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第19話 絶望の先に見えたもの


 あれからのことはよく覚えていない。

 気がついたら俺はベッドの上で横になっていた。

 何もする気が起きない、何も考えたくない。

 身体が鉛のように重い、頭に靄がかかったかのように何も考えることができない。



「……ステフ…………何でだよ……まぁいいや寝よう」




「――――――ッ!!」 


 何か聞こえたような気がする。

 でもここは宿の俺の1人部屋だ、誰もいないはずだし気のせいだろう。


「――――イッ!! おい、カイッ!! 聞こえてないのか、おい!!」


 ……気のせいではなかったみたいだ。

 声のする方に目をやると、がっしりとしたガタイに、短めの赤髪をツンツンに立てた髪型が特徴の俺のよく知る人物がいた。


「あぁ、レオンか……。部屋に入る前にノックくらいはしろ」


 こいつの名前はレオン・マクファーレンだ。

 この街キーストリアを含むマクファーレン領を治めるマクファーレン侯爵の次男で、俺の数少ない友人の1人だ。

 冒険者として活動している中で出会い、最初は気に食わない奴だと思ったが今では親しい友だと言えるだろう。

 そういえばステフとのデートで行った演奏会の席もこいつが用意してくれたんだったよな……。

 ステフ……。



「何度も扉を叩いて声をかけたのに何の反応もなかっただろう! 悪いが宿屋の人に言って鍵を開けさせてもらった」


「そうか、悪かったな……」


「それにしても何ていう酷い顔をしているんだお前は。宿屋の人が丸1日以上部屋から出てきていないと言っていたぞ。どうせ何も食べていないのだろう、ほら食べろ」


 レオンがそう言うと俺に串焼きが何本も入った紙袋を俺に渡してくれた。

 俺の好物だけど……。


「いや、悪い……。今は何も喉に通りそうにねぇんだ……」


「それでも無理矢理口の中に突っ込んで飲み込むんだよ!」


 レオンが串焼きを一本手に取るとそれを俺の口の中へと押し込んでどこからともなく取り出した水筒の水を俺の口へ流し込ませた。


「ごほっ、ごほっごほっ……。おい、何すんだ!」


「ふん、やっと少しはマシな声を出すようになったか」


 胃に物が入ったからか幾分かは気分はマシになった。


「ありがとよ」


 少しの沈黙の後、レオンが喋りだす。


「それでだ、聞いたぞ。ステファニーさんが宮廷騎士団、宮廷魔法師団に国家反逆罪の容疑で拘束、連行されたってな」


「何だと! ステフが! ステフがそんなことするわけないだろうがッ!!」


 俺は声を荒げ、レオンの胸ぐらを掴んだ。


「落ち着け馬鹿野郎、俺はただ伝え聞いた事実をそのまま口にしただけだ。俺もステファニーさんがそんなことをするはずがないと思っている」


「ごめん……」


 俺は今かなり冷静さを欠いている。

 そうわかってはいてもどうすることもできない。


「それで? お前はこんな所で一体何をしている。ステファニーさんが冤罪だと思いながらも何もせず、暗い部屋で1人悲嘆に暮れているだけか?」


「あぁそうだよ。ほら見てみろよ、俺はもうステフの弟子じゃねぇ。あいつに切られたんだよ。俺には何もできない。ふん、間抜けだろ?」


 レオンに何もない俺の右の手の甲を見せながら自嘲気味にそう言う。


「……それはお前を厄介ごとに巻き込まないためだろう。お前は本当にこのままでいいのか? お前とステファニーさんの関係は師弟契約が切れただけで終わるようなものだったのか? もう一度よく考えてみるんだな。このままだとステファニーさんは確実に死刑だ。多くの王都の民の前での公開処刑となるだろうな」


「…………」


「お前にその気があるのなら1時間後にギルドマスターの所に来るといい、待っているぞ」


 レオンはそう言い残して部屋から出て行った。




「……本当にこのままでいいのか、だと? 俺とステフの関係は師弟契約が切れただけで終わるようなものだったのか、だと? クソクソクソクソクソクソクソクソクソッタレがッ!!!」


 こんな所でウジウジとしていていいわけないだろうが。

 ステフに師弟契約を切られた? じゃあもう1回弟子になってくれと頼めばいいだけだ。

 あぁ、簡単だ。

 思考がようやくいつも通りに戻ってきた。




 俺はレオンから貰った残りの串焼きを全て頬張り、急いで部屋を出た。


読んでくださってありがとうございます!

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次話から数話ほど間話を挟む予定です。


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