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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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41/49

41 姉は聖人 聖人は姉


 これはヤバイ。

 アイヴィーとクインティーナは思わず視線を交わし合った。

 ヤバイ。


『何を考えているとか、推理できるわけがなかった――旦那様は狂っている』


 狂っているから殺人犯になったのか。

 殺人犯になったから狂ったのか。

 どちらが先だったのかはわからない。


 だが二十年前にあった聖人のお役目。

 教会による性被害。女性に対する嫌悪。

 嫌悪するからこそ姉と性を関連付ける忌避感。

 偶発的に起こった妻の死。


 全てが混ざり合って、繋がって、歪な線になっている。


私の遺品(ペンダント)を大事にしていたのも、なくなって大騒ぎしたのも、私を聖人と思っているから。聖人とは、つまり姉だから。戻って来たペンダントをクインティーナに手渡したのは、クインティーナも聖人だから。前妻ひっくるめて聖人だから』


 つまり、クインティーナも姉。


『彼女とかあなたとか、区別がついているようでついていない。クインティーナに私のことを聞いていたけれど、私じゃなくて姉の言葉を待っていたのかもしれない』


 ――彼女はなんと言っているかと、ニリスは気にしていた。


 怒っていないか。待っていてくれるか。許してくれるか。

 全てはアイヴィーを通り越して、弟を省みずに役目に殉じて死んだ姉へと向かっているのだとしたら。


『何だっけこれ、親に与えられなかった愛情を姉に求めて、その姉からも思ったような愛情を得られなくて。大人になってから共通点のある女性に姉を重ねる……代償行為? それとも母親の傷!? どれもしっくりこない!! だって狂っているから!!』


 一番近いのは、共通点があるだけで、過剰な安心感や癒しを求める代償行為かもしれない。

 妻を殺害するのも、ニリスが安心感を得るための手段だった。


(極度のシスコンとか、そういう次元じゃないわこれ心の傷だ! 姉の存在そのものが傷だ! だけどその姉にしか、旦那様に刻まれた傷は癒やせない――から、別の形で姉を求めてこんな事になっている……んだと思う!)


 ニリスの行動の根源は、姉。

 そして聖人。


(――という事は、旦那様はクインティーナを殺さない)


 すっかり青ざめているクインティーナ。

 死の直前に聖人判定されたアイヴィーと違い、魂が見えていると判断されたクインティーナは聖人として認識されている。ならば殺されることはない。


(だけど、逃げるリスク高くなっちゃったな!!)


 実家に妻の遺体を奪われたくないからと燃やした男だ。

 自分の傍から逃げるなら、殺さなくても――手足の一つや二つ、切り落とすかもしれない。

 いいや、手足で済めばいい方だ。


(旦那様は、殺害に対して敷居が随分低くなっている。聖人であり姉のクインティーナ(ではない)だとしても、逃げ出せば解釈違いで殺してしまうかも……)


 結論。

 逃げる方が命の危機。


「ヴィニカリス……そう、彼らは残念だ。だが、あなたの育った土地を穢さずに済むならそれで良かったかもしれない」


 二の句が継げなくて黙ったクインティーナ。

 沈黙の中、ふと思い出したようにニリスが口を開いた。


「今になってあなたが、姉上が私の傍にいてくれるのは、きっと神の思し召しだろう。あなたに見届けさせようとしているに違いない。あなたが救った国の行く末を」

「侯爵様?」

『一気に不穏になってきた』


 今までも不穏だったが、別の方向から不穏な空気が顔を出した。

 嫌な予感を感じ取ったアイヴィーは、警戒するようにニリスを伺った。しかし相変わらず、その表情は変わらない。首に絡む女の手も変わらない。


 ……背後の霊も、どう判断すればいいか迷う。ニリスが殺した前妻だと思うが、詳細が不明で何もわからない。


 アイヴィーがちょっと背後霊に気を取られている間に、ニリスはクインティーナへと視線を合わせた。


「あなたは、ペルデュラン男爵から何も聞いていないだろう」

「だ……お父様から?」

『待ってここで男爵家出てくるの? 内通疑惑が生まれるんだけど』

「聖人は、尊ばれるべきだ」


 ニリスがソファから立ち上がる。

 背後霊が、地面に沈むようにニリスの体に溶けていく。


「大衆の、国の犠牲になるのではなく。神に等しい存在なのだから、神として誰よりも頂点にあるべきだ。神への陳情など……徳の高い信者こそが、果たすべきだ」


 そう言って窓の外を見る。

 すっかり日が暮れて、暗闇に満ちた空を。


「聖人がいない今ならば、そうせざるを得ないだろうな」


 暗闇を背景に、窓に映ったニリスが笑う。

 それは凄惨な、残虐さを滲ませた顔だった。

 思わずクインティーナも立ち上がる。


「お待ちください、一体何を仰って」

「姉上は心安らかに、ここにいればいい」


 うっすら微笑んだまま、ニリスは踵を返した。背中にいた霊は、すっかり彼の背中に埋まり手も首から離れている。


「もう二度と奪わせない」


 扉が閉まる瞬間に聞こえたのは、静かで低い、暗い決意だった。


『――絶対何か企んでるじゃん!?』


 アイヴィーは腹の底からそう叫び。

 腰が抜けたクインティーナは、崩れるようにソファに座り込んだ。



死に際に聖人と判断されたアイヴィーだが、生前は間違いなく聖人でなかったので、誤解がなくても数ヶ月後くらいに殺されていた。

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― 新着の感想 ―
さにてぃーがぜろですね……(あえて平仮名)。納得しました、とりつかれてるどうのこうの、というよりも、もうロール失敗し続けて0になってますね>< あと、弟くん、家族が哀れ……。しかも、なんかアイヴィーさ…
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