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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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67/101

67 お姫さまじゃない


『無理だよ! クインティーナも困っちゃうよこんなん! 言われたところでどうしたらいいのかわかんないじゃん! 旦那様に訴えて貰ったところで解釈違いって殺されちゃうじゃん! ペンタスもクインティーナも死んじゃうじゃん! なんの解決にもならないじゃん!! じゃんじゃんうるさいなこのヤロー!!』

「あ、アイヴィーさん……?」


 クインティーナは大人しく、部屋で刺繍をしていた。

 ソワソワした気持ちを落ち着かせるために細かい、根気のいる手作業がしたかった。部屋を出ることができないからこそ、時間を潰す手間暇かかる作業がしたかった。そんなクインティーナにとって、刺繍は暇つぶしにもってこいである。


 本当は、もっとアイヴィーやミラノス、オクトス達の為に何かしたい。


 だが助けられる立場のクインティーナの役目は、その身を守ること。いざとなったら自らの足で逃げられるように、健康であることだった。


 そう思い、逸る気持ちを納得させ、刺繍を刺していたのだが。

 早朝に飛び出していったアイヴィーが、何やら混乱状態で戻ってきた。


『かといって他に手もないんですけどね――――っ! 何も思い付かない!! せめて私がポルターガイストできる系の霊であれば!』

「ぽる……?」

『もしくは自由に憑依できる系の霊であればっ大暴れできたのにっ!!』


 よくわからないが、アイヴィーの大暴れはすごそうだ。

 今も座っているクインティーナの膝の高さで、膝を丸めて上体を倒し小さくなっているが声は大きい。

 クインティーナにしか見えていないからと、アイヴィーは言動が自由だ。これ以上自由になるなんて、クインティーナには予想がつかない。


「何かあったのですか?」

『あったんだけど……あったんだけど』


 丸まって顔を伏せた状態のアイヴィーの歯切れは、悪い。

 伝えたいが言いたくない。そんな葛藤があるようで、声音だけでも気まずそうな空気を感じた。

 もにゅもにゅ口を動かしていたアイヴィーだが、ハッとして顔を上げた。


『……って、そんな私と会話していて大丈夫? 使用人に見られたら不審がられるんじゃ……?』

 我に返って顔を上げたアイヴィーは、部屋の中にクインティーナしかいないことに気付いた。

『……お付きの侍女(監視役)、どこ行ったの?』

「私が大人しくしていたからでしょうか。今日の朝から、人が少なく……とうとういなくなりました」

『怠慢だね!?』


 監禁対象が大人しいからと目を離すなど、逃げてくださいと言っているようなもの。

 そう思い叫んだアイヴィーだが、ふと思い至る。


(……ペンタスってアポ取ってた? 急に来た? アポなしで来たなら、侯爵家がお出迎えでてんやわんやしたのはわかる……いや、ペンタス一人を迎えるのに人手が足りないとか、侯爵家としてダメじゃない?)


 質が悪いとは思っていたが、本格的に使用人の教育が必要だ。


(……って、これは女主人が考えること!)


 それどころではないと、アイヴィーは首を振った。


『実は、私の弟が……』


 気まずそうにアイヴィーが語ったのは、実弟が侯爵家に来てからの顛末だった。

 話の内容に、クインティーナは目を見開いて口元を押さえる。


「そんな……では、弟様は、今も地下の独房に?」

『そう。私は例の魂に襲われて、移動せざるを得なかったけれど……あの子はまだあそこに居る』


 そう言ったアイヴィーは、とても心配そうだった。


(家族……ですからね、当然です)


 クインティーナに家族はいないが、家族のような人達はいる。


『ペンタスの無事も、ペンタスの言っていたことも気になるし……助けたいけれど、私ができるのは見える聞こえる人に訴えることだけ。訴えられたところで、クインティーナも困るってわかっているんだけど……』


 クインティーナは非力だ。

 助けを待つ、囚われの身に近い。

 だけど本当は……。


「大丈夫です、アイヴィーさん」


 クインティーナは、グッと拳を握りしめた。


「弟様を、お助けしましょう」

『クインティーナ?』

「今こそ、蓄えていた力を解き放ちます」

『クインティーナさん?』

「お嬢様のお忍びに付き合ってきた経歴が、今こそお役に立つときです」

『ごめんちょっと待って!?』


 クインティーナは手にしていた刺繍セットを置いて、ふんすっと立ち上がった。

 貴族令嬢らしい優雅な振る舞いは投げ捨てる。一緒に着ていたドレスも投げ捨てた。アイヴィーが悲鳴に近い制止の声を上げているが、立ち止まる理由にはならない。


 クインティーナは、ずっと待っていた。

 助けられる日を待っていた。


 クインティーナの行動が、ニリスの逆鱗に触れるかもしれないから。ニリスがその気になったら、クインティーナは殺されてしまうから。


 じっとしているのが正解で、助けを待つのが安全。

 さながら、それは囚われのお姫さまだった。


 ――だがクインティーナは、お姫さまではない。


(皆さんが、助ける準備をしてくださっていた。だから私は待っていられた……でも、助けを求めている人がいるのなら)


 裁縫ばさみで、一番地味なドレスのスカートを切断する。膝丈にして、いつでも走れるように調整した。


「私が、お助けしますっ」

『お待ちになって!』


 クインティーナの意志は、固かった。



アイヴィー『制止しているのに止まる理由にならないってなに!?』

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― 新着の感想 ―
思い切りの良さっっっ!
いやもうさ、もうさぁ……情報を開示しようよ。アイヴィーさんが「いる」って、話すことができるって、情報開示して、味方は徒党を組もうよ……。もどかしいがすぎる>< 続きを楽しみにしています。
うんまぁ、そーなるのは判らんではないわな。だって身代わりの前何やってたか考えたらねぇw;
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