第5話 噂とライバル、そして新たな依頼
王都の街角で、ルーチェの名は静かに、しかし確実に広まっていた。
「壊れた剣が、あの少女の手で伝説級に……?」
「王女や勇者も使っているなんて、本当か?」
ルーチェ本人は相変わらず工房の奥で作業に没頭していた。
(うーん……戦わないのに、どうしてこんなに騒がれるのかしら……)
そんなとき、工房の扉が勢いよく開いた。
「あなたが……ルーチェね!」
明るい声と共に現れたのは、鮮やかな紫色の髪を持つ少女――他の魔導具職人らしい。
「えっと……はい、私がルーチェですけど……」
ルーチェが答えると、少女は胸を張って言った。
「私、ライラ! あなたの噂を聞いて、ここまで来たの。私も魔導具職人として負けていられないわ!」
ルーチェは小さく微笑んだ。
(ふふっ、ついにライバルか……でも、戦うのはあなたたちじゃない。作るだけなら負けないわ)
ライラは工房の中をぐるりと見渡し、ため息をついた。
「あなた、戦わないのにここまで凄いなんて……ズルいわ!」
ルーチェは肩をすくめる。
「戦わないのが私の特技ですから」
その瞬間、王女エリシアからの新たな依頼が届いた。
「ルーチェ、急ぎで来てほしい。王都近くの森で、魔物の群れが暴れているの。武具の力が必要よ!」
ルーチェはライラに向かって手を振った。
「ふふ、見学したい? 作るだけで、また伝説級の武具が活躍するところを見せてあげるわ」
ライラは目を輝かせて頷いた。
「もちろん! こんなチャンス、滅多にないもの!」
ルーチェは作業台に戻り、手元の剣や指輪、鎧を最終チェックする。
「よし……準備は完璧。あとは、あなたたちが戦う番よ」
こうして、ルーチェの作った魔導具は再び戦場へ向かう。戦わずとも、その存在は王都中に知られ、次第に「戦わない少女が世界を変える」という噂が広まっていった。
森の奥で勇者、王女、魔王候補が立ち向かうその瞬間、ルーチェは静かに微笑んだ。
(戦わなくても、私は世界に影響を与えられる……やっぱり、作るのが楽しいわ)
そしてライラという新たな魔導具職人の登場により、ルーチェの物語はさらなる波乱を迎える――
戦わず最強の少女と、伝説級の魔導具を巡る新たな騒動が、静かに始まったのだった。
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