第16話 ステフとデート その2
ここキーストリアの街は王都から離れた辺境の街ではあるが、冒険者業が盛んである。
冒険者業が盛んであるということは、その冒険者が手に入れた素材を買い付けに来る商売人の出入りも盛んになり、裕福な層の人間も住むようになって多くの金が動く街になっていた。
なので、辺境で周囲は自然に囲まれているものの、街自体はかなりの発展を見せており、娯楽や買い物、飲食をする所には困らないくらいに賑わっている。
「それでどこに連れて行ってくれるのかしら?」
「少し前に楽団がこの街に来たんだ。今日から演奏会が始まるからそこに行こうと思ってる」
「へぇー、カイにしては素敵なところに連れて行ってくれるのね。食べ歩きの1日になったとしても私は驚かなかったけれど……」
「は、ははは……」
うん、数日前まではまさにその予定だった。
美味い物がある飯屋や屋台などを調べてそこを1日かけて回るつもりだった。
しかしその計画を冒険者の友人に話したところ怒鳴られた。
――――――――――――――――
『まず定食屋3軒を巡った後にカフェ2軒でそれぞれの名物のスイーツを堪能する。そして屋台通りで食べ歩きをし、最後は高級そうなレストランで美味い物を食べるだと? お前はどこぞのフードファイターだ!? これじゃあステファニーさんは腹が苦しすぎて楽しむどころじゃないだろうな!』
『そ、そんな……』
『考えてみろ、ステファニーさんはお前ほど物を食うのか?』
『……あ、いや、そんなことは……ないな。でも俺は食べること以外にこの街のことなんか知らないぞ、一体どうすれば……』
『はぁ……。昨日、この街に楽団が来た。俺も1度その楽団の演奏を鑑賞したことがあるが中々に良かった』
『お! じゃあそれに行けば……』
『しかしながらその楽団は今、かなり勢いがあってな。この街でも人気で既に席は埋まっていて無い』
『あぁ……もうダメだぁ……』
『そんなに悲観するな。この話をするということは当てがあるということだ。席は俺が用意しておいてやろう』
『で、できるのか?』
『任せておけ。その代わり他のプランはカイが考えておくことだな。食べる回数は控えろ、自分の足で行くところを探してみろ』
『ありがとう、ありがとう!!』
『ひっつくな! 気色が悪い!!』
――――――――――――――――
いやぁ優秀な友人がいてよかった。
この友人についてはいずれ語る時がくるだろうが今はまだその時ではない。
俺たちは演奏会が行われる劇場へとやって来た。
開演の30分ほど前なのだが結構な人の数がいて驚いた。
「この楽団の名前、聞いたことがあるわ。最近人気らしいのよね、今から楽しみだわ!」
どうやら当たりだったみたいだ。
席を用意してくれたあいつには今度改めて礼を言おう。
俺たちが席に座ってしばらくすると演奏が始まった。
俺は今まで街の広場や酒場の吟遊詩人の詩くらいしか音楽というものを知らなかったが、この大規模な演奏も悪くないと思った。
臨場感があるというか身体の芯にぐっとくるというか。
色々な楽器で演奏しているにも関わらず綺麗に音がひとつに纏まってる感じがする。
こういうものを始めて見るので何と表現したらいいのかわからないけど、とにかくすごいの一言だ。
ちらりとステフに目をやるとリズムを取るように身体を少し揺らして聴き入っているように見えた。
2時間にも及ぶ演奏会が終わり、俺たちは道すがら先ほどの感想を言い合っていた。
「心に深くしみ入るようでとても満ち足りた、素敵な時間だったわ」
「そうだな、俺もこういうのは始めてだけど心に響いてすごいいい演奏だったと思ったよ」
「ふふふ、ここ何年か本格的なものは聴いていなかったからとても楽しめたわ」
その後俺たちはいつも愛用している冒険者御用達の酒場で少し早い夕食を取った。
いつもより美味い飯をと思い色々と候補を用意していたのだが、どこもしっくりとこず、結局ここが一番いいということになった。
そして夕食の後は今日最後の目的地へと2人で向かうのだった。
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