黄金のドラゴン
一方、持丸達である。
「おい、みんな安全ベルトで体を固定しておけ!」
エッグはかつてない程の揺れを感じていた。
更に、螺旋運動をしながら何処かへ吸い込まれて行く。
周囲を見ると、火山弾にまき込まれながら一緒に移動しているようだ。
暫くすると、黄金色の光が、まわりを囲んでいるように思えた。
揺れは、かなり収まってきている。
その時、背筋に悪寒を感じた。
「おい、見たか?」と持丸。
「あ、あれは目じゃあなかったか!」
「そうだ、あれは確かに巨大な目だ」
「ああ、しかも黒目が動いていた。まるで、俺達の存在を確認しているようだった」と、神田橋が分析した。
「くそっ、俺達は何処に向かっているんだ」
「とりあえず、太陽に向かってはいないだろう」
「灼熱地獄だけは免れたようだな」
激しい稲光の音がする。
「おい海が見えてきたぞ!」
火山弾が激しい水柱を上げている。
「大きな帆船も見える」
「幾つかの帆船が火山弾で破壊されているぞ」
「おーい、重力制御装置は正常か?」と持丸。
「浮かび上がるだけのエネルギーは残っていませんが、落下速度を抑える事はできます」
「よし、それで着水の衝撃から身を守る事が出来る」
エッグがゆっくり降りていくまわりを火山弾が猛烈なスピードで落下していく。
エッグは無事に着水するが、火山弾の落下による激しい水柱で周囲の状況を確認できない。
上空から獣のような、悪魔のような異様な雄叫びが聞こえる。
「なんだあれは、生き物なのか?」持丸が上空を見ながら、信じられないような光景に唖然とした。
「あれは黄金に光る龍じゃあないか。信じられん」
漸く水柱が収まり、周囲を確認できるようになった。
まわりにいた巨大帆船が2隻煙をはきながら沈んで行くのが見える。
「どうもここは俺の世界では無さそうだな。他の世界に転送されたという事なのか?」と、神田橋。
「ああ、そのようだ」と、持丸。
エッグのすぐ隣にも大きな帆船があるが、こちらは、あっちこっち痛手を負っているが、沈む事は無さそうだ。
「この船は、そうだ世界史の授業で調べた事があるぞ。なんと言ったかな……、そうそう、ガレオン船だ」歴史の得意な羽柴が言った。
「ガレオン船だって!」
「そうだ、大航海時代のものだ」
「うーん、あのコロンブスとか、マゼランがいた、あの時代なのか?」と、持丸。
「そういう事になるな。どうも戦いの真っ只中に落下してきたようだぞ」
「おや、一つだけ残った帆船が、こっちに興味を持ったようだ。こっちに来るぞ」と神田橋。
「どうしようもない。なるようになるしかないだろう」
「おい、本部に連絡は取れるか?」
「いや、やっていますが、無理です」
「分かった、俺達の判断でやるしかないな」と持丸。
「大きな網をかけようとしているぞ!」
「俺達は魚か!」と羽柴。
「いよいよ引き上げられるぞ」
遂にデッキへ置かれた。
引き上げられた物を珍しそうに見ている者達がいる。
「おや、彼らは日本語を話しているぞ。どういう事なんだ?」
「これは、日本の水軍じゃあないのか?」
「彼らは松浦党水軍だ。八幡大菩薩の旗が見えるからな」と羽柴。
「じゃあなぜ、松浦党水軍がガレオン船に乗ってるんだ?」と明智。
「そんな事は分からん。歴史の教科書には書いてなかったからな」
「う一ん、あの女は日本人なのか?」
「なるほど、あれは日本人じゃないかもしれない」
「あの服は古代のアステカの神官の衣装だ」と羽柴。
「なぜ松浦党水軍とアステカが結びつくんだ? これは面白そうだ」持丸が興味を持ちはじめた。
「さて、問題は俺達に危害を加えるかどうかだな」と神田橋が言うが、その実、彼の顔は平気な顔をしている。
エッグの外側では、菊王丸という人物がアステカの神官の格好をした女に話しかけている。
「モスカーニャ、この物体が何か分かるか?」
モスカーニャと呼ばれた女は、じっとその物体を観察している。
「どうだモスカーニャ、これは、あの黄金の龍が俺達の為に、送ってよこしたように見えたが」
「菊王丸様、この中に人がいるようです」
「なに、人だと。何者なんだ?」
「私達とは別の世界から来た者達です。私達には危害は加えないでしょう。私達の会話も筒抜けです。しかも彼等は別の世界の日本人です」
「なに、日本人なのか?」
「そうです。私達より遥かに文明が進んでいます。もうすぐ出て来るでしょう」
「そうなのか!」菊王丸は、何時でも刀を抜けるように身構えた。
やがて、エッグのドアが音も無く開き、見た事もないような服を着た男達が出てきた。
「はじめまして、私は持丸という。あなた方の言葉は聞こえていました。いかにも私達は日本人です」持丸が何時になく緊張した顔で話している。
何しろ、戦国時代の武士が、腰の刀に手をかけているんだから無理もない。
モスカーニャが、その様子を見て話し掛けてきた。
「私達は、あなた方を歓迎します」
「ああ、それは有難い」と神田橋。
「だがな、その為には、我々に協力して欲しいんだ」と、菊王丸。
「それは、君達の目的が何かを知らなければならない。その内容によって協力するかどうかを決める」
「なんだと、ここは俺の船だ。俺に従わなければ斬る」
持丸の額から汗が吹き出る。
神田橋は、腰の拳銃に手をかけた。
一触即発の状況を見かねて、モスカーニャがロを挟んだ。
「菊王丸様、待って下さい。全て話せば分かって貰えるはずです。この方達の協力を得られれば、強力な味方になりますよ」
暫く両者の間で睨み合いが続く。
やがて、菊王丸の顔に笑みが浮かんだ。
「分かったモスカーニャ、お前の言葉を信じよう。こっちへ来てくれ。酒でも一緒に飲みながら、話そうじゃあないか」
持丸達の顔にも安堵の表情が現われた。
そして、菊王丸の長い話が始まった。




