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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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15/49

15 自分の事ほどわからない


 その後色々試してみたのだが、遺品のペンダントがアイヴィーの媒体で間違いなさそうだった。


(私が移動できるのは丁度、ライコア侯爵家一周分。今まで地縛霊と勘違いしていたのは、屋敷の中心にペンダントが置いてあったからだったのかー)


 ニリスの私室は、侯爵家の敷地的に言えば丁度真ん中にある。

 侯爵家から出られないので自らを地縛霊だと思っていたアイヴィーは、まさかの新事実に呆然としていた。


『幽霊って色々自覚ないんだなー……』


 だからなんだという話だが、自分が血液型A型だと思って生活していたら実はAB型だったみたいな気持ちだ。もしくは生まれも育ちも東北県民と思っていたら実は生まれが九州だったみたいな。

 認識と現実がすれ違っていたのに気付いた瞬間の虚無を味わっている。


 もしや、ニリスを呪ったり取り憑いたりできないのは既にペンダントに取り憑いている所為か!? と気付いてペンダントから離れようと挑戦してみたが、そもそも憑依している自覚がなかったので、方法がわからない。


 打つ手なしである。

 アイヴィーはしょんぼりクインティーナの元へと戻った。


 しおれた顔で戻ってきたアイヴィーに、部屋で読書をしていたクインティーナも驚いた。相変わらず侍女が控えていたため問い返すことはできなかったが、クインティーナが受け答えできない事をわかっているアイヴィーは一人で語りだす。


『私、憑依霊だったみたい』

「?」


 結論から入ったアイヴィーだが、霊の種類に関して、クインティーナにまったく伝わらなかった。

 そもそもこの世界。魂の存在は信じられているが、種類分けされていない。

 されているにしても天に昇れたか昇れなかったかだ。


 大地を彷徨うのは基本的に天に昇れなかった哀れな魂であり、そこに地縛霊や憑依霊などという種類は存在しない。

 悪霊という概念もない。


(彷徨う魂は彷徨うだけ。生前の未練や罪を浄化して、やっと天に昇る……退治する概念もなかったなそういえば。見えるイコール聖人で、聖人の仕事は幽霊退治じゃなくて神様への伝言役だし)


 彷徨う魂は、基本放置だ。

 見えなければいないのと同じ。いると信じられているが、見えないのだから相手にされていない。


(悪い事が起きても、霊の所為ってならないのよね。だって死んだら天に昇るんだから)


 実際に幽霊になったからわかるが、幽霊は何もできない。

 相手を呪う事も、物を浮かせる事もできない。取り付いて弱らせる事も……。


(いや憑依はできているから、こればっかりは要検証か)


 自覚ある幽霊として、魂の状態でどこまでできるか研究心が芽生えたアイヴィーだった。

 行動範囲が限られた今、何ができるのか調べるのは急務だ。


(一番はクインティーナの安全だけれど!)


 というわけで、アイヴィーはクインティーナの眼の前で浮きながら、何が起こったのかを語った。

 一方的な現状報告。

 アイヴィーの身振り手振りが付いた臨場感たっぷりの語りは、冒険譚を聞いているような気分にさせた。


 クインティーナの手元にあるのが詩集なので大きな反応は出せないが、驚きすぎて天井を突き破った下りや怒りが爆発してペンダントが反応(?)した下りなどは大きく反応しないようにするのに苦労した。アイヴィーの報告を聞きながら優雅な侯爵夫人のフリをするのは、とても過酷だった。


『そんなわけで、屋敷の中で移動できない場所ができちゃったわ。大変遺憾だけれど、私一人じゃペンダントの移動はできないし……クインティーナのところが範囲外にならなくてよかったわ』


 アイヴィーの言葉に、クインティーナも安堵した。前触れなくアイヴィーの姿が見えなくなれば、クインティーナも不安で淑女の皮など被っていられなくなる。不幸中の幸いというやつだ。

 ちなみにクインティーナに憑依が通じなかったので、形見のペンダントを中心にある程度行動できるようだと伝えておいた。


『ペンダントは今、烏の巣に持ち帰られちゃったけれど、逆に言えばずっとそこにあるから問題ないわ。旦那様がいつ手放すかわからない状態のほうが怖いし、これでよしとしよう!』


 烏の巣にある方が明日どうなるかわからないが、コレクションとして収集されたなら大事にされると思いたい。

 烏は頭がいいと聞くが、集めたものをどうするのかまでは知らない。壊されないといいなとちょっと心配だった。

 ひっかき傷だって、本当はつけたくない。アイヴィーにとってあのペンダントは、今世の家族との繋がりを感じる品だ。


(なんて、もう二度と触れないけれどー!)


 それでも傷一つ付けたくない気持ちは健在だった。


『使用人同士の確執についてはー……クインティーナは関わらないほうがいいわ。マイナが味方になってくれたら心強いけれど、今のあの子が旦那様をどう思っているか不明だし。フルスは料理人だから遭遇するのも難しそうだし』


 家の運営は夫人の仕事。

 客にどんな食事を提供するかなど、話し合う事もある。けれどそれは料理長とのやり取りで、平の料理人が出てくるものではない。そもそもクインティーナの権限はそこまで及ばない。侯爵夫人だが、本当にお飾りとして扱われている。


(侯爵夫人として素晴らしい采配をして使用人達と和解――! って展開もありだけれど、それをしようとして私が死んだからね!)


 できる妻アピールは逆効果。

 アイヴィーという実例があるので却下なのだ。


 そんなわけでニリスを見張れなくなったので、アイヴィーはクインティーナの傍で警戒するしかない。


『情報が……情報が足りない……何なら全部推測の域を出ないから、確かな情報が欲しい……!!』


 切々と、クインティーナの周囲を警戒しながら、アイヴィーは一人唸っていた。



憑依できるならニリスにしたいアイヴィー。

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