第2話 王都のご依頼、最強の武具を
王都行きの馬車の窓から、ルーチェは初めて見る都の景色に目を丸くしていた。
「こんなに人がいるなんて……やっぱり村とは違うわね」
彼女の目的はただ一つ――父の残した工房の再建と、少しでも稼ぐこと。
しかし、王都の噂はすぐに彼女の耳に届いた。
「王都では、魔導具職人の腕が、そのまま評判になるって……!」
その日の午後、ルーチェは王宮の広間に案内された。依頼人は、城中でもひときわ華やかな衣装をまとった王女――エリシアだった。
「あなたが……ルーチェさんね?」
王女の声は柔らかくも、どこか鋭い光を含んでいた。
「はい、村では小さな工房を営んでいます」
ルーチェは少しお辞儀をすると、内心でため息をついた。
(王女相手ってだけで緊張するなんて、私もまだまだね……)
王女が差し出したのは、金属製の指輪。見るからに古び、表面にはひび割れが走っている。
「これ、王国の護符として使いたいのだけど、どうしても力が弱くて……」
ルーチェは指輪を手に取り、じっと見つめた。指先で触れると、金属が小さく震えた。
(ふふっ……これは簡単ね)
魔法は使わない。だが、ルーチェの技術で指輪はまるで生き物のように反応し、ひび割れは消え、装着する者の身体に合わせて微細な魔力を蓄え始める。
「できました」
ルーチェが差し出すと、王女の手に指輪はすっと馴染み、淡い光を放った。
「……これは……!」
王女の目が見開かれる。小さな光は、まるで王女自身を守るかのように柔らかく輝いていた。
ルーチェは微笑みながら肩をすくめた。
「別に魔法をかけたわけじゃないんです。素材と構造をちょっと直しただけで……」
王女は目を輝かせたまま、深々と頭を下げる。
「これで王国を守る力になる……あなた、すごいわ……!」
ルーチェは心の中でつぶやく。
(すごいって言われても、私は戦わないのに……でも、こういう瞬間がたまらなく楽しいのよね)
その後、王女からの依頼はどんどん舞い込むようになった。戦士の剣、魔法使いの杖、護衛用の鎧――どれも「壊れかけ」や「性能不足」のものばかり。
しかし、ルーチェの手にかかれば、どれも伝説級の武具に生まれ変わる。
気づけば、王都中が彼女の作る魔導具の噂で持ちきりになっていた。
「えっ、私が戦うんじゃないのに、こんなに注目されるの……?」
ルーチェは自分の作業台に戻ると、微笑みながら剣を手に取った。
(いいのよ、戦わなくても。作るだけで、世界をちょっと面白くできるんだから)
その日も、王都の小さな工房で、ルーチェの不思議な魔導具作りは静かに、しかし確実に世界を変えていったのだった。




