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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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48/49

48 対応の変化


 幼い時代。ミラノスも屋敷中を走り回っていた頃があった。


 あちこちの扉を開けては何の部屋か確認して回っていた幼い日。父の部屋を開けたミラノスは、この魂と遭遇して二度と父の部屋を開けなくなった。


 それ以来ミラノスは、扉を開けるときはそっと隙間を空けるように開くか、二番手に入るようにしている。

 幼い日のトラウマと言ってもいいかもしれない。


(というか、まだいたの)


 ぱっと見どこにもいないのですっかり油断していた。まさか棚の後ろ、壁との間に挟まっているなんて。

 魂に壁は関係ないので、実際の所挟まっている訳ではないのだろう。しかしこちらからすれば、隙間から質量的にあり得ない手が伸びているので、とても心臓に悪い。


(……彷徨う魂は、生者に干渉してこない)


 今までがそうだった。

 だが、今のミラノスは、元気に話しかけてくるアイヴィーを知っている。

 理性を持ち、思惑を持ち、試すような言動をする魂を知っている。


(アイツほどじゃないとしても……もし、知性が残されているなら)


 だからか、そんな魔が差した。


「――父上が秘密にしている書類の場所を、知らない?」


 小さな声は、ミラノスが思った以上に震えていた。


 問いかけてから後悔する。

 だが口から出た言葉はなくならない。


 声が届いたのか、棚の隙間からぎょろりと変色した眼球が覗く。緑に腐食した目と目が合って、ミラノスはガチリと体を硬直させた。


 見られているだけなのに、視線が粘つく。

 全身が重くなり、地面に沈んでいく錯覚すら覚えた。


 ぬらぬらと、縦に無理矢理引っ張られたような人型が、棚の間から身を乗り出す。それは長い手足で床を四つん這いになったのに、視線の高さはミラノスより上だった。

 言い争うオクトスのセンタス達の声が遠い。心臓が、耳の横で脈打っているかのようだ。


 じっと黙ったままミラノスの周囲をぐるっと回った魂は……そのまま、元いた場所に戻っていった。


(――戻るの!?)


 ずっこけるかと思った。

 これでは、思いつきで問いかけたが、怖い思いをしただけだ。


(聞かなきゃよかった! 聞かなきゃよかった!! 何だよ今の、見ただけ!? あの時間は何だったの!? 音がしたから見に来ただけ!?)


 思わず泣きそうになってしまった。


 しかしすっかり油断していたミラノスの前で、長い指先が揺れる。


 異様に長い人差し指は、部屋の奥にある机を指差していた。

 その机は、最初に調べた。引き出しを取り外して、仕掛けがないかも確認済みだ。

 だが……。


「……」


 ミラノスは無言で、机に近付いた。

 執務室にあるのとは違う、簡易的な机だ。言ってしまえば小さいかもしれない。

 机には長方形の引き出しが一つだけ。この引き出しの中身は、簡易的な文房具だけだった。


(引き出しが二重底になっているとか、文房具がに仕掛けがあるとか、そんな事はなかった。いたって普通の机で――……)


 ミラノスの視界の端で、棚と壁の隙間に居座る魂が揺れる。


 隙間にいる――……。


 ミラノスは、もう一度引き出しを外して、机の下に潜った。

 引き出しの上。天板の下。

 もぐって見上げた先に、何かがピンで貼り付けられていた。


(まさかこんな所に――何だこれ?)


 千切らないよう気を付けて、その何かを剥がす。手触りからして、紙ではなく羊皮紙だ。

 小さな机一面を覆う大きさの羊皮紙。


 それは、地図だった。

 アイソメトリア国全土の地図。


 本来なら、隠すような物ではない。

 だがその地図には、所々に赤いインクで印がつけられていた。


「これは……?」


 地図には、ペルデュランの領地に印がつけられていない。つまり領地と関係のない部分でつけられた印だ。

 しかし印の数が多くて、正直ミラノスには意味がわからない。

 果たして重要な意味を持つのかも怪しい。


 ――王都を囲うように点在する印がなんなのか、ミラノスにはわからなかった。



アイヴィー『あ、怪しい儀式が始まりそうな地図だぁああ――――っ!!』

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― 新着の感想 ―
思わずジャンルを確認しました。 良かったホラーじゃなかった(笑) こう先生の書かれるお話が好きなので、ジャンル見ないで読んでました。
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