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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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97/99

97 尊ぶならば



「その『証言』を信じるのは難しい。今となってはなんとでも言える」


 脅したとされるニリスが死亡した今、センタスの言葉をそのまま受け取ることは難しい。


「ヴィニカリスがライコア侯爵家の動向を調べ、行き着いたのがペルデュラン男爵家だ。末の娘が嫁ぐ際に、他の四家よりも多額のやり取りがあっただろう」

「多額……? そういえばいくら貰ったか知らないな。それよりクインティーナを取り戻す事ばかり考えていた」

「貰ったことは知っていたけど……金と娘を交換って人身売買と変わらないと思った覚えがあるし」

『私が嫁ぐときもヴィニカリスに金銭の支払があったらしいよ。突き返したけど』


 だからこそ、ペンタスはライコア侯爵家とペルデュラン男爵家の間で動いた金銭に注目したのだろう。


「……ところで、私がライコア侯爵家へ赴いたのは、我が寮で不審人物が持っていた物と調べていた情報が一致したからなのだが」

『そういえばそんな事言っていたなぁ』


 あとはアイヴィーの墓参り。

 しかし完全に蛇足なので、その内容は省いていた。


「その時に、不審者は不可解な地図を所持していた。それは作物が枯死した領地に印が書かれた物だったが」


 そこでミラノスは、同様の地図が他にもあったことを知る。


「そこには、ペルデュラン男爵家の領地にも印が書かれていた。調べたところ、ペルデュラン男爵家では何の異変も起きていなかったというのに、だ」

「……その不審者どうしたの」

「引っ捕らえて独房だ。彼が侯爵家の者なのは裏が取れている」

「薬は持っていたか?」

「それはわからない。当時は目的不明だったから、所持品も用途のわからないものもあったし……失礼。つまり私が何を言いたいのかというと、ライコア侯爵家の手の者が、万が一でもペルデュラン男爵家に手を出さないよう、終了済みの印をつけていたのではと考えた」


 契約通り、毒を撒かないように。

 金銭のやりとりも目立ち、ヴィニカリスは二つの家の繋がりに確信を抱いた。


「脅されていたのなら、ライコア侯爵家から支払われていた金銭は一体なんだ?」


 口止め料なら、センタスは金の力に屈して従ったことになる。

 脅迫と違い、その場合は買収だ。


「あれは……」


 センタスが言い渋る。

 ヴィニカリス側の視線が鋭くなっていくのを感じたオクトスは、父を急かすように肩を叩いた。ドッと重い音がした。


「あれは、新世界の開拓費だ」

『なんて?』


 思わず聞き開けしたアイヴィーだが、恐らくその場の全員が耳を疑っている。

 一度口にしたセンタスは、観念したように口を開いた。


「死んだ土地を見捨てて逃げてくる国民を受け入れるのに、金が必要だろうと送られてきた。その通りだが、不吉すぎて手を付けてはいない」

『もっと気にするところあったよね?』


 金はその通りだが、土地も物資も確実に足りなくなる。


 金があればなんとかなると思ったのだろうか。思ったのかもしれない。

 なんだかんだ、ニリスは侯爵なので上に立って指示をする事しか知らない。金があれば、誰かが何かすると思っていたのだろう。


 ペンタスは頭が痛むのか、そっと額に手を添えた。頭部に損傷があるのでと手も心配だが、この頭痛は明らかに別の要因からきている。


「どんな事情であれ……金を受け取って口を噤んだ時点で買収だ。ここまで被害が広がって、無関係ですとは言えない。国の上層部がどれだけ無事かわからない中、私があなたを罰することもできないが……ここまで聞いた内容は、いずれ私が『証言』する事にする」

「ああ、わかっている……今何ができるかわからないが、必ず報いるし償う」


 しっかり頷き、逃げる様子のないセンタスは覚悟を決めているのだろう。

 場合によってはすぐ裁かれることなく有耶無耶にされる可能性があるが……身内のオクトスとミラノスがそれを許さないだろう。彼らにどう影響するかわからないが、国の上層部が現在どれだけ無事なのか、まずはそこが気になる。


 だがその前に。


「話の流れからの推察になるが、彼女は『ペルデュラン男爵令嬢』ではなく『男爵家の使用人』だったのか?」

「あっ」


 まさしくそのまま口にしたクインティーナはハッと固まる。事実確認のためとはいえ、ペンタスはそこまで把握していなかった。


「その通りだ。娘付きの侍女で……」

「では、把握せず嫁に出したと」

「……何をだ?」


 不思議そうにするセンタスに、確信したペンタスはにっこり笑った。


「そうだな。知っていたらするわけがないな。聖人を尊ぶなら、絶対にしなかっただろう」


 ミラノスの顔がぎゅっといやそうに歪み、オクトスは大きく瞬きをし、クインティーナはこきゅっとつばを飲み込んだ。


「聖人の彼女を、契約のために、侯爵に嫁がせるなど!」

「」

『ヤダうちの弟、とってもいい笑顔』


 ――聖人は尊ぶもの。


 その一点に関してはニリスと同意見だったセンタス。

 彼はゆっくり周囲を確認し……息子達の反応から、事実だと確信して。

 クインティーナに向かって、勢いよく土下座を披露した。

 本日二度目の土下座だった。



Q なんでペンタスは伯爵令息なのに男爵相手に敬語じゃないの?

A 敵だと思っていたし警戒してるぞコラァって意思表示プラス姉上も見ているから強気なところを見せたい虚勢故に戦闘態勢。

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― 新着の感想 ―
「新世界の開拓費」がパワーワードすぎる。 あ〜、被害は国内各地で畑に毒を撒いてて受け入れ先が一箇所じゃ土地も食料も足りないでしょとは思ってましたが…… ニリスさんはそのへん詳しくなかった(と思われる)…
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