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四人目の被害者になりました。五人目は阻止したいと思います!  作者: こう


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102/112

102 体力差


 ――何故と問われて、アイヴィーは首を傾げた。


(何故と言われても、死んじゃったものは仕方がなくない?)


 むしろ幽霊になった自分を見て「死に戻りじゃないのかよっ!」と突っ込みを入れたくらいだ。


(よく覚えていないけれど、毒を飲んだとき……多分私、諦めたんだよなぁ)


 死に際で笑っていた、と言ったニリスを思い出す。

 彼がアイヴィーを聖人だと判定した死に際の顔。

 その死に際で、アイヴィーもまたニリスを見ていた。


 助ける気のない、道端の蟻を観察するような無感動な目を。


(あれを見て、あっ無理だって思ったんだよなー……)


 無理だ。

 愛せない。

 そう思ったのだ。


 ――数ある恋愛小説は、苦難の連続だ。


 それこそ生まれ変わったり死に戻ったり、あるときは何度も繰り返したり……最長記録何回だ? 最新作が更新され続けるので、もう数え切れないほどループしている主人公もいる。

 主人公は作者が与えた苦難を乗り越える。しかし一人ではない。時々何でも一人で乗り越えるメンタル鬼強主人公もいるし嫌いではないが、多くの主人公はヒーローと共に苦難を乗り越える。ヒーローじゃなくても、必ず精神的支柱や主人公の力となるキャラクターがいる。


 嫁いで間もないアイヴィーは、ニリスがそうだと思った。

「旦那様」だから、そうなんだろうな、と。


 だが違った。と言うかアイヴィーが無理だと思った。

 こりゃやむを得ずヒロインを殺さなくちゃいけないヒーローとかではないな、と。

 そう思ったらなんとなく、笑えてきたのは覚えている。


(死に際で、私ってヒロインじゃないなぁ~って笑った気が……なんとなくする)


 その笑みで聖人認定されたのなら、聖人はかなり俗っぽい。と言うか頭が軽い。


(旦那様呼びだって深い理由もないのだけれど……)


 確かにニリスによって殺されたわけだが、アイヴィーにとってニリスは「旦那様」だ。それ以外の何者でもない。

 そんな深刻に考えなくても……とアイヴィーは思っていた。


 だが、普通に考えると、アイヴィーが異常だ。


 自分を殺した相手を「あいつ」や「あの野郎」と罵らず、一ヶ月そこらしか夫婦関係でなかった相手を「旦那様」と呼び続ける精神は、正直言っておかしい。この呼び方がペンタスにバレたなら、あんな相手でも夫と想い続けているのかと、ペンタスが絶望したかもしれない。


 ――想っているわけでもない。


 先程述べたとおり、アイヴィーはニリスを想うのを諦めた。

 それまで想っていたのかと問われたら微妙だが、そうなれば素敵だなと思っていたのは否定しない。綺麗に裏切られたわけだが、ニリスの狂気を知った今なら想う前で本当によかった。


 では何故「旦那様」と呼び続けるのか。

 どうして呼び続けられるのか。


 ――どうして、こうも憎しみが湧いてこないのか。


 アイヴィーは気付いていない。知(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)。

 何故なら知覚していないから。疑問に思っても、そうなのだからと諦めが働く。深く考えたところで、自分の意志の働かない部分を解明することなどできない。


 だからアイヴィーは問われても、こう答えるしかできない。


『旦那様呼びは、そうとしか呼んだことがなかったから、惰性で呼び続けているだけかな!』


 嘘ではないが事実でもない。

 しかし何もわからないアイヴィーにとっては、これが真実。


『なんで明るいのかと褒められてもなー。そういう性分だったとしか言えないかなー?』

「本当に規格外で何もわからないよねアンタ……」


 結局答えらしい答えも得られず、ミラノスは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 しかし、指摘したところで不思議そうな顔をされたので、本当にわからないし気にしていないのだと察した。


 それなら、ある意味問題ない。

 ミラノスが気にしたのは、アイヴィーの深層心理がニリスを想っているのなら、彼の亡き今、アイヴィーに何か影響が出るのではと危惧したのだ。まったく問題なかったので肩透かしですらある。


『ミラノスは気にしいだなぁ。そこまで気にしなくても……わたしは特に深く考えていないよ?』

「アンタが規格外だから、より考えているんだよ」

『それもそうか……ごめんねレアキャラで』

「わからない言葉使わないでくれる?」


 ミラノスは何度目になるかもうわからないため息を吐き出して、頭を抱えた。


「まあいいや……とにかくアンタのことは、クインティーナに預けるから。これからクインティーナと行動して。何かあったら俺達に報せて」


 アイヴィーが居座っているのはペンダントのため、ミラノスよりクインティーナが身につけていた方が違和感もない。違和感がなかったとしても、ミラノスとしては自作品を身につけるのに抵抗があった。気にしない人もいるが、ミラノスは気にする人である。


『了解よ。原始的に大声出してみせるから』


 残念ながら他に呼ぶ方法がないので、ネタとして使えない。元ネタの作品もないので、ミラノスには何も通じなかった。当たり前だ。


「侯爵家の地下で見た奴とか、ああいうのが出たときに抵抗できるのはアンタくらいなんだから、しっかりしてよね」

『いや私も抵抗できてはいなかったけれど!?』

「いつ生きている俺達に牙を剥くかもわからないんだからしっかりして」

『疲れて投げやりになってるね!? 休もうミラノスごめんねここまで付き合わせて! ありがとうね! 寝て!』


 朝からずっと駆けずり回っていたミラノスは、実は誰よりも疲れていた。



オクトス まだまだいける

クインティーナ わりと休んでた

ペンタス 負傷中のため気遣われていた

ミラノス かなり駆けずり回ってHPマイナス

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― 新着の感想 ―
諦めたからこその達観なのかな?まぁその割にははっちゃけてる気がしないし止められる者もほぼほぼ居ないので呑気に浮かんでいられるとか。地に括られた連中はそうなるように仕組まれてるだけだし、天に上がった連…
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