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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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77 似ているけれど違う物


「ぷは! い、てて……」


 よく無事だったな、とミラノスは痛みを訴えながら思った。

 一歩踏み出した先に何もなく、前のめりにひっくり返るように落下した。その途中でハシゴに引っかかり、勢いを軽減させることができたから五体満足で生きているようだ。


 落下先が水溜まりだったのも、衝撃を軽減できた理由の一つだ。

 足がつく深さだが、突然の水に溺れるかと思ったが、幸い流れがないので、なんとか顔を出すことができた。

 だが引っかけた指は折れているかもしれない。ズキズキと痛むので、ミラノスは盛大に顔を顰めた。


『あ! ミラノス無事!? 死んだかと思ったよかったぁ――!』


 実に正直すぎる感想と一緒に下降してきたのは、やはりアイヴィー。

 仄かな灯りが周囲を照らし、ミラノスはゆっくり水から上がった。灯りのないなかで身動きできなかったので、正直助かった。


 持っていた燭台は落下時に放り出してしまい手元にない。風圧で火も消えたので、灯りになるのはアイヴィーしか残っていない。

 となると、上に残ったメンバーは何も見えなくなっているわけだが……クインティーナが傍にいるので、さすがのオクトスも危険な行動は取らないだろう。


『うっわ水に落ちたの? 怪我は? 立ち上がって平気? 痛いところは?』

「引っかけた指が痛いくらい」

『ミラノスも頑丈だなぁ……』

「これは運がよかっただけだよ」


 本当に死ぬかと思った。

 嫌そうな顔をしながら心臓を抑える。バクバクと脈打つのは、生きている証拠だ。


『ミラノスが無事なら、報せてこようかな。でも灯りもないのにこのハシゴは危険すぎ……』


 上を見ながらくるくる回っているアイヴィーには、もうないものだ。

 ふとアイヴィーは、何かに気付いて動きを止めた。

 ぐるっと周囲を見渡して、ミラノスの傍まで下がる。


「何? どうしたの」


 言いながら、ミラノスも周囲を見渡す。

 アイヴィーの発する仄かな光で周辺は確認できるが、全体は見渡せない。

 ミラノスにはわかるのは、落下した先がかなり大きな空洞になっていることだ。

 落ちた水溜まりは、人の手が入った水路だ。ミラノスが立っている場所は石畳で、恐らく水路を辿れば外に出られるだろう。


 そう思い、一歩踏み出そうとしたミラノスは。


『動かないで!』


 アイヴィーの鋭い制止に足を止めた。

 驚いて目を丸くしている間に、彼女は上に向かって声を張り上げる。


『――来ちゃだめクインティーナ! ここにあるの全部、毒だわ!!』

「えっ」


 叫んだ彼女は、厳しい顔でグッとミラノスに顔を寄せる。ぎょっとして身を引こうとしたが、背後が水路なのでそれも叶わない。

 アイヴィーはぐるぐると至近距離でミラノスを凝視し、安心したように表情を緩めた。


『よかった無事だ。でも危険だから、鼻と口を布で覆って。目も怖いけど仕方がない。なるべく近付かないように』

「近付かないようにって、何に」

『これ』


 そう言って、アイヴィーはふわっと上昇した。

 彼女は広さを確かめるように、空洞の壁に沿って飛び回る。

 そこに広がるのは、ミラノスが見たこともない洞窟だった。

 土をくり抜いたかのような空洞。壁は断層になった土が見え、天井からは氷柱のように垂れ下がった岩。そして地面が隆起し、洞窟全体が、岩が波打っているかのような形になっている。

 ミラノスは、こんな洞窟を見たことがなかった。


「なんだこれ……?」

『鍾乳洞……って言いたいところだけど、絶対違う』


 アイヴィーは厳しい顔で、洞窟の天井から垂れ下がる形をした岩を凝視している。


『鍾乳洞ってのは、太古の海が……大昔あったかい海だったところにできるやつで……可能性がないとは言えないけど、いろんな条件が揃ってできる洞窟なの』


 スラスラとミラノスの知らない話を当たり前のようにするアイヴィーは、まさしくヴィニカリスの叡智と呼ばれた存在だ。


『私の知らない条件で、侯爵家の下に鍾乳洞ができあがっていたとしても……成分は清らかな水とカルシウム。これらがゆっくり固まった物なのに』


 カツン、と天井から、細かい破片が落ちてきた。

 岩にぶつかって欠けた破片は、白い粉になって地面を転がる。


『これ全部、毒が固まってできた岩だよ』


 ――その広さに、ミラノスから血の気が引いた。


 アイヴィーがぐるっと回った距離だけでも、奥行きがよくわかる。小さな屋敷が建つほどの空間に、得体の知れない毒が満ちていた。


『幸い、この水路に毒は来ていないみたいだけど……このハシゴといい、水路の形といい、人の手は確実に入っている。まだ到達してないってだけで、このままじゃいずれ水路に毒が広まっちゃう』


 水路は基本、全て繋がっている。

 上流貴族から平民へと、川のように上流と下流の問題はある。しかし王都の水路は、繋がっていた。

 そしてここは、上流も上流。侯爵家の屋敷だ。

 ここから毒が流れては、王都が壊滅してしまう。

 壊滅……。


「……侯爵の狙いって、まさか」


 人を使って毒を撒く所業。

 王都を囲む不揃いの輪。

 侯爵家の地下にある毒の岩と、水路。


「王都を滅ぼす、こと?」


 呆然と呟くミラノスの後ろで。

 水路に大きな水しぶきが上がった。


アイヴィー『似ている毒を知っているけど作り方違う!! 違うけど似てる!! 異世界だから!? そもそもどうしてこんなの地下にできてるの!? この世界思ってたよりヤバイ!? 奇跡も魔法もないはずですが!?』

ないです。

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― 新着の感想 ―
ヒエーッ王都壊滅カウントダウン? たまたま見つけた毒洞窟と水路を繋げたのか、水路に繋げた空間で毒を育てた?のか……どっちにしても不味い事になりそう。もし埋めたとしても土や土中の水分の移動で水路に滲み出…
魔法はないて言われてもここまでくりゃもう魔法ですがな。結晶化してる様な状況でも水路で何か生きてる様ならば、それに順応した生き物である可能性はあるけど、白い鰐だったりする!?
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