第4話 戦わずして伝説を作る
王都郊外の森――
勇者、王女、そして魔王候補の三人は、ルーチェが作った武具を手にして、初めての合同訓練に挑んでいた。
「準備はいいか?」勇者が問いかける。
「もちろんよ」王女は指輪の光を確かめながら答える。
魔王候補は黙って剣を握り、冷静に周囲を見渡す。
ルーチェは工房の奥で、そっと観察していた。
(戦うのはあなたたちです。私は作るだけ――)
最初の一撃。勇者が剣を振るうと、かつて錆びて欠けた刃が、見る見るうちに光を帯びて竜を斬るような衝撃を放った。
「うわっ……!」
勇者の叫びに、王女も魔王候補も目を丸くする。
「……剣が、私の力に応じて変形している……?」魔王候補が低くつぶやく。
次に王女が指輪を掲げる。小さな光が彼女の周囲を包み、魔法の攻撃を完全に跳ね返した。
「これ……護符の力が……!」王女は驚きと喜びの入り混じった表情を見せた。
そして、魔王候補の剣も動いた。欠けた刃が正確に敵の動きに追随し、斬撃を最大化する。
「……こんな剣は、初めてだ」冷静な声ながら、明らかに感動が滲む。
ルーチェは微笑みながら、手元の作業台に目を落とす。
(私が戦わなくても、世界はちょっとだけ面白くなる……)
そのとき、森の奥から突如として魔物の咆哮が響く。三人は同時に振り向いた。
「……戦場ね」勇者が息を整える。
ルーチェは小さく首を振った。
(私は行かないわよ……作っただけで十分、あなたたちが頑張ってくれる)
魔物が森を駆け抜け、三人の前に現れる。
勇者は剣を構え、王女は指輪の光を放ち、魔王候補は剣を振るう――すべてがルーチェの作った魔導具の力を最大限に引き出して戦う。
一瞬のうちに魔物は撃退され、森は再び静寂を取り戻す。
「……すごい……戦わなくても、ルーチェの作った武具だけでここまで……」王女は感嘆の声を漏らす。
魔王候補も剣を収め、珍しく微かに笑った。
「認めざるを得ない……これは、戦う者の力を超える、魔導具の奇跡だ」
ルーチェは作業台に腰を下ろし、そっと息をつく。
「ふふっ……今日も工房で世界をちょっとだけ変えちゃったわね」
こうして、ルーチェの作った武具は、戦わない彼女自身を超え、英雄たちの手で伝説となった。
戦わずして世界に影響を与える少女――ルーチェの物語は、ここから本格的に動き始めるのだった。




