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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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20/49

20 太陽の下で

続きが来ると思いましたね?

ここでまさかのミラノス側に視点をずらします。


 太陽と月は、天に居る神が地上の人々を眺める為に使う炎だ。


 国の端から端まで見守る為、東から西へ昇っては沈んでいく。夜は人々がちゃんと眠っているか確認する為、昼より弱い灯りで下界を照らしている。

 夜を照らす月の満ち欠けは、昼と同じ明るさでは眠れなかろうと神が炎を半分にしようとしてうっかり大きく削ってしまい、大きく揺れ続けているからと考えられていた。

 ちなみに星は、はじけ飛んだ炎の粒だ。

 よって昼だろうが夜だろうが、神はいつだって人の営みを見守っているというのが教会の教えだ。

 空が雲で覆われても雨が降っていても、一筋の日差しさえ在れば神は我らを見ておられる。

 だから悪い事をしてはいけないと、大人が子供に教える小さな信仰。


 その太陽が真上に上がる頃、ミラノスは王都を歩いていた。

 大通りから外れた、薄暗く治安の悪い路地を。供もつけず。一人で。


(あ――――っ帰りたい!)


 古びた外套を目深く被り迷いなく進むミラノスだが、外套の下の顔色はすこぶる悪かった。


(なんで俺がこんな治安の悪い場所を歩かなくちゃいけないわけ? 貴族だよ? 男爵だけど貴族だよ? 普通に相手を呼びつけても許される立場じゃないの? なのに毎回毎回足を向けさせるってどういう事なの? それならもっと交通の便が良い場所で商売してくれない!?)


 文句を連ねながら足を動かす。立ち止まった瞬間、獲物を狙う不届き者が寄ってくるとわかっているので、ミラノスは必死に歩を進めた。


(そりゃさ、わかっているよ。扱っている商品が商品だから大通りで商売なんかできないって。でもさ、そう言うのって裏と表を上手く使い分けるものじゃないの? がっつり治安の悪いところで商売するなんて、後ろ暗いですって証言しているようなものじゃん。もっと将来性を考えて商売してくれないかな)


 外套の下で抱えた鞄をぎゅっと抱きしめる。

 何度か通っている道だが、何度通っても心臓に悪い。


 日の光が当たらない場所は、神の目が届かない場所だ。

 一筋の光さえ在れば神の目は届くと言われているが、その一筋の光さえ通さず悪さをするのが不届き者だ。


 そして、神の膝元に昇る事が許されなかった魂もまた、薄暗い場所に溜まりやすい。

 ジメジメと陰気な魂を素通りし、聞こえてくる怨嗟から逃げるように歩調を速める。


(そうそう、これこれ。これが俺の知っている魂。どいつもこいつも未練たらたらで、自分以外の誰かを責め続けている害悪)


 日陰が似合う陰気具合だから、ミラノスは生きている人間と見間違えた事がない。どんより光っているので、間違えるわけもなかった。

 吐き出す怨嗟にはミラノスが驚くような内容も含まれているが、ミラノスは彼らの言葉を信じない。


 彷徨う魂は嘘をつかないが、真実も話さない。

 簡単な事だ。彼らは自分が見聞きした事しか知らない。自分が真実だと思った事しか話さない。彼らに遠くを見通せる能力などないし、間違いを受け止める余裕もない。

 そして彼らの足は、驚くほど遅い。

 肉体の重さから解放されたはずの魂は、未練の重さか、罪の数か知らないが天に昇る事なく大地に縛られる。生きていた頃よりも重いのかもしれない。一歩も動けず、同じ場所に居座り続ける魂もいた。

 物心ついた頃から彼らを見ていたミラノスから言わせて貰えば、例外はない。


 そのはずだった。


(昼に活動的な魂なんて今までいなかった……あいつ、本当におかしい)


 脳裏を過るのは、初対面で人面壁なんて未知の現象を起こした魂。

 ライコア侯爵家四人目の妻、アイヴィー。


 重さなど感じさせない様子でふわふわ浮遊するのも。月明かりのようにうっすら輝くのも。昼間に元気に活動できるのも。会話が通じる理知的な面も、ミラノスが知っている彷徨う魂と大きく食い違う。

 オクトスには魂の詳細など語った事がなかったので異彩に気付かず当然だが、同じ景色を見ていたはずのクインティーナがあっさり受け入れているのは、流石に天然が過ぎる。


(あの子ちょっとお花畑だからな……)


 使用人としてはどんくさいくらいだ。

 クインティーナが母亡き後も使用人として働けたのは、仕えるお嬢様に気に入られていたからだ。

 なんて言ったら兄や妹から顰蹙を買う事になるが、ミラノスはクインティーナを有能と思っていなかった。まあ、男爵家の使用人としてなら問題ない。


(それがまさか、侯爵夫人の皮を被っているんだから、何が起こるかわからないよね)


 使用人として必要なかったスキルが役立っている。


(あの子が今も侯爵家で過ごせているのって、アイヴィーの存在だけじゃなく天然というか鈍い部分があるからなんだろうな……俺なら無理)


 優秀な警報器(アイヴィー)がいても、対処するのは自分だ。

 度胸のある方ではないと自認しているミラノスは、いざというとき自分の判断で侯爵家(魔窟)を切り抜けられる自信がない。


(まあ、一週間で殺される事はないだろうけど何が起きるかわからないし、さっさと情報を集めてなんとかしないとだよね)


 今のところ、ライコア侯爵の結婚期間は最短で一ヶ月。

 四人目(アイヴィー)である。


(目立った行動をしないなら、それより早く殺される事はないと思いたいけど……不安だ)


 今まで見てきたどんな魂より輝いて活発に動き回るので、動きが予想できなくてとても不安。

 ミラノスは青い顔でキリキリと胃を痛めながら目的地に辿り着いた。



アイヴィー(あばばばば……!!)


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― 新着の感想 ―
価値観の違いや恨みだけで地上に留まってる訳だけでもないだろうしなーアイヴィさん。半分精霊みたいなモノになりかけてる気もしないでも。所でミラノスどの、何買おうとしてるんすか。情報買うのなら遅すぎるし。言…
やられたー!!( ゜д゜) クインティーナ危機一髪!とドキドキしてたらまさかのミラノス視点! でもミラノスに見える霊たちの姿を知ると、あらためてアイヴィーの異質さが際立ちますね。ホントに死んでるんだ…
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