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ナノライト  作者: かざぐるま
第四章 Rise and Fall.
29/57

第二十七話 毒の精霊

 



 四歳の春。

 母様と散歩をしているとき。

 その小さな塊を見つけた。


 薄紫色の、ぷよぷよとした物体。

 太陽の光でキラキラと輝いているように見えた。

 可愛い物好きだった私がそれに触れない訳が無い。

 きっと自分の宝箱にでも仕舞おうと考えていたのだろう。


 その物体が動き出すまでは。


 当時の衝撃を忘れることは無いだろう。

 …何せ、ただでさえ可愛い物が"生き物"だったのだ。


 護衛で付いていた召使いの声も、

 母様の朗らかな笑い声も聞かずに。


 まだ幼かった少女はこう言った。



 『私、この子飼いたい!』




 ---




 薄暗いジメジメとした洞窟の奥底。

 ぴちゃ、ぴちゃ。水音が響く。

 都会で耳を澄ましても聞こえない様な小さな水音。

 ここまで鮮明に響くのは他の音源が無いから。


 少し語弊があるかもしれない。

 音源に成り得る物自体はあるのだ。

 ただ、その生物がピクリとも動かないだけで。

 鍾乳石から滴る水が己の体に追突しようと。

 洞窟の鼓動に殺戮を急かされようと。

 その生物は一切の興味を示さない。


 諦めきれない想いに縛られたまま、

 何をするでもなく洞窟の奥で鎮座する。

 全く無価値な永遠の命がそれを可能にさせている。


 そんな生物にも活性化の時機というものがあった。


 粘体をぷるりと揺らし、

 体を引きずるようにして動き出す。


 期待と諦念を浮かばせながら。

 八つ当たりのように石の壁を溶かしながら。

 ゆっくりと、侵入者の気配を探る。




 ---




 父様は厳格な人だった。


 運輸業界の最も偉い人だとか、

 何百人の部下を持つ凄腕だとか。

 子供の私には何を言っているのか分からなかったが、

 とにかく仕事のできる人だったらしい。


 父様が私に喋りかける時となれば、

 食事のマナー、挨拶の仕方、勉強の大切さとか。

 小難しいことばかりで正直少し怖かった。


 そんな人だったから、

 私が■■を飼うことにも否定的だった。


 世話は出来るのか、責任は持てるのか。

 色々問い詰められたけど、とりあえず全部頷いた。


 病原菌は無いのか、暴れ出したりしないか。

 知らないけど、とりあえず全部頷いといた。


 最終的に母様の説得が入り、

 ■■は無事に私の家族になった。

 あの時ほど母様に感謝を述べたことは無いだろう。




 ---




 長く入り組んだ洞窟。

 何年前から住み着いているのかもう覚えてない。

 内部構造は定期的に変わるけど、

 その都度新しい道筋が頭に入り込んでくるから。

 ■■が洞窟内を迷うことは無い。

 いつでも真っ直ぐ出口に向かうことが出来る。


 前の侵入はいつだったっけ。

 三十日前くらいかな、男の人だった。

 すぐに追い払ったけど。


 待ち続けても意味が無いことは分かってる。

 ここに人間が訪れることは滅多にないし、

 数万人の中の一人が来る確率など考えたくもない。

 しかも人間には寿命があるのだから。

 時間制限まで付けば、その無謀さは際立つ。


 ……この曲がり角の先かな。


 数は多分一つだけ。

 たまたま迷い込んだだけの人間だろう。

 さっさと追い払って彼処に戻ろう。


 居た。

 細い脚。

 色白の肌。

 鋭い爪のような武器。

 深く被ったフード。

 そこからはみ出た髪は、萩色で…、


 …いや、違う。

 期待しちゃダメだ。

 そんなはずないじゃんか。

 こんな場所に居るはずないじゃんか。



「――――()()?」



 全身に電流が走るかのようだった。


 違う、違う、違う。

 まだこちらを見ていない。

 まだこちらに気付いていない。

 そんなはずは…、



「――――ぁ。」



 体を引きずり、鳴り響いてしまった水音。

 …今度は、確実に存在を視認された。


 記憶の底で眠っていたモノが蘇る。


 イムを呼ぶ甘く優しい声。

 イムに被さる艶のある美しい髪。


 違う。もっと核心的なことがある。

 彼女は、()()()()()()()()()()()()


 それを知っているのはほんの数人。

 "かあさま"、"とおさま"、"めしつかい"。

 あとは、イムをイムだと()()()()少女。


 気持ちがぐちゃぐちゃになって。

 自分がどうしたいのすら分からなくなって。


『 ……Naa…,……Naaa……!! 』


 気付いた時には逃げ出していた。

 とにかく、遠くへ。遠くへ…!




 ---




 イムはなんでも食べた。

 人間は雑食動物だというけど、

 イムに比べればまだ可愛らしいものだろう。


 道端の雑草も小石も全部飲み込んでいたし、

 私の宝箱を丸ごと食べたこともあった。

 …今でも覚えているくらいの大喧嘩。

 数日間はお互い顔も合わせなかった。

 結局寂しくなって、泣きながら仲直りしたけど。


 イムはすくすくと大きくなった。

 最初は私の拳くらいだったのに、

 気付けば顔くらいの大きさになっていた。

 半透明な体で消化器官とかは無かったけど、

 どこで栄養を吸収していたんだろうか。


 その頃には召使いもイムと遊ぶようになったし、

 父様から受ける苦情の数も大分減っていた。

 同じ屋敷に住まうモノとして、

 いや、家族の一員として確かに認められていた。



 ――さて、話は少し変わる。



 イムを拾ってから二年。

 私がちょうど六歳の誕生日を迎える頃。


 端的に言うと、私は苛められていた。


 加害者は同じリソルディアに住む少年少女達。

 苛めの要因は…、今になってもよく分からない。

 ずっとイムと遊んでいるだとか、

 金持ちの家に生まれただとか。

 まぁ、その程度の物だろう。


 まだ学校にも通ってない、年端の行かない子供達。

 だが環境に依るものか、人間の本能か。

 弱い者を甚振ることに容赦などなかった。


 近寄れば殴られ、蹴られ。

 遠くから見つかれば石を投げつけられ。

 その頃にはもう外に出るのも嫌になっていた。

 幸いにも屋敷の中は広かったし、

 イムと遊べるスペースも充分にあったから。

 痛めつけられる為にわざわざ外へ行く必要が無い。


 私は屋敷に引き籠るようになった。


 母様は私を心配していた。

 父様に何度も相談していたようだ。

 私を苛める子供の家へ直接出向くこともあったらしい。


 父様は傍観を貫いていた。

 傍観…、"無視"と言えば分かりやすい。

 その程度のこと、自分の力で乗り越えろと。

 齢六歳の少女にそう告げた。


 イムの様子は変わらない。

 イムだけはずっと私の傍に居てくれた。

 笑いながら走る私の友として。

 泣きながら眠る私の枕として。


 …イムはずっと傍で見ていた。

 私が苛められる様子も。

 涙を流しながら辿る帰路も。


 勿論、私を苛めていた子供達の顔も。

 どこかに付いているであろう眼で見ていた。

 私が何故家を出なくなったかも。

 どこかに在るであろう脳で考えていたんだろう。



 私が眼を覚ますと、屋敷がざわついていた。

 玄関に行くと数人の大人達が顔を真っ赤にしていて。

 彼らが私を苛めていた子供の親だとすぐに気づいた。

 だが、その子供達の姿は何処にも無い。


 母様は彼らにずっと謝っていた。

 父様はこれまでに無いくらいの形相だった。

 …その二人の足元には、檻があった。


 私の親友、イムが閉じ込められた、檻が。


 ――何故。

 近づきそう叫ぶと、召使いが経緯を教えてくれた。


 夜中の間、イムが屋敷を抜け出したこと。

 何軒かの家に忍び込んだこと。

 眠る子供達に噛みついたこと。

 同時に、体の内部に『毒』を注入したこと。


 私は言葉が出なかった。

 ショックを受けたからではない。

 何故イムがそんなことをしたか、悟ったから。


 イムにしてみればただの敵討ちだ。

 親友が苛められたから、やり返した。それだけ。


 でも事はそう簡単ではない。


 ――飼われていた化物が他者に危害を加えた。


 その事実が重要だった。


 幼い私は、"契約"というシステムを知らなかった。

 当然、イムを眷属にしていた訳では無い。

 そのことは余計被害者家族を憤らせたらしい。

 眷属化をしたとて、安全は保障されないのだが…。


 何にせよ様々な要因で過失はこちらにあると判断され。

 多額の賠償金を支払うことによって一件は解決した。

 幸い『毒』を受けた子供達の命も無事だったらしい。


 小さな化物の小さな復讐。

 それで終われば良かったのに。




 次の日、父様はイムを捨てた。




 ---




 あぁ、捨てられたんだ。

 すぐにそう悟った。

 悪いことをしたという自覚はある。


 でも先に手を出したのはあいつらだし。

 あれくらいの痛み。

 もふぁが受けたものに比べれば大したことない。

 もうもふぁに手を出すことは無いよね。


 檻を溶かし、外へ出る。

 見たことの無い土地だった。

 モファの家に帰るのは無理だろう。

 今更帰るつもりもない。


『 ………Naa……。 』


 …嗚呼。

 ……あぁ。

 ………あ、ぁ。


 ねぇ、もふぁ。

 イムね、寂しいよ。


『 …Naa…,……Naaa!! 』


 寂、しい。

 なんで、隣にいないの?

 ここどこ? ねぇ。

 やだよ。帰りたい。

 また遊ぼうよ、もふぁ。

 寂しい、寂しい、寂しい、

 寂しい寂しい寂しい寂しい、

 寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい、



 …気づいた時には、洞窟の入り口に立っていた。

 ジメジメとした暗い洞窟が、招くように口を空けている。

 餌を求める迷宮が早く入って来いと言っている。


 ――いいよ、早くイムを殺してよ。



 入ってすぐ、大きな蜥蜴が居た。

 そいつは毒液を撒き散らしながら迫ってくる。

 これで死ねるのだと…、


 ――やだ、やだ…! 死にたく、ない!


 …気づけばドロドロの死体が目の前にあった。



 結構進んで、蝙蝠の大群に会った。

 そいつらは笑いながら襲い掛かってくる。

 次は死のうと…、


 ――もふぁ、もふぁ、もふぁ…!


 …気づけば辺りは静まり返っていた。



 最深部、半円形の大きな空間。

 天井から鍾乳石が伸びている。

 待ち構えていたのは巨大な蜘蛛。

 気持ちの悪い糸を張り巡らせている。

 これには勝てないな…、


 ――…寂しいよ、遊びたいよ。

 ――暗い、気持ち悪い、お腹もすいた…。

 ――もふぁ…、宝物食べちゃってごめんね、

 ――そしたら、もっと遊んでくれるかなって、

 ――ごめん、ごめん、もふぁ…、もふぁ…!

 ――…やだよ、死ぬの、生きたい、

 ――生きて、かえりたい、…もふぁ…、

 ――…会いたい、会いたい。もう一回だけ、

 ――…ぁ、死んだら、もう、会えない…?

 ――生きないと、会えないんだ…、

 ――…そっか、そうなんだ、…じゃあ…、


『 ――Naaaaaa!!!!! 』


 勝たないと。

 勝って、生きて、会わないと…!




 ……体中が痛かった。

 蜘蛛は跡形も無く溶けている。

 天井から鍾乳石が落ちてきた。

 蜘蛛を倒したから、洞窟が崩れるのか。

 崩れたらイムも石に埋まってしまう。

 それでは困る、まだ死ねない。


 その時、二つの声が聞こえた。

 淡々とした声と、半笑いの声。

 それぞれ全然違う声だったけど。

 イムに何かを相談しているようだった。

 細かいことは分からない。

 でも大切なことは聞き取れた。


 『『 生き残りたいなら…、 』』


 生きたい、生きたい。

 力を貸してくれるなら借りよう。

 二つの声に対し了承の旨を伝え…、




 イムは、トキシン迷宮の親玉。

 ――兼、毒の精霊という座についた。




 ---




『 …Sya, a, aa… 』

「……………。」


 地面に転がる妖石に目もくれず、

 ようやく掴んだイムの姿を追いかける。



 イムはいとも簡単に処分された。

 父様の中に葛藤などは無かっただろう。

 ただ不要になったものを廃棄しただけだ。


 だが、私にとって。

 ()()()()()()、それは度し難い行為だった。


 その日から、母様と父様の言い合いが増えた。

 普段の朗らかな姿からは想像もできない程、

 母様は父様を厳しく非難していて。

 父様は呆れたように首を横に振り。

 召使いだった初老の男は私を宥めてくれた。


 どうしてそういうことが平然と出来るの?

 だから責任が取れるかどうか聞いただろう。

 あの子の気持ちを考えたことはある?

 他人様に迷惑をかけたんだぞ。

 モファも沢山辛い思いをさせられたわ。

 やり返していい理由になっていない。


 屋敷に冷たい空気が流れて。

 数日後、母様は私を連れて屋敷を出た。

 ユルドースの端、小さな家の中。

 温かみのある生活が始まった。

 何故か、召使いの男が家事をしに来ることがあった。

 仕事はどうしたのと聞くと、解雇されたのだと。

 …あの優秀さで解雇などされるはずも無いだろうに。


 8歳で学校に通い始めた。

 フヅキとシャオレに会ったのは確かその時。

 シャオレは7歳の時に学校に入ったらしいけど、

 私とフヅキが先にB組に上がって、ちょっと泣いてたな。

 フヅキは私が辞めた後も二年間通って、

 16歳の時にはA組まで行ってたのだとか。

 …まぁ、あの不良は1()4()()でA組だとか言われてたけど。



 父様の訃報を聞いたのは14歳の冬。


 過労で体調を崩しやすいというのは聞いていた。

 私と母様が家を出た辺りから無理を続けていて、

 冬の寒さも相まり遂には逝ってしまったそうだ。


 父様には母様が必要だったのだろう。

 母様という"ストッパー"が無くなった結果だと思う。

 同時に、母様にも父様の存在は不可欠だったではと、

 ……知らせを聞いて涙を流す母様を見て、思った。


 遺書もなく、遺言もなし。

 結果、遺産は母様と私に受け継がれた。

 既に使用人には暇を出してあるらしく、

 あのあまりにも広すぎる屋敷も私達の物になった。


 …元手はある。

 …あの職業に年齢制限は無かったはず。

 …行動を起こすならば早めにすべき。


 やるべきことは一つだった。


 まず母様に相談をした。

 止められたし、心配もされたけど。

 その為に学校へ通い始めたのだ。

 無知を減らして、街の外に出る為に。

 一度失ったものを取り戻したくて。


 次に実績が必要だった。

 当時14歳の少女に実績などあるはずが無い。

 でも、伝手だけはあった。


 16歳という若さで幻妖を倒し、

 垂柳の寧静というギルドを立ち上げた男。


 <罪の劫火>で亡くなった父の意思を継いで、

 褐礫の約諾というギルドを纏め上げる男。


 二人とも、私より三歳年上。

 学校に通っているときに面識は作っていた。

 実績として2ギルドからの推薦があれば充分。


 あと決めるべきは活動方針。

 イムの捜索はあくまで個人的な話だ。

 それを方針としてもギルドメンバーは集まらない。


 そう考えかけて、やめた。

 私にとって大切なことは一つだけで。

 イムの捜索もそれに含まれるだろうから。



 『孤独な生き物の庇護』



 捨てられてしまった生物を。

 帰る場所を失った子供達を。


 拾って、育てて、護ることが出来るギルド。

 そんな彼らの家になれるようなギルド。



 <姫萩の寵栄>が創立した。



 ――――…………。



「……イム。」


 洞窟の奥に向けて名前を呼ぶ。

 音の響きが良い、きっとイムにも聞こえているはず。

 だが、返事は帰ってこない。


「………イム。」


 どくどくと脈打つ心臓を抑え、もう一度。

 13年越しの再開、緊張はしてしまう。



 ベイドから聞き出した情報。

 毒の精霊の性格は、『執着』。

 もしイムが精霊になっていれば、

 間違いなくソレになるだろうと予想していた。


 ニュートが発見したこのトキシン迷宮。

 そして薄紫色の粘体生物。――それも、精霊。


 父様が游蕩士に依頼してイムを捨てさせたのは、

 トキシン迷宮から数百メートル離れた場所。


 ここにイムが居るというのは、

 ほとんど確信に近い推測だった。


 ただ、イムの気持ちまでは分からない。


 自分を捨てた人間を恨んでいる?

 もう人間の街に戻るつもりなど無い?

 人間を殺すことに『執着』している?


 相手はあくまで精霊。

 イムに憎悪があれば私も即死する。

 迷宮探索に一人で来たのもその理由だ。

 姫萩のメンバーをこんな危険に巻き込みたくはない。



 服が汚れるのも厭わずに細い道を進み。

 巨大な妖力を頼りに暗い穴を抜け。


 辿り着いたのは、広い空間だった。


 美しい鍾乳石が天井に敷き詰められている。

 地面は所々が水溜まりになっていた。


 その空間の端で体を震わすのは、小さな化物。

 幾度となく夢に見た、私の親友。


 フードを取り、顔を曝け出す。



「…イム。」

『 ……Naa, 』



 イムは壁際に逃げたまま、私を見てくれない。




 ---




 感動の再開。

 そのはずなのに、モファの顔を直視出来ない。

 ずっと会いたかったのに、近寄れない。


「…イム?」

『 …Naaa…, 』


 その理由は分かってる。

 イムは、モファに会うのが()()()()


 勝手な復讐(こと)して、

 色んな人を悲しませて、

 別れも告げずに離れ離れになって、


 きっと、モファにも沢山の迷惑をかけてだろう。

 モファのことを沢山悲しませてしまっただろう。


 ずっと会いたかった。

 でも、いざ前にすると、どうしようもなく怖い。


 イムは嫌われてないだろうか。

 モファは怒ってないだろうか。


「…ずっと、ずっと、会いたかった。」

『 ……Naa……, 』


 イムも会いたかった。

 ずっと、ずぅっと、会いたかった。


 でもその前に謝らないといけない。

 勝手にいなくなったことを"ごめんなさい"しないと。


 そう思い、壁から離れて、モファの方を向いて、



 逃げる暇もなく、()()()()()()



「…っひぐ…、イム、いむぅ…、」



 まるで幼い少女に戻ったかのように、



「…ほんとに、…っひぐ…、会いた、かった…!」



 ぼたぼたと涙を流すモファ。



「…遅くなって、…ほんとに、ごめんね…、」

『 …Naa,…Naaa…!! 』



 全然、遅くなんかない。

 むしろ早かったくらいだ…、



『 Naaaa…! …Naaaaa……!!! 』



 イムも、ずっと会いたかった。

 やっと会えた、やっと戻れた。



「…っんぐ…、…もう、絶対離さないからね…、」

『 Naaa……,Naaaa………!! 』



 体を締め付ける強い力。

 同じくらいの力でモファに抱きつく。



 イムも、離さない。

 これから先はずっと隣で。




 ---




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