表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナノライト  作者: かざぐるま
第二章 Reasons to fight.
17/57

第十七話 地の精霊

 



 もうやめてよ


 なんで、みんなでいじめるの?


 ぼくたちなんもわるいことしてないよ


 ここでくらしてただけだよ


 がいあさんは、もうぼろぼろなんだよ


 なんでまだいじめるの?


 まだいじめるっていうなら


 ぼくががいあさんをまもらないと


 いままでまもってくれたがいあさんを


 つぎはぼくがまもるんだ







 ……そんな思いが、地面を伝って聞こえた。


 今、ここ半径数百メートルの大地には根が張り巡らされている。


 この子が作った絶対的な領域だ。

 侵入者は絶対に赦されないだろう。



 四百年間で、この世界は随分と変わってしまった。


 私に『ガイア』と名前を付けたあの女性は言った。



 『何故貴方はこんなところに?』



 答えは簡単だ。


 移り変わりゆく世界を見るのが、楽しいのだ。


 …私は忘れない。


 名前を貰い、精霊となり、不老の体を得たあの日を。


 彼らの間に新たな生命が誕生したあの日を。


 遥か遠くの地で街が滅んだあの日を。


 彼に森の半分を焼かれたあの日を。


 この子を拾い、成長を見守ろうと決めたあの日を。


 小さな雛鳥が飛び立っていったあの日を。


 命を賭けて一人の少女を守る少年達が訪れたあの日を。



 私は忘れない。



 この子は優しい。

 本当は他の生物を傷つけたく無いのだろう。

 それでも私のために立ち上がってくれたのだ。


 私は、血だらけで、傷だらけの体を屈めた。


『 ……mi…,…mii… 』


 ぽろぽろと泣く、我が子のような小人。

 その小さな体にそっと頬を添えてあげた。


 すると、その小さな瞳に溢れんばかりの涙が溜まった。



 私は忘れない。



 泣き虫で弱虫な、


 守られるだけの存在だったこの子が、


 私を守ろうと戦った、今日のことを。


 この子ならば、大丈夫だ。


 私が居なくても一人で歩いていける。



 …四百年の間で、色々な人間を見てきた。


 利益を追って、家族も信念も捨ててしまった人間。


 全てを守る為に、自ら命を絶った人間。


 強大な力を得ようと、化物を身に宿した人間。


 灰と化す最期まで、友を信じ続けた人間。



 私をここまで追いつめたあの人間の目は、


 とても冷たい光を宿していた。


 でも、その奥底にある暖かな光を感じ取ったから。


 何かを変えようと足掻く人間の目をしていたから。



 私の力が必要というならば、差し出そう。



 彼の行く先を眺めるのも、悪くない未来だろうから。




 ---




 樹根(ライフ)の根が、ゆっくりと地面に戻っていく。

 ガイアは自身の怪我を庇うようにして立ちあがった。

 ふらつきながらも彼女はこちらに向かって歩いてくる。

 その様子に敵意は無く、投降の気配すら感じられた。


「手は出すなよ。」


 ベイドはそう言い、木の枝から飛び降りた。

 近づいてくるガイアに、彼もまた歩み寄っていく。


 二者間の距離が二メートルも無いくらいに狭まった時。

 ガイアが神妙に,流れるように、地面へと伏せた。


 崇高な儀式の一幕を演じるが如く。

 主人に忠誠を誓う、忠実なる配下の如く。


 神にも等しい存在であるはずの精霊が、

 たった一人の矮小な人間にその仕草をとった。

 …それが意味することは大きい。


 ベイドはいつにも増して真剣な表情だ。

 彼にとって、この瞬間は悲願にも近かった物だろうから。



「――ガイア、俺の眷属にならねぇか?」

『 Cuu. 』



 彼女は小さくそう鳴いた。

 それは間違いなく承認の意を示しているのだろう。


 ベイドはガイアに右手を差し出した。

 まるで、新たな仲間を勧誘するように。


 ガイアはその手にそっと口元を触れさせた。

 まるで、永遠の誓いを立てる口づけのように。



 直後、彼らが眩い茶色の光に包まれる。



 …その光が退いた時、ベイドの前には

 一回り体躯が小さくなった一匹の鹿が座っていた。


 その体に先程までの傷跡は無く。

 その頭に先程までの隆々とした角は無い。


 だが、全てを見守るような優しい瞳は変わらない。

 その穏やかな表情こそが『静観』の精霊たる所以だろう。



 こうして、一匹の精霊が仲間に加わった。




 ---




「な~、なんで俺のこと避けるんだよ~、」

「いやほんとに近づかないでください。」


 俺は抱きついてこようとするベイドから逃げた。

 この人は問題が解決してからずっとこの調子だ。


「めでたしめでたしで終わったじゃんか~、

 死者は無し、合意の上で平和的解決だっただろ?」

「俺はリエルさんの件許してませんからね?」

「脅しに使ったのは悪かったって、

 おいヒシ~、目合わせてくれよ~。」

「ヒシさん、許してあげたら?私も怪我とかしてないし!」

「無理です、今回で本性が分かりました。

 この人は時代を代表する大悪党ですよ、極悪人です。」

「前みたいに仲良くしようぜ~?」

「こっち来ないでください。」


 俺達は既に避難を始めていた待機組と無事に合流した。

 今は、崩壊して妖力に還っていく森の中を歩いている。


 驚くべきことに、この森全体がガイアの妖術の影響下にあったようで、ガイアの意思一つで大半の草木達がその形を緩やかに崩していった。

 どこからか飛ばされてきた種などから育ち、自然に群生していた植物などはその例から外れるらしいが、この広い森の中で見るとそれらはごく少数だろう。


 少なくとも四百年続いた"エフ森林"は、今日で終わる。

 それが今後どういった影響を及ぼすのかは分からないが、及ぼされる影響についての責任は森を終わらせた張本人である俺達がとらなければならないだろう。


「――というかベイドさんが責任者では?」

「いやいや、お前ら全員共犯だからな。」

「おれはとめたんだけどなー。」

「おいロットお前ノリノリだっただろ。」

「私もベイドに呼ばれて従ったまでなので。」

「『せっかくの精霊なので色々試したいですねぇ』

 とか言って妖具新調しまくってたろ。なぁ、共犯だぞ。」


 横を歩くガイアは、ロットとニュートから距離をとった。

 そりゃ自分を殺そうとウキウキだったなどと聞かされれば、流石のガイアといえど穏やかな気分ではいられないだろう。


「後始末は褐礫(あかれき)でお願いしますね。」

「まぁ森に居た化物が暴れ出す心配は無い。」

『 Cue. 』

「ガイアが対処済みだ。」


 自信満々にそう公言したベイド。

 しかし、俺にはもっと気に掛かることがあった。


「てか急なガイア呼びはなんなんですか?」

「いいだろもう俺の眷属なんだから。」

「地の精霊としか呼んでなかった人が…、」

「リエル! ヒシが俺に冷たいんだけど!」

「まぁベイドさんがやりすぎだよねー。」

「……なんか、リエルも冷たくない…?」

「私もちょっと距離取ろうかなって…、」

「どんどん人望を失っていきますねぇ。」


 ニュートは愉快そうに笑った後、

 何かを思い出したように声をあげた。


「そういえば、まだ検証してませんでしたねぇ。」

「……確かに忘れてたな。」

「検証?」


 首を傾げていると、ベイドは鞘から大剣を引き抜いた。


「ではまず『地』を。」

「ほい。」


 …直後、大剣の刃が硬い土で覆われていく。

 満足そうに頷いたニュートは、指示を続けた。


「次、そうですねぇ、『火』などは?」

「………、」


 数秒の静寂が流れるが、何も変化は無かった。

 それを見て、ようやく俺も事態を悟る。


「……やっぱダメだな。」

「もしかして、『地』以外使えないと?」

「あぁ、お前みたいな感じだな。原因は分かってるが。」

「――精霊との契約ですか。」

「これは私の仮説ですが、恐らく契約の際に精霊から受け取る妖力が大きすぎるんでしょうねぇ。妖力が入っている器ごと『地』に染まっているというべきか…、」


 自論を展開し始めたニュート。

 俺には何を言っているかさっぱりだが、

 ベイドは理解したようで、同意を示すように頷いていた。


「そんな大した問題でも無いさ、元々見当はついてたしな。」


 …そこで一つ、純粋な興味が湧いた。


「ベイドさん、『無』は使えますか?」

「…ほい。」


 ベイドの剣がぼんやりと白く輝き始めた。

 やはり、『無』は問題無く使えるようだ。


 …『無』というのが、他の妖術と別格に思えて仕方ない。

 クリモの波も、サミット迷宮で経験した瞬間移動も。

 毛色が全く違うにも関わらず、全て『無』という属性だ。

 雑多な妖術を一纏めにしている…とでも表そうか。

 他の属性に比べ、余りにもカバー範囲が広すぎるのだ。


 …まぁ、こういうのは学者達が考えることだろう。



 ◇



 数時間後、エフ森林をようやく抜けた。

 久々に浴びる強い日差しが、網膜を突き刺すようだった。


 振り返ってみると、森からはもう殆どの木が消えている。


 この土地がエフ森林と呼ばれるのは、今日で最後だ。

 これからはあの子が新たな地形を生み出していくのか。

 若しくは、全く別の化物が支配する領域へ変わるのか。


 それは、彼らが創り出す未来だ。――俺の出る幕は無い。



 ◆



 帰還後、游蕩団事務所の掲示板に、

 ある依頼が貼り出されることになる。


 それは討伐依頼。

 対象の妖石を褐礫(あかれき)に納めると、

 達成者に五十万フルクが支払われるというもの。



 火の精霊 アグニ ( 詳細を添付 )


 水の精霊 サラキア ( 詳細を添付 )


 風の精霊 エンリル ( 詳細を添付 )


 地の精霊 ガイア ( 達成済み )


 雷の精霊 フルゴラ ( 詳細を添付 )


 光の精霊 ――― ( 詳細不明 )


 闇の精霊 ――― ( 詳細不明 )


 毒の精霊 ――― ( 姫萩(ひめはぎ)が捜索中 )


 癒の精霊 ――― ( 詳細不明、友好的 )


 封の精霊 ――― ( 詳細不明 )


 石の精霊 ――― ( 詳細不明 )


 力の精霊 ロノ ( 要注意 )


 -の精霊 ――― ( 存在未確定 )



 以上、計十三精霊。

 追加情報提供求。



 ……ということだった。


 詳細が別紙で添付されている精霊については、

 その居場所、特徴、性格など詳しく記されていた。


 一体どこからこんな情報を仕入れたのか。

 名高いガイアとアグニ以外の名前など、

 本人に聞かない限り分からないだろうに。


 ただ、茶化しではないことは確実だった。

 報酬の量からもその本気具合が分かる。



 ベイドが精霊を集めて何をしようとしてるのか、

 結局、あの旅の中で教えてもらうことは出来なかった。


 世界を揺るがすような

 ナニカを目論んでいるのは確実だ。



「ホギャァァ!! オギャァァァ!!!」

「よく頑張りましたね!! 元気な女の子ですよ!!!」

「…ハァ、ハァ…、

 ……ほら貴方、手、握ってあげて……、」

「ぅおおおおぉぉぉぉんっ!!!」

「……ふふっ、なんで、

 貴方が大泣きしてるのよっ…、」

「だってよぉおぉ、だってよおおっおおぉお!!

 ありがとなぁぁあぁ、産んでくれてぇええぇ!!

 ほんとにありがとなああっぁあぁぁあぁぁ!!!」

「…うふふっ、こちらこそ。」



 ただ、それは間違いなく家族の為の計画だろう。

 家族の平穏を護る為の、計画なのだろう。

 


 彼が流すこの涙は、本物だろうから。




 ---




「――しくじったの?」


『少し、邪魔が入った。』


「ははっ、お前の邪魔出来るなんて相当な奴だね。」


『人間側についた、愚かな狐だ。』


「でもさ、あんな絶好の機会なかなか無いぜ?

 ガイアまで向こうに加わったけど、大丈夫か?」


『調子に乗るなよ。

 お前如きに心配されるほど我は零落していない。』


「あははっ! そりゃ失礼!

 今後とも良い関係でいようぜ。」


『それで、用件はなんだ。

 これだけの話の為に呼び出したとは言わんだろうな。』


「急くなよ、ちゃんと情報持ってきてやったんだから。」




「お前の障壁になるであろう奴らのことだ。

 潰すなら、早めに。入念な準備の上でやるべきだな。」




 ---




 夜の草原を一人で歩いている。

 澄み切った空気が肺を浄化していくようだった。

 春の冷たい夜風が頬を掠めた、…心地が良い。


 ベイドはまだ愛しい我が子を愛でているだろう。

 ロットは家族で食卓を囲んでいる頃だろうか。


 今日の夜の自主練会は休会だ。

 俺も兄ちゃん爺ちゃんと夕飯を食べて

 いつもの通り街の外へ歩き出してしまったが

 一人なので特にすることも無い。暇を持て余していた。


 まぁ、たまにはこういう日があってもいい。

 空に輝く星は綺麗だし、付近は滅多に化物も出現しない。


 当ても無くのんびりと歩く日も、貴重で大切な一日だ。

 穏やかで和やかなこの夜を、今は存分に味わいたかった。



 ――その時、世界から風が消えた。

 それまで草を静かに揺らしていたそよ風。

 何処からか聞こえて来ていた夜鳥のさえずり。

 それらが、何の前触れもなく消失したのだ。


「――――?」


 遠くの方に、シルエットが見えた。

 人影、すらりとした女性の形。…勘違いだろうか。

 こんな夜中に俺以外の人が居るとは思えない。


「初めまして、ヒシさん。」

「………。」


 どうやら幻覚では無いらしい。…俺は剣を引き抜いた。

 高く、清らかで、澄んでいる、落ち着いた女性の声。

 その声の主は、ゆっくりとこちらに歩いて来ていた。


「ふふふっ、そんなに警戒しなくていいですよ。」

「…………。」


 段々と、その全貌が見えてきた。

 白く透き通るような長い髪。

 ひらひらとした布を羽織っている。

 靴は無く、素足で草の上を歩いていた。


 彼女からは、微弱な妖力しか感じられい。

 一般の女性が持つ程度の、極僅かな妖力量。


 …んな訳があるか。

 こんな夜中に街の外を歩くような女性が、一般人?

 どう考えても不審者の類。…或いは、非人間的存在。

 後者が濃厚。風が消えたのも、この人が現れてからだ。


 あまりにも不自然。あまりにも不可解。


「警戒心が随分と強いですね。」

「……止まってください。」


 語気を強めた忠告。

 それでも女性は歩みを止めない。

 俺は剣と靴に『光』を込め、臨戦態勢を取った。


 この人と関わるのはヤバい。本能が告げてくる。

 なのに、掛けられた言葉に俺は気を惹かれてしまった。


「今回はちょっとした交渉をしにきたんですよ。」

「……交渉?」

「えぇ、少しだけ聞いてくれませんか?」

「………話を聞くだけなら。」

「それは良かったです、…ぅんしょ」


 彼女は近くに在った大きな倒木の上に登り、

 俺を見下ろすような形で、そこにふわりと腰かけた。


「私と貴方で、とある契約を結ばないかという話です。」

「…続けてください。」


 彼女は微笑み、その枝のような手を軽く広げる。

 すると、彼女の付近の虚空から小さな物体が現れた。

 俺は目を細め、物体の詳細な情報を得ようとした。

 それが為されるよりも早く、女性は口を開いた。


「内容は簡単です。

 貴方がした行動に応じて、私が"鍵"を進呈しましょう。

 貴方はその鍵を使って私に質問することが出来る。

 私にはその質問に応じる義務がある。…これだけです。」


 …確かに、簡潔な契約内容だ。

 しかし、同意を示すまでに確認すべき事項が幾つか。


「『俺がした行動』というのは?」

「なんでもです、例えば『食事を取った』『水を飲んだ』

 『依頼を達成した』『妖術を使った』『化物を倒した』

 ――私がそれを気に入れば、鍵を差し上げましょう。」


「質問に使う鍵の数は?」

「一律、一質問で鍵一つです。」


「嘘を教えられる可能性は?」

「安心してください、私は嘘をつきません。」


「…俺だけにメリットがありませんか?」

「ふふっ、そんなこともないですよ?

 私にも得のある話ですから。win-winですね。」


 正直言って、怪しすぎる。俺に旨味がありすぎる契約。

 眼前に甘美な蜜を吊り下げられたハチドリの気分だ。

 理性を忘れ、本能的に飛びつきそうになってしまう。


 そんな俺の葛藤を察したのだろうか。


「大体の質問には答えられると思いますよ?

 例えば、そうですね。――貴方の母親の行方とか。」

「―――!!!!」


 病的な肌をした女性は、蜜の糖度を故意的に押し上げた。

 何故知っているのか。…いや、それすら愚問だ。

 俺は悟った。この女性は、"上位存在"だ。

 本来、俺の生涯の終盤に出現するような生物。

 それが気紛れでひょっこり姿を現しただけなのだと。


「それでどうしますか?

 契約を結べば、貴方はただ普通に生活してるだけで、

 知りたいことをなんでも知れる権利を得られますが。」


 …見極めろ。コイツが遊び半分か、目的を持っているか。

 示されているのは"幸運の蜜"か、"陰謀の毒"か。


「途中で契約を破棄することは?」

「勿論認めましょう。

 契約とは双方の合意で成り立つものですから。」


 ――俺が出した結論は、()()


「……分かりました、その話に乗ります。」

「――成立ですね!では初回サービスということで…。

 …そうですね、特別に鍵を一つ差し上げましょう!」


 彼女はそう言いながら鍵を俺に放り投げた。


 …長さが中指程度の簡素な鍵。

 見た目よりも重みはある。

 鍵からは微量な妖力しか感じない。

 そこまで複雑な仕込みは無さそうだ。


 少なくとも前触れもなく爆発、なんてことは無いだろう。


「…もし紛失した場合は?」

「鍵の数は私が管理しているのでご安心を。

 その旨を伝えていただければスペアをお渡ししますよ。

 もし質問がしたくなったら、いつでも呼んで下さい。」


 …鍵は質問権を可視化して分かりやすくするだけの物か。

 それ一つ一つが特別重要で貴重な物では無さそうだ。


 気がかりなのは『呼べばすぐに来る』という点。

 常に俺を監視しているか、どんな些細な音でも拾うのか。

 最も濃いのは、この鍵が妖具になっている可能性。

 俺の位置情報を暴露し続ける類の物なら、厄介だ。

 …どんな物が分からない以上、さっさと手放したいな。


「じゃあ、今貰った鍵を使います。」

「あら、早速ですか。」


 俺は受け取った鍵をオミナスへ投げ返しながら――



()()()()()()()()()()()()



 貴重な質問権を消費し、無意義な問いを投げかけた。


「――あははっ!

 最初にその質問をしてきた人は貴方で二人目です!」

「"あなた"としか呼べないのは不便なので。」


 それに、俺はこの人のことをほとんど信用してない。


 『嘘をつかない』が嘘だった場合、全てがひっくり返る。


 軽めの質問で相手を量るのが賢いだろう。



「そうですね、呼称に拘りは無いのですが…。


 ―――ふふっ、"オミナス"とでもお呼びください。」



 そうして、怪しげな女性――オミナスは姿を消した。




 ---




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ