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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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80/101

80 できればイベントはキャンセルしたい


 少なくとも三つ。毒の山に立ち入る事になるが、ハシゴがしっかりかけられていた。


『ダメじゃんこれ! つまり頻繁に出入りしているってコトじゃん! なんだかんだ一番安全な通路っぽいけど独房以外からも来られるならこの毒取り放題だし!』

「取り放題なんだろうね」


 叫びながらミラノス達の傍に戻って来たアイヴィー。

 頷きを返したミラノスはぎゅっと嫌そうな顔をする。せっかく赤みの差したクインティーナの顔色も、あっという間に青くなった。


「ここから毒を入手して、使用人を使ってあちこちに配って、虫除けと偽って土地に撒かせる。少しずつ、確実に土地を殺しにかかっているんだ」

「伯爵令息も似たような事を言っていた。彼はそれに気付いてここへ来たようだが、侯爵は令息を殺して事実を隠蔽する気か?」

『正直わかんない。ペンタスの話を聞いても何も言わなかったから』


 探偵が語っているのに何も語らない犯人の図だった。

 そして背後から忍び寄る共犯者。

 共犯者の可能性を理解していたのに、一人でいるときに犯人に詰め寄った探偵役が悪い。


「ねえ、これを証拠に持っていく事はできない?」

『ダメダメ危険! 水路を通って逃げる予定だし、絶対やめた方がいい!』


 ニリスを追い詰める証拠品として考えたミラノスが大胆な事を言うが、アイヴィーは即座に却下した。

 そもそも全員濡れ鼠だから、濡れないように工夫することもできない。万が一、水路に直接毒が混入したら危険だ。


 ヒ素は微量ならば、そもそも水にも大地にも含まれている。それは健康被害に直結しない、本当に微量だ。

 しかしこの洞窟は確実に殺しに来ている。アイヴィーは万歩譲っても許可できない。


「なら、そっちのハシゴで脱出するなら?」

「それは、中に戻る事になりませんか? 侯爵家のどこに繋がっているかわからないのは危険ではありませんか?」

『そうだそうだ言ってやれ!』


 おずおずと進言するクインティーナ。確かにその通りだと、ミラノスは嫌そうな顔をした。


「わかったよ。まずは安全に脱出する事からだね」

「そうだな。幸い水路が見付かったから、辿れば王都のどこかしらには出られる」


 オクトスは手探りでペンタスを負ぶった。うっかり上下逆に負ぶろうとしたので、クインティーナが慌てて訂正している。オクトスには周囲が真っ暗にしか見えないので、手探りで動くしかない。

 もし上下逆で負ぶったらアイヴィーが警報器になるところだった。警報器になってもやらかしている本人にだけ聞こえないのが難点である。


 腕を組んでオクトスがペンタスを負ぶるのを監視しているアイヴィーに、ミラノスが声を掛けた。


「灯りはアンタにしか頼れないから、先に進んで」

『そうだね。真っ暗だからなんとか足元が見える程度だけど……まあ転ばないよう気をつけて』

「はい、気をつけます」


 クインティーナはフンスと気合いを入れているが、正直アイヴィーはここでラブイベントが発生して転ぶのではないかと思っている。その場合ペンタスの命が危ないので、殿を務める事になったミラノスには弟を守って貰いたい。


 ……いや、ミラノスも非力なので、クッションにもなれない。二人揃って潰れる未来が垣間見えた。

 アイヴィーは脳裏を過ったラブイベントが発生しない事を願った。


 こんなときでも、アイヴィーの思考はちょっと軽かった。


 そのとき、コツンと音が響いた。

 毒の鍾乳石の欠片が落下した音だ。先程も、小さな欠片が転がった。

 しかし今度はその音が、断続的に聞こえてくる。


 コツン、コツン……コツン。


『……私気付いちゃったの。言っていい?』


 誰もが静まりかえる中、引きつった顔でアイヴィーが問いかける。

 聞こえていないオクトスはしょうがない。しかしミラノスとクインティーナも黙っている。アイヴィーはふっと息を吐いた。

 息してないけど。


『――これ足音だよね!?』

「誰も言っていいって言ってないでしょ」

『でも足音だよね!』


 しかも水路の奥から聞こえてくる。


『うわ、ここで退路が断たれるのは勘弁して! 上に戻ろうにも灯りがないからさすがのオクトスもハシゴを登れないの! 灯りがあってもミラノスはちょっと怪しいしクインティーナはもっと怪しい!』

「余計なお世話だよ!」

「ど、どうしましょう。水に潜りますかっ」

「そんな深さはない。それに水の中だと動きが鈍くなるからやめた方がいい」


 ヒソヒソと言葉を交わすが、それすら大きく反響して聞こえる。もっといえば、先程まで普通に話していたので声は向こうまで響いていたはずだ。


 つまり。


「聖人を連れ出したのはお前達か」


 向こう側からは、既に誰がいるかバレていた。

 現れたのは、数人の使用人を連れたニリス。


「神の犬め……お前達のような罪深い者達に、彼女を渡すものか」


 彼は美しい顔を憎悪に染めて、こちらを見ていた。


『アッなんか勘違いされてる!?』


 アイヴィーの素っ頓狂な声も、危機的状況を緩和する事はできなかった。



アイヴィー『ところでマジここに長居したくないんですがまだ移動できなさそう!?』

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― 新着の感想 ―
アッ教会の犬が聖人を奪いに来たと思われてる!
聖人(アイヴィー)を殺した人が何か言ってる~……としか思わなくなってしまった>< いやもう、SAN値0な人とその仲間、となると、こう……会話が通じないな、と。伯爵、哀れな状況だったとは思うし、同情はあ…
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