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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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35/49

35 あれだけ騒いでおいて?


 その日の夜、いつもより早い時間にニリスはクインティーナの元を訪れた。

 ここ最近騒がしかった屋敷も、すっかり静かだ。

 それは騒がせていた原因が、やっと見付かった安心感。

 しかし騒がせていた原因が、何故か今……クインティーナの手元にある。


「あなたのおかげで見付けることができた」

「え、あの、これは?」

「あなたが見付けたペンダントだ。大切にして欲しい」


 そう言って差し出されたペンダントを受け取ったクインティーナは宇宙を背負った。

 ちなみにその背後で、アイヴィーも一緒に宇宙に行った。


『なんでクインティーナに渡した……?』


 アイヴィーの遺品である。

 そして現在は夫のニリスの所持品である。

 あれだけ執着していたペンダントを、何故保管するのでなくクインティーナに手渡したのか。


 見付かったよと報告するだけならまだしも、何故。

 何故この流れで手放した。


 宇宙を一周したアイヴィーは、深く息を吐いた。


『はぁー……落ち着いて。落ち着くの。そう、この意味わからん行動を聞くのが今日の目的……聞くこと増やしてくるんじゃねーわよ旦那様ァ』


 冷静にはなりきれなかったが、その呟きでクインティーナも我に返る。


「お、お疲れでしょう。どうぞ座ってくださいな」

「ああ」


 立ちっぱなしは何なのでと、なんとかソファへ誘導することができた。


 話がしたいと使用人を通して連絡していたので、ニリスは促されるままにソファに座る。話が通っていたので、クインティーナの部屋には軽食が並べてあった。お互い夕食後なので軽くつまめるビスケットやナッツ類だが、ないよりはマシである。

 ちなみに飲み物はワインにしましょうかと問われたが、アイヴィーの件があるのでハーブティーをお願いした。ワインで毒殺の話を知っていて、ワインを持ち込む勇気はない。


 そうして準備を整え、気合いを入れていたのだが――座る前に、部屋に入ってすぐペンダントを渡されて、クインティーナはすっかり出鼻をくじかれた。


(いけません。しっかりしなくては)


 頑張ると決めたからには、相手のペースに巻き込まれてはいけない。


 手渡されたペンダントを、取り敢えずテーブルの上に置く。ふよふよと苦い顔をしたアイヴィーがその真上にやって来た。クインティーナとニリスはテーブルを挟んで座るので、自然とアイヴィーは二人の間に収まった。

 アイヴィーはなんとも言えない顔をしているが。クインティーナとしては心強い。


 お茶の準備をした使用人が下がるのを確認してから、クインティーナはニリスに早速とばかりに切り出した。


「侯爵様はお気付きかと思われますが、私には彷徨う魂が見えます」

「ああ」

「ですので、アイヴィーさん……侯爵様の、四番目の奥様とも、お話ができます」

「ああ」

「そのアイヴィーさんですが、今まではペンダントを探して傍にいませんでしたが、本日見付けることができたので、こちらにいらっしゃいます」

「そうか」


 平坦な相槌だが、そこには隠し切れない期待が滲んでいた。

 表情は変わらない。口元はにこりともしないし、眉も微動だにしない。

 けれどニリスの赤い目は子供のようにキラキラと輝いていた。


 ――だから、なんで、そんな反応。


 アイヴィーとクインティーナはドン引きだった。


 事情を知らない状態で見れば「わぁ侯爵様にも可愛いところがあるんですね」で終わるが、クインティーナの台詞はつまり「私はお前が殺した妻とお話しができます」だ。

 実質「お前が殺人犯だと知っているぞ」と言ったのと同じこと。


 だというのに、殺した側の人間が、何故目を輝かせるのか。


 殺人犯だと知られるのは致命的なはずなのに、それを差し引いてでも自分が殺したアイヴィーを話したいというのか。


 ――自分で殺して置いて。


 クインティーナは膝の上でぎゅっと拳を握り、問いかけた。


「侯爵様は……アイヴィーさんを、何故殺したのですか」


 直球でいったな、とアイヴィーはクインティーナの剛球に目を見張った。


 ここは相手の出方を窺いながら会話を調整したいところだが、ニリスはどこまでも読めない。しかも相槌しか打たないので会話が続かない。

 ならば、直球剛球超速球になっても仕方がない。


 というか、いざとなると度胸があるのがクインティーナだ。アイヴィーが質問を用意する手はずだったのだが、自ら質問している。


 問われたニリスは、相変わらず微動だにしない。

 一切動揺することなく、ただ一言。


「女は気持ち悪いからだ」

「え?」

「私は、妻となる女が、気持ち悪くて仕方がない」


 僅かな嫌悪も滲むことなく平坦な口調で、ニリスはそう宣言した。

 彼と相対しているクインティーナは、その「妻」で「女」だ。だというのに、ニリスに嫌悪の色はない。

 ニリスの中でクインティーナは、もう「妻」ではないのだ。


 ――つまりこの男は、個人の為人ではなく役割に殺意を抱くのだ。


(それはもう、誰でもよいのと同じでは?)


 ぞっとクインティーナに怖気が走る。


『……待って。つまり私って気持ち悪いから殺されたの!?』


 聞き捨てならんと叫ぶアイヴィーに、怖じ気づいたクインティーナはなんとか持ち直した。

 やはりアイヴィーがいてくれてよかった。


「そもそも私の母が、気持ちが悪い人だった。姉上が聖人として選ばれる前から……」

『なんか語っているけれど、私からすれば旦那様が一番気色悪いからなー!?』


 本当にいてくれてよかった。

 絶対怖い話が始まるけれど、クインティーナはアイヴィーがいるから、なんとか耐えられそうだ。



ニリス「妻気持ち悪い」

アイヴィー「お前が一番気持ち悪い」

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― 新着の感想 ―
聖女のこの国に対する扱い鑑み・・・気持ち悪い???まさかとは思いますがアイヴィーの前任者的存在が過去にいらっしゃったりする?本人は危機回避に勤しんでるかゲームやってる感覚だったりするけど周りがドン引い…
はあああ〜!?!? てっきり殺したのは憑依してる霊に操られて、とかそんなん予想してたのに、理不尽過ぎるやろー!!
え?
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