその時、ニヤリとルーカスさんの口角が上がったのが見え、全身がゾクリと寒気に襲われた。

 俺はほぼ反射的にヤバいと感じ、自分の前面で魔力の爆発を引き起こして無理矢理後方に飛ぶ。


「がはごほっ、ごほっっ……!」


 咄嗟の判断でダメージを負いながらも強引に回避行動を取ったが、それは正解だったと目の前を見て思った。


「おいおいおい……」


 ルーカスさんから冷気が漂い、周囲の床は氷漬けになっていた。

 俺がいた所の床からは複数の氷柱が地面から生えており、あのままだと無事じゃあすまなかっただろう。

 魔法の発動スピードが早すぎる……。


「よく避けれたね」


 ルーカスさんはパチパチと手を叩いている。


「何が重傷を負わせたら反則負けだよ! 当たりどころが悪かったら即死だよ!!」


「いやぁごめんごめん。想定以上の動きでびっくりしちゃって思わずやっちゃった」


「こんなに気持ちのこもってない謝罪は初めてだよ……」


 俺はそう言いながら、どう戦っていこうかと足りない頭をフル回転させていた。


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