表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/71

なんでも屋稼業その2 復活

 SUV車の中では、ベレー帽に黒メガネの兵士が運転し、隣にはマヤが座っていた。

 「ねえ、あんた誰なの? アンドラスではなさそうだし。それに、どうして私を救ってくれたの?」

 「それより俺の質問に答えてくれ」、男はラジオのスイッチを切りながら言った。

 「そう、私が何者か分からなければ話さないって事ね。いいわよ、あなた悪者には見えないから」

 「-----」、兵士の顔が、突然険しくなった。

 “キキー”というブレーキ音、そしてハンドルを大きく左へ切り、藪の中へ突っ込んで行く。

 「い、いったいどうしたのよ!」マヤの顔がひきつっている。

 「くそっ、タイヤをやられた。後ろでバイクに乗っている男がライフルを構えてこっちを狙っていたのさ」

 車は藪の中で止まった。

 「面白い、返り討ちにしてやる。マヤ、君は車の陰に隠れているんだ」

 兵士は、座席から近くにあった木に飛び移った。

 そこへ、エンジン音を響かせながらフルフェイスのヘルメットをしたライダーが近付いて来る。

 兵士は、木を飛び移りながらバイクへの攻撃に好都合な場所を探す。

 ライダーもまた、その気配を感じており、器用に運転しながらライフルを発砲する。

 兵士は、容易には接近できないようだ。

 そこで、タバコのような形の笛を口に当てた。

 暫くすると、空のあちこちから1羽2羽と黒いカラスが集まり始めた。

 “カアー、カアー”という鳴き声や、羽ばたく音が辺りに満ちて来る。

 ライダーは不思議そうに空を見上げる。

 ついに彼は、兵士の動きとカラスのそれを区別出来なくなってきた。

 その困惑ぶりを見透かしたかのように、上空から兵士が飛びかかる。

 たまらずライダーは、転げ落ち、バイクも数メートル走って転倒した。

 ライフルは兵士が奪い取っていた。

 漸く起き上がったライダーに向かって、兵士は、ライフルの銃口を向けた。勝ち誇ったように顔が笑っている。

 だが、ライダーは銃口を向けられているにも関わらず、ゆっくり立ちあがり衣服についた埃を払っている。

 「へへ、形勢逆転だな。お前は誰だ!」と、兵士が言う。

 「ふん、君こそ誰なんだ。アンドラスを騙すとはな」

 「まず、お前から言うんだな。置かれている立場を考えて見ろ」

 「ほう、それはどうかな。それを撃ってみたらどうだい」

 今度は、それを聞いた兵士が戸惑った。

『こいつ、何を考えているんだ。まあいい、致命傷にならんところを狙ってやれ』

 「おや、困っているようだな。なら、この辺りを撃ってみな」そう言いながら、お腹の辺りを指さしている。

 「本当に良いんだな」という問いかけに対しライダーは頷いた。

 暫しの静寂の後、ライフルは大きな発砲音と共に火を吹いた。

 だが、ライダーは平気で立っている。

 「くそっ、これは空砲か?」と、焦る兵士。

 「いや、そうじゃあないぞ。ほらこの通り」、そう言ってライダーは、お腹の辺りから潰れたライフルの弾を取り出して見せた。

 「はっはっは、このスーツは最先端のテクノロジーで作られている。ライフルの弾ぐらいでは何もダメージを与えられないのさ」

 「ちっ、ならば」と、兵士が言うと、ライフルを放り投げ、突然ライダーの目の前からかき消えた。

 次の瞬間、ライダーの背後に兵士が現れ、裸じめを決める。

 「へっ、これでどうだ」

 ライダーは、苦しそうに顔を赤らめていたが、両腕で兵士の腕を掴む。

 裸じめは、完璧なまでに決められていた。この状態で、この技を解くことは不可能である。

 だが徐々に兵士の腕が緩められていく。恐ろしい力である。

 ついに裸じめは解かれ、その腕を掴んだまま、体をひねって兵士を投げ飛ばした。

 ライダーは勝ち誇ったように「どうだね。このスーツは力も補強してくれるのさ」と言う。

 しかし兵士は、ライダーの言葉を大人しく聞くわけも無く、素早く起き上がって横に飛び、側面から延髄蹴りを決めた。

 これには流石のライダーも苦しそうに倒れた。

 勢いづいた兵士は、尚も攻撃を仕掛けようとして突進して行く。

 しかし、「待って、待って」と言う、黄色い女性の声が響いてくる。

 マヤである。

 兵士は、すんでのところで攻撃を止めた。

 マヤは、漸く起き上がったライダーに向かって、「あなた飛鳥さんでしょ」と言う。

 ライダーは、マヤの姿をチラッと見て、やや驚いたような表情をした。

 それから「やあマヤ、大丈夫そうだな」と言いながら、ヘルメットを取る。

 「ああやっぱり飛鳥さんだったのね。良かった。ロケット弾で吹き飛ばされた時にはどうなるかと思ったわ」

 「そう簡単には死なないさ。着弾する直前に脱出したからね。ただし、ホバークラフトは壊れた。社長が何と言うか心配だ」

 「あらまあ、いつもの事でしょう」

 そんな会話を聞いていた兵士が、ヘルメットを取ったライダーの顔を見て不思議そうな顔をしている。

 「おいおい、お前は何処かで会ったぞ」と、兵士が二人の会話に割り込んでくる。

 兵士は、自分の記憶を辿り、漸く思い出す。

 「そうだ、あの岩風呂で会ったんだ」

 ライダーも“岩風呂”という言葉に反応して「だとすると君は、まさか---」と言い、兵士の顔を覗き込んだ。

 兵士は、ベレー帽とサングラスを外す。

 「覚えているかい?」そう言いながら、爽やかに笑う。

 「まあ、士郎さん!」と思わず大きな声を出したのはマヤだった。

 「き、君はあの時ナノマシーンで死んだはずではなかったのかい。それに、ドクターが君の死を確認していた」

 「へへ、俺は心臓を数分間は意図的に止める事が出来る」

 「そ、それは凄いな。それでもまだ疑問は残る。ナノマシーンは確かに君の中に入ったはずだが?」

 「確かにそうだ。だが、これを言う前に君たちはなぜナノマシーンを狙っているんだ?」

 「それはもっともな事だ。我々が何者か分からなければ君も安心出来ないだろう。しかし、我々はナノマシーンが欲しいわけじゃあない。東藤博士を救いたいだけだ。核融合による発電は、是非とも成功して欲しいと思っている。我々の会社からも優秀な技術者が、そのプロジェクトに参加しているからな」

 「なるほど、なら俺達は味方同士になるって事だな」

 「そう言う事だ。病院での警護もグループ傘下の警備会社が担当している」

 彼はそう言いながら、士郎に名刺を渡した。

 その名刺には、パーフェクトビクトリー社セキュリティ部門チーフ、飛鳥光一となっていた。

 「そして、マヤは知っているね。彼女は私の部下だ」

 「なるほど、漸く読めてきたぞ。ところでマヤ、あのサービスエリアでの騒ぎはわざとやったんだな」と、士郎が問い詰める。

 「ええそうよ、ごめんなさいね。そんなに睨まないでよ」

 「ふん、面白くないね。それで何の為にあんな事をやったんだ」

 「うーん、それは---」マヤは、心なしうつむき加減になる。

 「正直に言おう。君が持っていたバッグにGPSをセットした。万が一ナノマシーンが盗まれた時の事を考えてね」と、言いにくそうにしているマヤに代わって飛鳥が答える。

 「なるほどね。俺が信用できないって訳だ」

 「一之谷博士は、君の事を大いに気に入っている。だが我々は君の事を良く知らなかった。我々としても完璧を期したいんでね、秘密裏に君の事を監視していたんだよ」

 「ふーん」、士郎は、苦虫を噛んだような顔をしている。

 「しかし驚いた。君は大した者だな。特殊スーツを着ていた私と互角に戦ったんだからな」

 そう言われると満更でもない気になってくる。この男、表情にすぐ現れる。さっきまで不満一杯の顔だったが、今は笑みがこぼれている。

 「うーん、あんた飛鳥って言うのか。思い出したぞ。以前に何処かで見たような感じがしていたんだが。あんた陸上の世界大会で日本人で初めて10種競技で優勝した人だよな」

 「はっはっは、昔の事だよ」

 「そんな事言って、いつも自慢してるのよ」とマヤが士郎に向かって微笑む。

 「そ、そうかな。そんな事滅多に言わないと思ったがなあ」と言いながら、頭を掻く。

 「おっと、それより君は、ナノマシーンでどうやって助かったんだ」と、話を切り替える。

 「それは簡単だ。実は12桁のパスワードを2種類覚えていたんだ。あの時、ドクターに教えた番号はナノマシーンが体に入っても何もしない設定になっていたのさ」

 「ほほう、だとすると君は死んだ演技をしていたのかい?」

 「その通り。そのくらいは朝飯前さ。さあもう大分日が昇ってしまった。俺の予定では、今頃病院に着いている頃なんだが。かといって、USV車はパンクしちまったしな」

 「そうか、じゃあ私が乗って来たバイクを使ってくれ。もっとも君が乗っていたバイクだがね」

 「だと思ったよ。それじゃあ遠慮なく使わせてもらうよ」

 「そうしてくれ、こっちも直ぐにパンクを直して追いかけるよ」

 士郎は、ヘルメットを被り、バイクにまたがった。

 「おい、士郎君。これを君にやるよ」

 そう言いながら、飛鳥は腰に付けてあった革製のケースを士郎に渡した。

 士郎は、それを受け取りケースに入っている金属製の棒を出してみた。その断面は楕円形になっていて、全長20センチ程あるだろう。ずっしりと重い。また、その表面は手で持ちやすいように弾力性のある素材で覆われている。

 「君は、剣道もやるんだろ。そこにボタンがある。それを押してみてくれ」

 士郎は、言われたボタンを押して見た。

 するとその棒から、スルスルと鋭い刃を持った剣がニョキニョキと飛び出した。刃渡り50センチ程はあるだろう。

 「おお、これは凄い!」

 「気に入ったようだね。切れ味は日本刀以上のものがある。何かの時に役に立つだろう」

 「そうなのか、面白い。貰っときますよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ