異世界への挑戦
一年後、ようやく異世界映像化の試作機が完成する。それは消える粒子を大量に放出する装置、そして異世界から戻ってきた粒子を受信し映像化する装置、そして巨大なモニター画面から成り立っている。
いよいよその試作機を稼働させる日がきた。北里博士を中心に研究室のスタッフが揃った。
「さあ神藤君、やってみたまえ」、博士が厳かな口調で言った。
「はい博士、みんなも所定の位置についてくれ。それじゃあ起動しますよ」
神藤はリラックスした様子であった。
「レベル10まで、少しずつ上げて行きます」
かすかに、"ゴー"という音が響いてくる。
「それではいよいよお待ちかねの受像機のスイッチを入れますよ!」
皆は、固唾をのんで見守っている。
しかし画面は、ザーザーというばかりで、はっきりとした映像が映らない。ただ時折人影のようなものが動くのが分かる。
「神藤、もっとはっきり出来ないのか?」、北里博士の厳しい声が飛んできた。
「まだまだこれからですよ。レベルを20まで上げます」。神藤には、まだまだ余裕があった。
「おー、ぼんやりだが何とか分かるぞ。やはりこれは人間のようだ。我々と変わらないじゃあないか」、スタッフの一人が言った。
すると博士が「神藤、レベルを50まで上げてみなさい」と言ってきた。
「良いですか博士。消える粒子の放射装置が限界ギリギリになりますよ」
「責任は私がとる。やってみなさい」
神藤は慎重にレベルを50まで上げていった。
すると、モニターを見ていたみんなから歓声が上がった。
「見えるぞ、見えるぞ。しかしこれは我々の研究室にそっくりだぞ」
そこには顎ひげを生やした男が横向きで映っている。彼は、何やら複雑な装置を操作しているようであった。
そこへ誰かが声をかけた。すると男がこちらを向いて喋りだした。
その顔を見て神藤が驚いた。
「なんだ、これは俺の顔に瓜二つじゃあないか」
神藤との違いは、髭を生やしているかどうかの違いだけだった。一同騒然となったが、ここで映像が途切れてしまう。
「粒子放出装置から煙が出ています。スイッチを切りますよ」、神藤が叫んだ。
研究室のあちこちで、驚異の映像に対しざわめきが収まらない。
そこに北里博士の落ち着いた声が響いてきた。
「まあ、とにかく神藤の仮説が実証されたな。よしこれで政府も納得するだろう。このプロジェクトへの支援も今まで以上に大きくなるはずだ。みんな頑張ったな」
北里博士は、慰労の言葉を語った。
「博士、まだまだこれからですよ。今度は異世界と往き来できるかが大きな課題だ」と、神藤がやや興奮気味に言う。
「ああ、そうだな。お前ならやれるだろう。ただそんなに焦るなよ」




