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モスカーニヤの真実 その1

 翌日のこと、飛鳥と士郎それに持丸は、モスカーニヤがピラミッドの最上階にいるのを見つけた。三人は急いで彼女の所までかけ上って行く。

 モスカーニヤは、そこから憂いを帯びた目で町を、そして湖を見つめていた。町は至る所が崩れ、あれ程美しかった町も、今は無惨な姿に変貌していた。

 そこへ3人の足音が響いて来る。

 「モスカーニヤ、大丈夫か!」と持丸。

 「ああ、持丸さんですね。それに、飛鳥さんと士郎さんも一緒ですね」モスカーニヤは振り返りもせず三人を言い当てた。

 「おや、私達が来るのが分かっていたようですね!」と飛鳥。

 モスカーニヤは、それには答えず、ただ微かに笑った。

 「あなたには何か秘密がありそうだ」と飛鳥。

 「私に秘密? ふふ、もう少し単刀直入におっしゃったら如何ですか?」

 「ほほう、これは面白い。あなたは私達が異世界から来た事を素直に受け止めている。不思議だとは思わなかったのかな?」と、飛鳥はモスカーニヤの微妙な表情も見逃さないように鋭い目をして喋る。

 「私は、ただの神官の娘」モスカーニヤは、そう言いながら三人の反応を楽しんでいるようにも見える。

 「そうか、それでは全て、ケツァルコアトルがやったというのか?」と飛鳥。

 「じゃ、じゃあこれは何だ?」用丸が神田橋から借りてきた勾玉を見せる。

 「それは神田橋さんに差し上げた物」とモスカーニヤ。

 「そうだ、それが無ければ我々はこの世界に来る事は出来なかった。逆に言えば、それが我々を導いてくれたんだ!」と飛鳥。

 「しかし、今この勾玉からは、消える粒子を使ったビーコンは出ていない。貴方が操作してるんじゃあないのか?」と用丸。

 士郎は、呑気そうな顔をして、事の成り行きを見守っている。

 「それは面白い話しね。しかし私は知らない! 私はただ、ケツァルコアトルに従って行動してきただけよ!」

 「モスカーニヤ、本当の事を言ってくれ!」と飛鳥。

 「私には、これ以上の事は分からない」モスカーニヤは、飛鳥の鋭い視線を受け流しながら言った。

 そして、彼女は質問攻めから逃れるようにその場を立ち去って行く。

 「おい、どうする!」と飛鳥は士郎に目を向ける。

 「うーん、拷問する事も出来んし仕様が無いだろう」と士郎は、あくまでも呑気である。

 「お前って奴は!」

 「まあ怒るな、俺は女性の味方でね!」

 そんな会話をしていると、下の方からモスカーニヤに向かって話し掛ける声がしてきた。

 「モスカーニヤよ、お前にもし秘密があるなら教えて欲しい。親には信実を言って欲しい!」

 その声の主はテトラナであった。。

 モスカーニヤは立ち止まって考えている。

 「まあ、お父様、でも私にも全ての疑問に答える事はできませんよ!」

 「そうか、しかしお前一人に重荷を負わせる分けにはいかん。分かる範囲で教えて欲しいんだ」

 モスカーニヤは、暫くの間考えていた。

 それから意を決したように口を開く。

 「分かりました。コルテス軍を追い払った今なら良いでしょう。それでは私についてきて下さい」

 モスカーニヤは、振り向いて士郎達にも来るように目で合図した。

 モスカーニヤは、ピラミッドの階段をどんどん降りて行く。

 そして、ついに地下室へ。

 螺旋階段を降りて行き、その突き当たりが壁になっている。地下三階でこの階段は唐突に途切れていた。

 「なんだ、ここで行き止まりじゃあないか!」と飛鳥。

 「ここから先は誰も入った事はありません」とモスカーニヤ。

 「君以外には、と言う事だろう」と士郎が、何かを感じて言った。

 その言葉を聞いてモスカーニヤは、意味ありげな笑いを浮かべる。

 モスカーニヤは、壁にある円と三角形でできている模様に右手のかざすと、その模様の部分が青白く光り出した。

 すると、目の前の壁が半透明となると、モスカーニヤは、その壁を通り抜けた。

 それを見て、士郎達は唖然として見ていたが、半透明の壁の向こう側からモスカーニヤが、入って来るように手招きした。

 まず、飛鳥が思い切って壁を通り抜けると、他の者も急いで通り抜けた。

 全員が通り抜けると、壁は元に戻り、通り抜け不可能となった。

 入った部屋を見ると、一辺が15メートル程の正方形の部屋で、その四隅には3メートル程の像が立っている。

 しかもここは、光が入って来ない場所であるのに、壁や、天井が青白く光っているのだ。

 「な、なんだ。こんな部屋があったなんて。お前はここで何をしていたんだ?」と、テトラナが驚く。

 「この像は、アステカの神なのか?」と士郎が質問する。

 「そうだ、これらの像は、ウィツィロポチトリ、テノティテトラン、トラロック、テスカトリポカという名のアステカの神だ。しかし何故ここには我等の神、ケツァルコアトルがいないのだ?」とテトラナ。

 「今に分かります」とモスカーニヤは平然と言う。

 その後モスカーニヤは、部屋の中をゆっくりと歩きながら、それぞれの像に触れていく。

 するとそれらの白い像が、うっすらと黄色い光を帯びはじめた。

 四体の像が全て黄色く光ると、その直後、それぞれの像の目が青く光り出し部屋の中央に向かって光を発した。

 それらの光線が交わった所で、眩しい程の光が発し、やがて一つの大きな像が現われて来る。

 それを見たテトラナは、驚きの表情を見せ、その光の像の前にひざまずいた。

 その像が、威厳のある声を発する。

 「モスカーニヤよ、どうやらやり遂げたようだな」

 モスカーニヤは、軽く会釈をしながら「ケツァルコアトル様、あれから15年もかかりましたよ」と親しげに喋る。

 「お前は、ここで神からの神託を受けていたのか?」とテトラナ。

 「そうです、お父様」

 一方、飛鳥、士郎、持丸はその技術力に驚いている。

 「これは、我々の技術を越えているかもしれん」と飛鳥。

 「なるほどね、これは面白い」と士郎はニコニコしている。

 「ところでモスカーニヤ、お前は使命を全うした。元の世界へ戻るがよい!」再びケツァルコアトルの声。

 すると、部屋の一つの側面に奇妙な穴が開き、そこから太陽の光が差し込んで来る。

 モスカーニヤは、そこへ飛び込んで消えた。

 それと同時に異空間への窓も消滅した。


 ケツァルコアトルは、それを見届けると言った。

 「お前達も戻るんだ」

 すると、飛鳥、持丸、テトラナは突然目の前が暗くなり、気が遠退いて行くように感じた。


 飛鳥は、ジリジリと焼きつくような太陽の日射しを感じて目が覚めた。

 気が付くと地面にうつ伏せになって倒れていたようである。全身から汗が流れ出している。

 非常に気怠さを感じながらも、漸く起き上がると、そこはピラミッドの前の広場だ。

 周囲を見ると、持丸とテトラナも倒れていた。こんな暑い場所で倒れたままなら、熱中症にもなりかねないので、急いで二人を起こした。

 「おい、大丈夫か! 持丸、テトラナ」

 「ここは何処だ、何があった。俺達は地下室にいたはずだ」と持丸。

 「そうだったな、それがあの時、突然目の前が暗くなって、意識を失った」飛鳥が思い出しながら言う。

 「それに、あの時モスカーニヤは何処へ行った!」とテトラナ」

 「おそらく、別の世界。いわゆる異世界だ」と飛鳥。

 「なんて事だ。俺達以外に異世界に行く技術を持っているというのか?」と持丸。

 「ああ、その可能性は高い。ところで士郎は何処へ行ったんだ?」と飛鳥。

 「おお、そうだ士郎も俺達と一緒にいたはずだが?」

 「よし、もう一度あの地下室へ行ってみるか?」

 「それが良い。確認してみよう」

 三人は再びピラミッドの地下三階へ急いだ。

 だが行ってみると、階段は二階で行き止まりだ。

 「どういう事だ。なぜこの先が無いんだ?」と飛鳥。

 「あのモスカーニヤという女性は幻術を使うそうだ。騙されたんじゃあないか?」と持丸。

 「おい、お前は父親だ、どう思う!」と飛鳥。

 「ああそうだなあ」とテトラナは腕を組んで考える。

 そこへ階段を誰かが降りて来る気配がした。

 「おーい、そこで何をやっている。ここは神聖な場所だ。許可が無いと入れんぞ!」

 そう言いながら顔を出した男はサナテクトであった。

 「ああ、サナテクトさん。ここにはテトラナもいるから良いだろう?」と飛鳥。

 その言葉を聞いて、サナテクトの顔は更に険しくなった。

 「ば、ばかな。テトラナは私の後にいる」とサナテクト。

 するとサナテクトの背後から、テトラナが出て来た。

 そのテトラナがテトラナに向かって「君は誰だね?」と問う。

 「なんだ、どういう事だ!」と持丸。

 この不思議な状況を見て、飛鳥が笑い出した。

 「はっはっは、これは一杯食わされた」

 「どうした、飛鳥。ここは笑うような場面じゃあないだろう」と困り顔の持丸。

 「おいおい、いい加減で正体を現わしたらどうだね!」

 「飛鳥、笑いすぎだ。本人が来てしまったらしようがないな」そう言いながら、変装を解き、テトラナの顔の下からジョー黒崎の顔が出てきた。

 驚いたのはテトラナである。

 「なんだ君は、何の為に私に化けたんだね?」

 「それは、モスカーニヤの秘密を知りたかったからだ」と黒崎。

 「モスカーニヤ? モスカーニヤとは誰だね?」とテトラナ。

 その以外な返答に、黒崎、飛鳥、持丸は唖然とする。

 「なんだって、モスカーニヤを知らないと言うのか?」

 「ああさっぱりだ。サナテクト、君は知ってるかね?」

 「いいや、私も初耳だ」

 「おいおい、冗談だろ、モスカーニヤは貴方の娘じゃないか?」と黒崎。

 「私には娘などいない」

 「そんな事はないだろう」と、黒崎の語気も次第に強くなってくる。

 「まあ待て黒崎。我々の勘違いだ。許して下さい」と飛鳥。

 「何を言い出すんだ、飛鳥」焦った黒崎が飛鳥に噛みついた。

 「いいから黒崎、ここは私に任せてくれ」と飛鳥は黒崎を必死になだめる。

 そう言いながら飛鳥は、テトラナと、テトラナに向かって「やあ申し分けない。どうも好奇心が旺盛でね。あなた方の神聖な場所を汚すつもりは毛頭ない」と言った。

 「そうか、貴方がそう言うなら許しましょう。何しろあなた方は私達の恩人ですからなあ」とテトラナ。

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