第二の職業 第十章~家族と高齢者ドライバー~
Y以外に初めて家族の事を話した。
エリアマネージャーは他の社員に一切私のプライベートを漏らさないでくれていた。
変わった事と言えば、休日前は残業を早めに切り上げるように指示された事のみだった。
3カ月程変わらない毎日を送っていた。
しかし父は諦めていなかった。
父が悪者にならないようYと連絡を取りYを実行犯にする事にしたようだった。
顔を合わせないようにしていたのに、実家ではなく家にいるようになり私が帰宅すると会社を辞めて実家に戻るように説得してきた。
私「それがYの意思なの?この部屋解約して実家に戻るって事だよ?」
Y「なんで解約の話しになるの?会社を辞めて実家が落ち着くまで戻るって話しだろ」
私「仕事辞めたら収入がなくなるんだよ。家賃払える訳ないでしょ」
Y「実家に戻ってる間、家賃分ぐらいの金貰えないの?」
私「なんで私に聞くの?Yが言われて私に言っているだけなんでしょ?良い顔したいのも大概にしてよ。会社を辞めろ。実家に戻れ。でも家は維持しろ?何言ってんのかわかってんの?少しは自分で考えてから言葉にした方が良いよ」
Y「家族が本気で困っているのに、それで良いと思ってんのか⁉」
私「だから会社を辞めて実家に戻るって事は、家も解約するし住民票も実家に移す事だけど良いのかって言ってんの。実家に来るなって言われてんでしょ?事実上の自然消滅だね。別れる事が出来てせいせいするわ」
Y「そうゆう話しをしてんじゃねぇよ」
私「だからYの言いたい事がわかんないって。きちんと整理してから言って来て。理解できないわ」
翌日出勤しエリアマネージャーに父が本気で動こうとしているっぽいですとメールを入れると、会社の対応はばっちりだから安心してと返信が返ってきた。
数日後、父とYが再度話し合ったようで
Y「家を解約して良いから、会社を辞めて実家に戻れ」
私「別れてくれるって事ね」
Y「俺も休みの時にMの実家に行っても良い許可を貰った」
私「ふーん」
私「じゃあ解約に向けてYの荷物から先に全部運び出して。部屋を空にしないと解約できないでしょ」
Y「2人同時で良いでしょ」
私「実家に荷物や家電を運ぶ方が料金高くなるから、Yの荷物を全部出したら、後は業者呼んで全部処分してもらう。その時にYの荷物があって処分されても私のせいじゃないから」
Y「わかったよ」
私「Yの荷物がある限り会社は辞めない。実家から連絡来てもYが部屋を空にしないから戻れないって伝えるから」
Y「わかったって言ってんだろ」
面倒でだらしのないYは、一向に部屋の荷物を移動させなかった。
予想通りだった。
1ヵ月程たち父が痺れを切らし電話してきた。
父「いつになったら戻って来るんだ!!」
私「Yが部屋の荷物運び出さないから、部屋の解約手続きが出来ないの」
父「Yが悪いって事か?」
私「Yの荷物を全部運び出したら退職するって交換条件にした。運び出さないって事はそうゆう事じゃないの?」
父「Yに連絡する」
数十分後、Yから電話がくる
Y「なんでおじさんに俺のせいで会社を辞めてないって言ってんだ!!」
私「Yの荷物がある限り会社を辞めないって言ったよね?わかったって言ってたのに日本語通じない訳?」
Y「おじさんに言う必要は無かったって言ってんだ!!」
私「いや。だから荷物がある限り会社は辞めないし、そう伝えるって言っておいたけど?やっぱり日本語通じてない?」
Y「俺を悪者にする必要は無かったって言ってんだ!!」
私「悪者でしょ。別れたいって言っても別れてくれない。借金も押し付けるし、車代も払って貰ってない。車も名義変更しないとね。すぐ売るけど」
Y「車ないとMの実家にも行けないだろ!!」
私「車だけじゃないよ。押し付けた借金の残りも返すね。こっちは収入がなくなるんだから」
Y「金ないって言ってんだろ!!」
私「知ってるよ。だから会社辞めるってどうゆう事か考えてって言ったでしょ。部屋の問題だけじゃない。借金に車、今まで私の財布から勝手に抜いていたお金全部がYに返ってくるんだよ。車代を払わないなら名義変更は絶対だから。2代も車いらないしYの乗り方汚いし、あんな汚い車乗りたくないから、すぐ売る。これは会社を辞めるのとイコールで決定事項なの。言われる前に少しは自分で考えなよ」
Y「貯金ぐらいあんだろうが!!」
私「だからYの借金返済で貯金なんて出来る訳ないでしょ。車のローンだってあるんだから。逆になんでYに貯金が無いのか、そっちの方が意味わかんないわ」
Y「おじさん怒ってて、これ以上話し合い出来ないからMから話して」
私「何を?Yの借金返済にYの車のローンを抱えているので仕事辞められませんって言えば良いの?」
Y「だから言い方考えて伝えろって言ってんの!!」
私「言い方って何?結論、Yは借金返済も車のローンも財布からお金盗むのも止められないし、自分で出来ないから押し付けたいって事でしょ?」
Y「もういい!!俺から話す!!」
私「頑張って下さい。荷物も片付けて運び出して下さい」
Yはガチャ切りをした。
出張中、父から電話か来て
父「お前が家賃とか払っていたのか?」
私「そうだけど」
父「Yも仕事しているのに金ないのか?」
私「そうなんじゃない?借金もあるみたいだし」
父「あのバカは金の管理どうしてんだ?」
私「バカはバカなりにやってんじゃない。知らんけど」
父「金ないって泣きついて来たぞ?」
私「だから?私には関係ない。さんざんバカにして都合の良いように使って来たYに足引っ張られたね。仕事辞めるなら収入なくなるし部屋も解約しないといけない。Yには沢山やらなきゃいけない事があるけど、まずは部屋探すなり実家に戻るなり場所を決めて部屋を空にする事が絶対条件」
父「Yに金の管理ぐらい自分でしっかりしろって怒鳴っとく」
私「勝手にすれば?それでも動けるだけの資金が無いと思うけどね」
父「なんでそんな男と付き合ってんだ!!」
私「別れろってYに言えば済む話しだったのに、良い顔して都合よく使って来たのはそっちでしょ。そっちが良い顔して可愛がるから調子に乗って、私が何度も別れてって頼んでも、そっちに泣きつけば良いと思い込んでんだよ。そっちが勝手にやった事の結果だよ」
父「ごちゃごちゃうるせーな!!黙ってさっさと帰って来いよ!!」
私「だから会社辞める条件をYに出してるって言ってるでしょ?あとはYと話してよ」
またしても会話が終わっていないのにガチャ切りされてしまった。
Yは私と離れるなんて無理でしょ。
・一人暮らしの経験がない
・家賃も家の契約金も私に支払わせた
・生活力が無い
・掃除を知らない
・生活費や毎月の必要出費を分かろうともしない
・家事をやってくれる人がいないとやっていけない
・毎月の給料をお姉さんに中抜きされている事にも気付けていない
・お姉さんが中抜きしているせいで借金返済が一向に終わらない
・私の財布から現金を抜く事を覚えてしまった
・車の代金を払わないと名義変更して取られてしまう
・押し付けた借金返済を今さら自分で払う事なんて出来ない
・まわりには良く思われたいから、周囲の人に散財する
・罪悪感なく簡単に借金を増やす
・お姉さんの子供を父親代わりなんて理解できない事を言って可愛がらずお金ばかり使う
・ブラックリストに載っているから部屋も借りられるのか不明だし、そもそも一人暮らしをした事が無いから一人暮らしを嫌がる
・実家に戻れば市営住宅の為、家賃が上がると文句を言われる
・友人は実家暮らしか結婚して家やマンションを購入している為、転がり込む所が無い
・そもそも、こんなだらしのない人間と暮らそうと思う人なんていないと思う。家族や子供がいたらなおさらだ
どう考えたってYは自立できる人間じゃない。
だから私にしがみついて、お金として見て奴隷の様に扱って来た。
さぁ~Yと父の戦いが始まる。
笑いが止まらない。
どうせ私の人生Yになっても実家になっても地獄だ。
貯金ならじゅうぶんにある。
少しの希望を見るのであれば、Yが部屋を空にした時点で引っ越しをしてYからも実家からも姿を消す方法だ。
上手くいけば、Yは私を探せなくなり逃げられる。
実家がどんなに騒ごうと会社が守ってくれる。
実家から逃げる為なら、エリアを変えて新天地で新しく頑張る方法だってある。
まぁ~所詮私の人生だ。
こんな上手い話にはならない。
分かっている。
Yか実家どちらかを選ぶ選択肢しかないだろう。
そして選択肢はYと父が握っている。
私に決定権なんてない。
Yと父が一向に進まない戦いをしてくれている間、通常通りの日常を送っていた。
帰省した時、農機具が故障しお昼頃に帰って良いと言われ明るい日中に帰宅できる事になった。
浮かれてしまっていたのだと思う。
地元では有名な魔の交差点がある。
十字両方の道路が山に沿っていて、大きなカーブになり信号がない。
カーブがある為、交差点に進入して初めて全て見渡せるような道路だ。
私は優先道路を運転していたので、減速せず交差点に入った。
真っ黒なかたまりが運転席側の窓に見えた。
え???
次の瞬間だった。
ベコッ!!!
大きな音と共に運転席側のドアが私に向かって迫ってきた。
同時に横からの衝撃に耐えられず、車が上下逆さまになった。
車が逆さまになる衝撃で全ての窓が一瞬で割れた。
割れた衝撃音に気を取られ車内の後ろから全て見渡した。
正面のフロントガラスに目線を戻すと車のフレームに合わせて火花を盛大にあげ、道路の白線が右から左に流れていく。
車が止まらず回転し続けているようだった。
おそらく歩道の段差にぶつかって、ようやく車の動きが止まった。
天井が道路側になっている為、宙づり状態だったが、バックと携帯を何とか拾い首にかけた。
冷静になろう
一呼吸おいて、車から出ようと思った。
シートベルトは簡単に外せそうだった。
窓ガラスが無い為、小柄な私なら窓から出られる。
問題は…
車が大破した衝撃で足が挟まれ抜けそうになかった。
田舎で車社会なのと日中なのに救われた。
お互いの後続車がかなりいた。
中には工事車両もいて、すぐに人だかりが出来て救出作業をしてくれた。
一般人「大丈夫ですか?意識ありますか?」
私「大丈夫です。火花が見えました。炎上の可能性がありますので皆さん危険です。離れて下さい」
一般人「消防・警察・救急車は呼んだけど、田舎で場所が悪い。すぐに来ない」
私「ご連絡して頂き助かりました。ありがとうございます。危険ですので離れて下さい」
一般人「危ないからすぐに出すんだろ!!」
私「私の為に危険行為しないで下さい!!消防を待ちますので離れて下さい」
一般人「いつ炎上するか分からない。自分で出られないか?」
私「足が挟まれていて動けそうにありません。足が抜ければ窓から出れますので消防を待ちます」
一般人「意識あって会話出来る!!足が挟まれて閉じ込められている!!」
大きな声で人だかりに向かい叫ぶと工事車両の方達が鉄パイプのような物などを配りだし多くの男性が、てこの原理を使い足が抜けるように何とかしようとしてくれた。
小柄な私は少し隙間が出来ただけで抜けられそうだった。
一般人「出られないか?」
私「多分出られそうですが、足に力が入らず感覚が無いんです」
一般人「体を支えるから、シートベルトを外せそうかい?」
私「できます。外して良いですか?」
自力ではなく、周りの方達の力で窓から出してもらえた。
大破した車を見て、驚き「皆さん炎上の可能性があり命の危険があった中、助けて頂きありがとうございました。本当にありがとうございます」とお礼を伝えたが誰も現場を後にする人は現れず、救急車が到着するまで付き添ってくれていた。
脱出した後、携帯が使えるかすぐに確認する。
さすがガラケーだ。
破損個所が一切なく問題なく使用出来た。
一番最初にエリアマネージャーに連絡した。お願い繋がって…
T「休日にどうした?なんかあったか?」
私「事故しちゃいました」
T「はっ???普通に話せてそうだけだど、今病院か?」
私「車が大破して今車から脱出させて貰った所です」
T「大破?けがは?」
私「挟まれたせいか足が動かず感覚もないです。しばらく休暇になりそうですが大丈夫でしょうか?」
T「業務の心配してる場合じゃないだろ!!会社の事は心配するな!!救急車の手配はしているのか?」
私「後続車両の方達が連絡してくれたそうなので、こっちは大丈夫です。病院に運ばれると連絡がつかなくなると思います。引継ぎや確認事項はありませんか?」
T「仕事の事は忘れろ!!保険会社に連絡してやる事しっかり済ませるんだ。会社の事は一番最後で良いから、俺への連絡も後回しにするんだ。落ち着いたら入院先だけ教えてくれ」
私「わかりました。ご迷惑をおかけしますが宜しくお願い致します」
保険会社にも電話を終えた所で、救助してくれた一人が大声で怒鳴った。
一般人「事故の当事者はどいつなんだ!!」
すると歩道に腰掛け我関せずといった悪びれる様子もない態度で、たばこを吸っている老人男性が挙手をした。
一般人「救助活動もせず、警察や救急車も呼ばず、ずっと座りっぱなしで何考えてんだ!!相手は若い女性だぞ!!謝罪くらい出来ないのか!!」
老人「事故なんて毎年やっているし、こんな老人に出来る事なんてないよ」
一般人「事故起こしといてその態度はないだろ!!」
他の一般人が止めに入っていた。
相手に怪我がなく無事なのを確認すると、感覚が無い右足の事が気になっていた。
普段はスニーカーを履いているが、当時少し肌寒くなっていたので、ロングブーツを履いていた。
別の方が私に話しかける
一般人「意識保ててるかい?大丈夫?まだ救急車時間かかるみたい」
私「ありがとうございます。一つお願いがあります」
周囲の人が一斉に集まる。
私「右足の感覚が無いみたいなんです。もしかしたら、ブーツの中で千切れているかもしれないです。右足のブーツを壊して良いので脱がしてくれませんか?」
全員が焦り、既に靴から出血しているのがわかる。今靴を脱がせると出血死する可能性がある。救急隊員が来るまで我慢して欲しい等と口々に言い誰も足の確認をさせてくれなかった。
一番最初に警察が到着した。
私の所に足って駆け寄り、大破した車のドライバーで間違いありませんか?と尋ねられ、そうですと答えると救急車が到着するのを待つように言われたが、ふと冷静になった。
私「車には私一人でした。事故処理をする人間がいなくなりますが大丈夫でしょうか?」
警察官少し考えた後に「事故処理対応を頼める人を呼ぶことはできますか?」
私「事故時にいない人間でも良いですか?」
警察官「もちろんです」
私「探してみます」
救急車が到着したが警察が隊員に話しをし、私を乗せた後出発を待ってくれていた。
実家で携帯を持っているのは、夫婦で1台共有で使っている長男夫婦のみだった。
普段は義姉が持ち歩いている。
お姉ちゃん出て…
願いながらかけると、すぐに出てくれた。
義姉「忘れ物した?」
私「事故っちゃった」
義姉「え????」
私「今救急車の中で、事故処理する人がいなくなるから、誰か来て欲しいんだけど難しいよね?」
義姉「電話つなげたままちょっと待ってて!!」
電話から義姉の足る音が聞こえ、「お義父さん!!Mが事故って事故処理に人が欲しいって言ってる!!私行ってくるね!!」と聞こえたが、「保険金が出るから俺が行く。お前も着いてこい」と父の声が聞こえた。
義姉「お義父さんと長男が行くって!!場所どこ?」
父「かわれ!!」
義姉から電話をもぎ取ったようだった。
父「事故現場どこだ?」
私「魔の交差点」
父「警察は来てるのか?」
私「もう到着してて、救急車に乗ってるんだけど、事故処理の人が見つかるまで待ってもらってる」
父「すぐ行くから病院に行くように伝えろ」
私「ありがとう」
父「ありがとうじゃねぇんだよ!!保険金出るからに決まってんだろ!!面倒事起こしやがって!!」
面倒になった私は電話を切り、救急隊員に父と兄が来てくれるそうなので警察の方に伝えて頂けますか?と言い病院に運ばれる事になった。
救急隊員「今一番痛いのはどこですか?」
私「右足の感覚がありません。ブーツの中で千切れてるかもしれないです」
救急隊員「靴を脱がせますね」
私「お願いします」
救急隊員「見ない方が良いと思います」
私「大丈夫です」
チャックを開けて靴を脱がすと足の甲が折れているのか、千切れかかっているのか言葉で伝えられない程、見た事の無い形になっていた。
足の感覚が無いと思ったが、足の甲だけのようだった。
足の甲が見た事ない位置に複数個所、関節が出来たかの様に折れ曲がり車の振動に合わせてブラブラと揺れていた。
私「ブラブラしているのは千切れかけているからですか?」
救急隊員「詳しい事は検査しないと分からないので、止血の応急処置のみします。他に気になる場所はないですか?」
私「ないです。意識もありますし、吐き気などもありません」
救急隊員「今は症状が出てないだけの可能性もありますので、横になって下さい」
私「わかりました」
搬送中心の中で
右足は足首から下を切断になるだろう…
使えないなら捨てるしかない…
義足を作ったとして、いつ会社に復帰できるのだろう…
切断したら障がい者認定になるのだろうか…
会社の障がい者枠は埋まっているはず…
こんな形で足と会社を失うのか…
本当になんの為に私は生まれたのだろう…




