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太陽へ飛ばせ!

◎太陽へ飛ばせ!

 「こちら神田橋だ、後方から戦闘機が3機が追って来るという無線を傍受した。君たちは、アメリカのスパイだと思われているから撃ち落されるぞ」

 「ミサイルなんか撃ってこないですよね」

 「何を言っている。アイツラは本気だぞ」

 「分りました」持丸は、この危機をどう乗り越えるか思案した。

 「おい持丸、こちら本部だ。状況は聞いた。反重力バリアを使ったら何とかなるんじゃあないか?」

 「ああ、反重力バリアですか、やってみます。そんな分けで忙しくなりましたんで一旦通信を打ち切りますよ」

 「頑張れ、最後まで諦めるなよ」

 「勿論です。じゃあまた後で」持丸は、本部との通信を切った。

 「神田橋さん、こっちは反重力バリアを張ってみます。それより、神田橋さんの方が危ないからこっちに来てください。羽柴が迎えに行きます」

 「そんな事をして大丈夫か?」

 そう言っているうちに、外から羽柴の声がした。

 「神田橋さん、俺に捕まってください」

 「なんだ、もう来たのか。仕方がない、お前たちに命を預けよう。それにしても重力制御装置とは便利だな。俺も欲しいよ」

 こうして、神田橋もエッグに乗り込んだ。

 「おお、中々快適な空間になっているじゃあないか。エンジン音もしないから、本当に空を飛んでいるとは思えんな」

 「神田橋さん、感心している場合じゃあないですよ。レーダーで、2機の戦闘機を捉えました。音速に近いスピードで飛んできます」

 「いよいよ来たな。さっき言っていた反重力バリアというのは有効なのか?」

 「と思います」

 「なんだ、自信が無いようだな」

 「ええ、ミサイルに対して試した事なんかありませんからね」

 「お前なー---」

 「まあそんなに怒らないで下さい。何とかなる筈です」

 神田橋は、その返事を聞いてしかめっ面をした。

 その内に、近距離で爆発音がする。

 見ると、さっきまで神田橋が乗っていたヘリが火だるまになって墜落していくところだった。

 「チッ、奴ら本気だぜ!」持丸が唸った。

 明智と、羽柴は緊張で固まっている。

 「おい、そんな事でどうする。勇気を出せ」神田橋の力強い声が飛んだ。

 「もう一つミサイルが来るぞ」羽柴の叫び。

 「ようし、反重力バリアを最大にする」持丸が、レバーを引く。

 「何かに捕まっているんだ」

 ミサイルが、真っ直ぐに飛んでくる。

 「ウワー!」

 ガタガタガタ、エッグが激しく揺れた。

 「みんな、大丈夫か?」

 「おー、何とか生きてるぜ」と羽柴。

 「もう一つ飛んで来るぞ」と神田橋の鋭い声。

 「揺れるぞ、踏ん張れ」

 再び、激しい揺れが襲った。


 「ふー、こいつは厳しいな。エッグ内の重力調整機能が正常に働いていないようだ」と、明智が首を傾げながら言う。

 「これじゃあ、体が持たンなあ」

 「それでも、死ぬよりはマシだろう。とにかくエッグの反重力バリアは、有効のようだな」

 「確かに、ミサイルは逸れていった」


 「おーい、今度は戦闘機が急速に接近してくるぞ」

 「機関砲を撃ってくるはずだ」神田橋が叫ぶ。

 直後、“バリバリバリ”という激しい音が響いてくる。

 だがこれは、反重力バリアによりエッグには何の影響も無かった。

 ホッとする間もなく、別の方角からミサイルが飛来してくる。

 それを見た持丸が吠えた。

 「今度は、アイツにダークエネルギーを見舞ってやる」

 持丸は、Dボタンを押してからレバーを引いた。

 すると、ミサイルは方向感覚を失ったかのように、上下左右に揺れながら、海に向かって落ちていった。

 やがて爆発し、大きな水柱を上げる。

 「イヤッホー、最高だぜ!」と、羽柴が喜ぶ。

 持丸も、羽柴にむかってVサインをする。

 「バカー、油断するな。右上方からミサイルだ」と神田橋の声。

 突然の激しい揺れがエッグを襲う。

 「ウワー!」

 「いてー!」

 という悲鳴が飛び交う。

 明智が、何かの突起物に頭をぶつけたらしい。

 「おい明智、大丈夫か?」

 「あー、何とかな」

 「おい、右腕から血が出ているぞ」

 「俺の事は、いいから戦闘機に集中してくれ」

 「そうか分かった。とにかくお前は無理するな」

 「左から戦闘機だ。注意しろ」再び、神田橋。

 「機関砲なら大丈夫だ」持丸が、余裕の笑みを浮かべる。

 ところが、急接近してきた戦闘機が突然火を吹いた。そして、キリモミをし、モウモウと煙を吐きながら海へと墜落していった。

 「なんだ持丸、何かやったのか?」

 「いや、俺は何もしてないぞ」持丸は、唖然とした表情を浮かべる。

 「みんな、海を見てみろ!」羽柴が、下の方を覗きながら言った。

 その海の光景を見て、みんな息を呑んだ。

 「な、なんて事だ。海が沸騰している」

 「もう、俺達は噴火口の上まで来ていたんだ」

 「見ろ、無数の魚が死んで漂っている」

 「持丸、注意しろ。火山弾が飛んで来るぞ」

 すると、巨大な火山弾がエッグの近距離を通過して行った。

 「げ、でかいぞ!」

 エッグは、その衝撃を受けてグラッと揺れた。

 「そうか、さっきの戦闘機は、この火山弾にやられたんだ」

 「噴火はこれからが本番だ。なるべく噴火口の中心部分まで行かなければ」

 「それはそうだが、もう1機の戦闘機は、どうなっている」

 「大丈夫そうだ。仲間の戦闘機が墜落したのを見て、向こうで旋回しながら様子を見ているようだ。もう、襲ってはこないだろう」と、神田橋は判断した。

 「ふーん、と言うことは、俺達も火山弾でやられると思っているという事かな」と持丸。

 「持丸、調子に乗るな。噴火が絶頂に達すればこんなもんじゃないからな」と、神田橋が諌めた。

 「分かってますよ。さあさあ中心部までひとっ飛びだ」

 どう見ても、持丸は喜んでいるようにしか見えないのだ。

 それを見て、羽柴と明智は諦め顔になり、神田橋は苦笑した。

 「おい、あと5分程で中心部分に到着する。羽柴、本部へ転送の準備をして欲しいと連絡してくれ」

 「はいよ船長」羽柴も少し悪乗りしているようである。

 「こちらエッグ、本部応答せよ」

 「こちら本部だ。まだ生きているな」

 「ええ、そう簡単には死にませんよ。ところで、もうすぐ噴火口の中心部分に到着しますので、転送準備をお願いします」

 「了解した。くれぐれも慎重にやってくれ」


 「火山弾が、益々多くなってきたぞ。大噴火まで秒読みだ」神田橋が海の状態を見ながら言った。

 「おお、海が少し赤みを帯びてきたように見える」と羽柴。

 「来るぞ、来るぞ。反重力バリアを限界まで強めるぞ」持丸も、必死で操作しながら、ゴクリと唾を飲んだ。

 眼下では、見える限りの海から、ゴボゴボと泡が吹き上がってきている。

 更に、海が大きく盛り上がる。

 そしてゴーという音が次第に大きくなる。

 ついにドドドドドーという、地獄から響いてくるような音とともに水柱が上がり、無数の火山弾が飛んできた。

 エッグもまた激しく揺れ、また温度が急上昇してきた。

 「本部、本部、噴火が始まりました。異世界の穴を開けてください」

 持丸が、マイクに向かって絶叫した。

 今まで経験したことのない揺れと暑さで、正気を保つことさえ難しい状況だ。

 だが、本部からの応答がない。

 持丸は、気力を振り絞ってマイクに向かって叫ぶ。

 “ガガガー、ピピイー”という雑音ばかりが入ってくる。

 持丸も、意識が遠くなる。

 「持丸、大丈夫か?」神田橋が持丸を励ます。

 「持丸、聞こえるぞ。本部は異世界への穴を開けたぞ」

 雑音によって、うまく聞き取れないが確かに言っている。

 「こちら本部。異世界への穴は開いた」

 それを理解したのか持丸は、神田橋に向かって薄っすらと笑った。

 「ようし、もう少しの辛抱だぞ」という、神田橋の声が、遥か遠くから聞こえてくるように感じた持丸であった。

 暫くすると、激しい揺れが収まってくる。

 そして、心持ち温度も下がってきているように感じた。

 神田橋が下を見ると、エッグの下、数メートルのところで、噴火物が消えているように見えた。そして、その範囲が徐々に広がっているのを確認できた。

 『なるほど、持丸たちの言う事は本当だったんだな。信じてよかった』

 神田橋は、この喜びをみんなと分かち合いたくて、持丸を揺り動かした。

 「持丸、起きろ、うまくいっているようだぞ」

 薄目を開けた持丸が、かすれ声で言った。

 「ああ、神田橋さんやりましたね」

 「おお、やったとも----。おい喉が乾いてないか?」

 持丸は、頷きながら冷蔵庫をゆびさした。

 「冷蔵庫だな、よし待っていろ!」

 神田橋は、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し、持丸に渡した。

 「どうだ、気分は?」

 「ふー、ありがとう。もう大丈夫だ。皆にも飲ましてやろう」

 明智、羽柴も大分参っていたが、エッグ内の温度も正常値に戻り、ドリンクも飲んだお陰で大分元気になってきた。

 異世界のへの穴も、半径数十キロまで広がった。上を見れば、青空が見える。

 エッグの中にも笑い声が聞こえるようになった。

 「ハッハッハ、お前たちよくやったな。これで何十億という人類を救えるぞ」神田橋が、満面の笑みを浮かべた。

 「へへ、俺達は英雄ってことになるな」と羽柴。

 「いやあ、この噴火はどれだけ続くんだ」

 「かなり長時間に渡って続くだろうが、5時間もすれば、ピークは過ぎるだろう」と明智。

 「となると、少なくとも5時間はこの状態を維持しなければならないのか。保つかな?」

 「ああそうだ、本部との連絡は取れるかな」

 「よし、やってみよう。本部、本部、こちらエッグ、応答願います」

 持丸は、何度か呼びかけたが反応が無い。

 そして、持丸が、5回目を試した時神田橋が口を開いた。

 「しっ、静かに----,何か聞こえないか?」

 4人が、スピーカーの前で耳を澄ます。

 「こちら本部。そちらの状況を知らせてくれ」

 4人が互いに顔を見合わせニヤッと笑った。

 「こちらは皆んな元気です。異世界の穴も順調ですよ。この凄まじい光景を、そちらにも見せてやりたいですよ」

 「ハッハッハ、それは良かった」

 「ところで、本部の方はどうなんですか?」

 「ああ、こっちも最善を尽くしている。今の状態をなるべく長く維持できるようにな。それに噴火物もこちらの太陽へ転送できている。今のところ、順調だ」

 「お願いしますよ」

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