取調室にて
明智と羽柴は、牢に入れられ、リーダーとおぼしき持丸だけが、取調室に呼ばれた。
「持丸と言ったな、お前たちは何処から来たんだ。正直に答えるんだ」ワイシャツの袖をまくった小柄な男が苛立たしそうに言った。
「さっきから言っている。別の世界から来たと」
「別の世界とは、何の事だ? アメリカではないのか? 我々が行おうとした火山ガスを放出する為の人工火山プロジェクトの情報を流したんじゃあないのか。そしてそのタイミングに合わせて強力な電磁波を発生させスーパプルームを起こさせた。そうだろう!」
「違う」
「違うんなら、私にも分かるように合理的な説明をして見ろ。異世界なんて戯言は言うなよ」
「私が正直に言おうとすれば、異世界の事を抜きにしては言えないんだよ」
「お前もしつこいな。これではいつまでたっても平行線だ」
「おい、時間が無いんだ。スーパプルームで世界は滅亡するぞ。俺達を自由にするんだ。俺達なら何とか出来るかもしれないんだ」
「戯言を言うな。お前たちのお陰でこうなったんだ。いい加減白状するんだ」
「くそっ、あんたと話していても埒が明かない。手遅れになるぞ」持丸は、相手の顔を睨みつけた。
睨み合いが暫く続いた後、再び持丸が、喋った。
「神田橋中尉に合わせてくれないか。そして、俺達を拾った場所へ連れて行ってくれ。そうすれば、俺達の言った事が正しい事を証明出来るんだ」
「ふん、うまい事を言って逃亡する気だろう。お前の言うことなど聞くはずがなかろう」
こうして、取り調べは平行線に終わった。
牢に戻ってきた持丸は、不機嫌そうに言った。
「くそっ、時間を2時間も無駄にした」
「残り3時間か。俺達がここにいる限り、この世界の人間は滅びることになるぞ」と、羽柴。
「もちろん、俺達もだ」と、明智も無表情ながら、死を覚悟しているかのように言った。
「何か良いアイディアは無いもんかなあ」
3人が、牢の中で、途方に暮れていた時、突然、聞き覚えのある声がしてきた。
「おーい、君たち」
持丸が、声のする方を向き、その人物を確認すると、僅かだが目に希望の光が宿った。
「おお、神田橋中尉!」思わず持丸が発した言葉には歓喜の響きがあった。
「喜ぶのはまだ早いぞ。私はただ君たちに聞きたい事があって来ただけだぞ」神田橋の顔には厳しさがあった。
「聞きたい事というのは、なんですか?」
「ああそれは、君たちを拾った場所から、奇妙な物が出てきたんだ」
それを聞いて、3人の目つきが変わった。
神田橋はその表情を見逃さずに聞いてきた。
「ほほう、何か心当たりがありそうだね」
「そっそれは、大きな卵のような形をしていませんでしたか」
「その通り。やはりあれは君たちの物だったか。しかもそれは半透明でね、見つけるのに苦労したよ。それであれはどういう物なんだね?」
「神田橋さん、それは乗り物ですよ。私達はそれに乗ってここに来たんです」
「ほう、あれが動くのか。そのようには見えなかったな。ところで、それはアメリカ製なのか?」
「神田橋さんも、私達がアメリカのスパイだと思っているんですか?」
「そうじゃあないという証拠もないからな」
「私たちはスパイじゃあない。ここではそれを証明しろと言われても無理ですが、そのタマゴ型の乗り物まで連れて行ってくれれば、それを証明出来ますよ。私たちは、その乗り物をエッグと読んでいますがね。そのエッグはあの場所に置いてあるんですか?」
「いや、あの場所には置いてない。軍の手によって、ここまで運んできてある」
「おお、それは良い。早くそこまで連れて行って下さい」
「私の独断では出来ない」
「神田橋さん、そのエッグがスーパプルームによる巨大噴火から、この地球を守る事が出来るかもしれないんですよ」
「ああ、その事はお爺さんからも聞いている。君たちを信じろとね。とにかくやれるだけの事はやってみよう。だが少し時間をくれ」
神田橋は、そう言い残すと足早にそこを去っていった。
「神田橋さんは、俺達を信じてくれているんだろうか?」明智が心配顔で言った。
「いずれにしろ、牢の中にいるかぎり俺たちは何も出来んからな。信じて待つしかないだろう」と羽柴が言う。
「後は運を天に任せるしかないな」持丸は、そう言いながら、コインを宙に投げ、再びそれを受け止めた。
「へへ、表が出たぜ」と言って、親指を立てた。




