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エッグ2号登場

 コルテス軍の大砲が炸裂するなかを菊王丸そして清十郎、十兵衛、それに次郎吉達は、怯む事なく突撃して行く。

 更には、橋を渡ってアウテモック、サナテクトがアステカの戦士を引き連れて菊王丸へ合流して行く。

 湖上の船からも、砲弾が襲ってくるが、恐れずに進んで行く。


 そのような中で、ガレオン船に残っている明智達の所にも異変が起こった。


 「おい明智、ビーコンを見ろよ。何かおかしくないか!」と、羽柴。

 「えっそうか?」

 「普通のビーコンならこれで良いが、これからは消える粒子が出ていない。これじゃあ元の世界には届かん!」

 「何だ、またか。これはかなりのエネルギーを消費するからな仕方が無いよ。結局、エッグ1号のからのエネルギーを利用して安定するようになるんだ。この太陽電池じゃあどうしようもないよ」

 「明智、さっきの通信を聞いていただろう。エッグは、戦場で大きな損傷を受けたようだ。修理できれば良いが!」

 「修理できなけりゃ、俺達はー生ここにいる事になる」

 そんな肩を落としている二人の背後から、元気な靴音を響かせながら近づいて来る者がいる。

 「おーい、どうした、情けない顔をしているじゃあないか!」

 神田橋中尉である。彼は常にエネルギッシュでキビキビと動く。

 「何処だって住めば都だ。くよくよしても始まらんぞ!」

 「あんた単細胞でいいね。僕は元の世界に未練たっぷりだよ!」と羽柴。

 「あれ、神田橋さん、そのネックレスどうしたんですか?」と明智。

 神田橋の胸に、勾玉のような形をしたネックレスがある。

 「ああこれか、これはモスカーニヤから貰った。お守りだとさ」

 「ははーん、それでさっきからニヤニヤしてるんですね!」と羽柴。

 「なんだと、この俺がそんな顔をしているか?」

 「えーえー、見ちゃあいられませんよ。幸せ一杯って顔してますよ」と羽柴。

 「こいつ、俺をからかってるだろう!」神田橋は、そう言いながら羽柴の頭をゴツンと殴った。

 「ぼ、暴力反対」と羽柴が喚く。

 「何が暴力だ。頭を撫でただけだろう!」

 「僕の頭は、精密でデリケートに出来てるんだ。壊れたらどうするんだ!」

 「はっ、勝手に言ってろ!」

 明智は、二人の会話について行けず飽きれ顔をしている。

 そんな明智だが、気を取りなおして「まあまあ、ここには俺達三人しかいないんだから仲良くやろうぜ」と言ってみたが、何の効き目も無かった。


 こんな無意味な会話をしている所へ突然“パーン“という大きな音が響き強い風圧を感じた。

 更にさっきまで、彼等の頭上を旋回していたカモメが気絶してガレオン船に落ちて来たのだ。

 神田橋中尉は、スペイン艦隊に見つかり、大砲に狙われているのかと、周囲に目を凝らした。

 だが、その気配は無い。

 明智と羽柴は違う反応をしていた。彼等は空を見上げている。

 「お二人さん、空には青空と雲が浮かんでいるだけだ」と、神田橋が不思議そうに二人を見っめる。

 「いや違う、よく見て見るんだ普通じゃあないだろう」

 そう言われて、神田橋も空を見上げた。

 「どうですか神田橋さん、俺達のエッグが半透明になった時のように、空の一部分に光の屈折率が違う場所があります」

 「それはどういう事だ? 救いに来たって事なのか?」

 「いや、俺達のビーコンは故障してる。だからここに来れる分けが無いんだが!」と明智。

 「じゃあ、あれはいったい何だ?」

 「さあて、何か見当もつかん。敵か、味方か、それとも?」と羽柴が言い、ふと神田橋を見て驚いた。

 神田橋は、素早く腰から拳銃を抜き、微妙に屈折率の違う場所に向かって撃とうとしている。

 羽柴が止めようとしたが、神田橋の動作は早く弾丸が発射された。

 だが、その刹那、空中で何かがキラリと光る。

 その直後、甲板に何かが落ちてきた。

 それを確認すると、今、神田橋が放った弾丸が真二つに割れて転がっていたのだ。

 「これはどういう事だ!」明智と羽柴は凍り付いた。


 「明智、羽柴、何処かへ隠れているんだ。誰かいるぞ!」と、神田橋の声が飛ぶ。


 「物騒な物は、しまうんだ。君達の命は保証する」

 今度は何者かの声が響く。

 「そんな事が信用できるか!」と神田橋。

 「ちっ、仕方ねえな。じゃあちょっくら運動でもすっか!」

 神田橋から数メートル離れたマストの陰から、何者かが飛び出した。

 すかさず神田橋は、そこに向かって数発鉄砲を放つ。

 今度こそ手応えを感じた。

 だがそこに転っていたのは、人ではなく、板切れであった。

 「へへ、残念でした!」という声が、居場所を特定されないように周囲から聞こえて来る。

 その直後、神田橋の拳銃を持つ手に、強い衝撃が走り、思わず拳銃を落とした。更に、その手を掴まされ一本背負いを決められてしまった。

 そして、床に倒れた神田橋の首には、刀の切っ先が触れている。

 「勝負ありだな!」

 「お、お前はいったい誰だ?」

 「俺か、俺は城島士郎。忍者だ。だが怪しい者じゃあない。神藤博士に頼まれて来た」

 神藤博士という言葉を聞いて、明智と羽柴は思わず顔を見合わせ、ニッコリとする。

 「ただし、あんたは救出のリストには載っていないがね」

 「そうか、お前の言う事は分かった。もう暴れないから、その刀を納めてくれ」と神田橋。

 士郎は、神田橋の顔を見て、敵意の表情が消えている事を確認すると、解放してやった。


 「あのー、あなたは救出に来てくれたんですか」と明智が士郎の側までやって来て尋ねた。

 「そうですよ。もう安心して下さい。元の世界へ戻れますよ」と士郎。

 「ああそれはありがたい。しかし、どうしてこの場所が分かったんです? ビーコンは壊れていたのに」と今度は羽柴が質問した。

 「ビーコンが懐れていたなんてあり得ない。しっかりとビーコンの信号を辿ってここまで来たんだ!」

 「そんなばかな、ビーコンはここにあるが、現状では異世界を越えて信号を送るパワーは無いぞ!」と明智。

 「それは変だ。じゃあ確認してみよう!」

 士郎は胸ポケットに入っている通信装置から、何かを摘まみ出し、それをロの前に静止させた。それはマイクのようであるが、そのマイクと胸の中の装置とは特殊な細い線で繋がっている。しかもその特殊な線は伸び縮みしたり、前後左右に動きながら、士郎が顔を動かしても、ロとの最適な位置を保っているのだ。

 このマイクを彼等はインテリジェンスマイクと呼んでいる。

 「エッグ2号、こちら士郎だ。ちょっと確認したい事がある」

 エッグという言葉を耳にして、明智も羽柴もニンマリとする。

 「こちらエッグ2号の飛鳥だ。士郎、何かあったか?」

 「こちら士郎、ビーコンの信号は今も受信できてるか?」

 「勿論だ、それがどうかしたか?」

 「本当か、じゃあ何処から出ているか特定できるか?」

 「ああ出来るとも、ちょっと待ってくれ」

 「早くしてくれよ」と言いながら士郎は、明智と羽柴にVサインをした。

 暫くの後、飛鳥から驚きの応答があった。

 「おい士郎分かった。お前が戦った男、名前は……」

 「ああ、神田橋さんか?」と士郎。

 「そうだ神田橋さんだ。その神田橋さんのネックレスからビーコンが出てるぞ!」

 「そ、そんなバカな」と羽柴が大きな声で叫んだ。

 「このネックレスはどうしたんだ」と士郎が神田橋を睨む。

 「それはモスカーニヤと言うアステカの神官が持っていたものだ」と明智がロを挟んだ。

 「いったいモスカーニヤとは何者なんだ?」と羽柴。

 「分かった分かった、その女性に会わなければならんな」と、今度は飛鳥が割り込んで来た。

 「どうせ、持丸を救いに行くんだろ、モスカーニヤと一緒にいるから会える筈だ」

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