表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の話  作者: M
34/34

第二の職業 第十章~交通事故の代償~

事故後、地元に近い一番大きい病院に搬送された。

すぐに強く打っている可能性がある頭の検査から先に始まり足まで全身検査を受けた。

足の検査をしている時に医師が頭を抱えながら、映像を見せて説明してきた。

医師「複雑骨折だと思われるね」

私「切断ですか?」

医師「まだ検査中だから、結論は待ってね。それよりもね…」

医師「画面見える?画面位置変えようか?」

私「見えます。何かありましたか?」

医師「この白く映ったのわかる?神経に近い場所に金属が見えるんだよね」

私「取り除けない所に金属が刺さったって事ですか?」

医師「金属があって、取り除くのが困難なのはあっているけど、今の事故で、体内に入った金属じゃないんだよ。車の破片にしては小さ過ぎるし、何より刺さってから、かなりの時間がたっているんだ。筋肉が金属を覆うように固定しているみたいなんだけど、神経に近いし、いつ悪さをするのか分からない状況だね。この金属がいつ頃体内に入ったか心当たりはないかい?」


小さい頃、たこ焼きをクルクルする鉄製の棒を足に刺された時に先端が折れて無くなったんだ…針みたいに尖っているし、たぶんそれだ…

心当たりはあった。

しかし言える訳がない。


私「心当たりはないですね。どうせ取り除けないのなら、ほっといて大丈夫です」

医師「しかし神経に近すぎるんだよ」

私「難しいのなら切断してしまって構いません」

医師「それは最終決断だから、まだ検査させてね」

私「わかりました。職場復帰の時期が分かったら、すぐに教えて貰えますか?」

医師「さっき事故にあって大怪我しているんだよ?もう会社の心配かい?早いと思うよ?」

私「とにかく処置を急いで下さい」

医師「もう少しで全身の検査が終わるから待っててね」

私「ありがとうございます」


検査が終わり結果待ちの間、看護師さんが車椅子を押しながら付き添ってくれていた。

私「現金の持ち合わせが、そんなになくカードの限度額の関係があるので治療費の概算を教えて貰えますか?」

看護師「交通事故は初めて?」

私「そうです」

看護師は優しく微笑みながら「保険入っているよね?」

私「入っています」

看護師「割合によって治療費はMさんの保険会社か相手の保険会社から支払われるんだよ。だから保険証の提示も必要ないの」

私「そうなんですか???安心しました」

看護師「初めての事故は不安だらけだよね。大丈夫だよ」

私「安心したら気が抜けました。外の空気吸いに行っても良いですか?」

看護師「えっ⁉今はアドレナリンが出ていて痛みを感じていないだけだから、院内にいた方が良いよ?気持ちを落ち着かせると急に痛みが来て意識飛んじゃう可能性があるよ」

私「痛みには強いと思うので大丈夫です。これから手術になれば、ずっと外に出られなくなりますよね?今のうちに外の空気を吸いたいです」

看護師「わかったよ。緊急入口の横にベンチがあって、車椅子のスペースもあるから、そこまでだよ。それ以上は離れないでね」

私「ありがとうございます。わがまま言って申し訳ありません」


看護師さんが付き添ってくれようとしたが、一人になりたかったので、一人で大丈夫ですと断り車椅子を自力で進めて緊急入口に向かった。

ベンチの前に警備員の部屋があり視線が気になったので、当時はまだあった、喫煙所そばのベンチに向かった。

昼に実家を出たのにもう、夕日になっていた。

何も考えられずボーっと夕日を眺めていた。

すると「お話し聞かせて貰っても良いですか?」と上から声が聞こえた。

視線をあげると警察官が2人立っていた。

驚いて「優先道路でしたが、私に過失がありますか⁉相手の方に怪我はなさそうでしたが大ごとになっていますか⁉」とパニックになり尋ねた。

警察官「事故は初めてですよね?」

私「はい」

警察官「大丈夫です。落ち着いて下さい。交通事故は双方のお話を聞く決まりになっているので、形式的なものです。お医者さんから許可が出ましたので、話しを聞きたいだけですので安心して下さい」

私「パニックになってしまい申し訳ございません。初めての事で分からない事だらけです。何でも答えます」

警察官「ご協力ありがとうございます。病院側の配慮で部屋を用意してくれているので移動して頂いても宜しいでしょうか?」

私「もちろんです」


警察官と話している最中に父と長男が病院に到着した。

私達に気づかず、緊急入口に向かって歩いていた。

2人共満面の笑顔だった。

父「あいつの保険金5千万出るぞ。儲けた。儲けた」

兄「なんに使う?農具新しくしよう」

父「クソに休みなく実家に帰省させた甲斐があったな。絶対に事故してくれると思ったけど、せめて金持ちとぶつかれよな。もっと金入ったのに」


マズい…

警察官がいる…

思わず大きめの声を出す。

私「お父さん」


私の声に驚き父と長男が振り返り、顔を見た瞬間に「なんで生きてんだ…」と呟く

警察官から怒りのオーラを感じた。

警察官「今の会話は何ですか?車に細工されていないか確認が必要ですか?」

父「事故処理に行って、原形をとどめていない大破した車を見たら死んだと思うだろ」

警察官「死亡確認も取れていないのに不謹慎ではありませんか?」

父「家族の会話に部外者が入って来るな!!」


これ以上はマズい…

私「検査結果が出るとすぐに手術室に向かう事になると思います。急いでお話しして貰えませんか?」


警察官は怒りを抑え大人の対応をしてくれた。

父と長男を無視し私の車椅子を押して、病院が用意した部屋に向かった。

警察官「先程は感情的になってしまい申し訳ありませんでした」

私「いえ。私の意向を汲み取って頂き感謝致します。ありがとうございます」

警察官「事故当時の事を教えて貰えますか?」

私「殆ど見えてないです」

警察官「記憶が飛んでいるって事ですか?」

私「いえ…」

警察官「わかる範囲で良いんです。当時の時速など、わかる事を教えて下さい」

私「わかりました。あの交差点は信号がなく魔の交差点と呼ばれている事は知っていたので、交差点に入る前に規制速度になっているか確認し、法廷速度で交差点に進入しました。交差点に入ると運転席側の窓に黒いかたまりが見えた瞬間にドアが私に向かって凹んで迫ってきました。その後は上下逆さまになり、回転しながらしばらく動いていたと思います。おそらく歩道の段差にぶつかり車が止まったのだと思います。その後は、皆さんが到着される前に一般人の方々が私を車から引きずり出してくれました」

警察官「ぶつかってきた車については、どう見えましたか?一時停止の確認はとれていますか?」

私「一時停止の確認はわかりません。体感でお答えしても良いですか?」

警察官「お願い致します」

私「一時停止はしていないと思います。理由はぶつかってきた時の速度が体感ですが100キロは超えていたのではないかと思えるからです。一時停止をしていたら、交差点で100キロまで速度を上げる事は不可能だと思います」

警察官「ありがとうございます。目撃情報と一致しておりますので確認は以上となります」

私「目撃情報って私を救助して下さった一般人の方達の事ですか?」

警察官「そうです」

私「私が救急車で運ばれた後も現場に残り、証言までして下さったって事ですか

?」

警察官「そうなりますね」

私「なんて暖かい人達の集まりなんだろう…お礼を言いたいのですが方法はありますか?」

警察官「個人情報はお伝えする事が出来ませんので、探すのは難しいと思いますよ」

私「そうですよね…警察官の皆様、関係者の皆様、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。本当にありがとうございました。」

警察官「一点お伝えするのを忘れておりました。シートベルトをしていなければ即死の事故でした。今後もシートベルト着用を忘れないようお願い致します」

私「かしこまりました」


退室すると看護師が待っていて検査結果が出て、父が同意書などにサイン済みと聞かされた。

心の中で「即死」が何度も繰り返される。

また消えるチャンスを自分で失ってしまったのだ。


検査結果を聞きに医師のもとに行くと、

医師「足の状況がかなり悪い。ここの設備じゃ対応できないのでドクターヘリで県庁所在地の大学病院に向かってもらう」


小学生の頃、母に2階の窓から突き落とされ地面が土だった為、軽症ですんだ過去があり高所恐怖症になっていた。


私「ヘリコプターじゃないと無理ですか?高所恐怖症なので出来れば陸で移動して欲しいです」

医師「救急車で搬送しても良いけど、手術の時間が遅くなればなるほど無事な部分が壊死してしまう可能性が高まる。それでも陸移動を希望されますか?」

私「無理なら切断で良いので陸で搬送をお願いします」


そうして救急車で私が住む県庁所在地に向かう事になった。

もちろん同乗者も付き添いも誰もいない。


大学病院に到着し医師から温存する方針で進めるが最悪、膝から下を切断する事になると言われたが、どうでもよかった。

手術を終え意識を戻したら医師が来て、足は温存出来たがリハビリをする必要がある事、神経近くにあった金属は取り除けなかった事、金属が今後動くようであれば、最終的に切断する決断をしないといけない事を言われた。

リハビリをしても最後に切断するのであれば、先に切断してリハビリをしたいと伝えたが医師は頑なに拒絶した。

数日寝たきり生活をしていた。

エリアマネージャーからお見舞いに行っても良いか?と連絡が来た。

数日シャワーを浴びてない事を伝えたが、私が良いなら来たいと言われ了承した。

T「大変だったな」

私「ご迷惑ばかりおかけして申し訳ございません」

T「そんな事はどうでもいい事だ。有休なんて使えないんだから今使えばいい。話せる範囲で良いから詳細を教えて貰えるか?」

私「足の甲の神経近くに金属片があり筋肉が邪魔をして取り除けないそうです。金属が動かない限りは大丈夫みたいですが、動くようであれば切断になるそうです。最終的に切断するのであれば先に切断して欲しいとお願いしましたが断られました。右足首から下を全体的に骨折していますが、特に足の甲の損傷が激しいみたいでリハビリ生活になるそうです」

T「断る医者で良かったよ…体の一部を簡単に捨てちゃだめだよ。通院になったら休暇扱いでも早退や遅刻扱いでも何でも対応できるから不安な事があれば相談してくれ」

私「ありがとうございます。足に関しましてですが、最後に捨てるのであれば最初に捨ててリハビリをした方が早いと思うのですが…」

T「最初からあった物を失うのは精神的にも大変な事だ。まずは無くさないようにしよう。ご実家は遠いもんな。入院に必要な物などはどうしてるんだ?」

私「そうですか…入院に必要な物は売店で何とかしています。家族は母の事もありますので病院に来れないと思います」

T「売店になくて買って来て欲しい物があれば連絡してくれ」

私笑いながら「マネージャーにそんな事言えませんよ」

T「気遣いが出来てなかったな。転勤についてきた嫁の連絡先を教えるから、そっちに連絡してくれないか?女性同士なら言いやすいだろ?」

私「お気持ちだけ受け取っておきます。奥様もお子さんを抱えていますので私の事は自分でやります」

T「一応連絡先だけ置いていくよ。保険会社はどうだ?」

私「ありがとうございます。最悪ですよ。私と相手の保険会社同じだったんです。保険料を安くしようと結託されていますよ」

T「災難だな。会社で保険アドバイザー雇っているから、そっちに連絡しておく。困った事があったら保険アドバイザーに連絡すると良いよ」

私「そんな人までいたんですね。助かります。連絡します」

T「ご家族はMさんが帰省しなくなって大丈夫なのか?」

私「けが人に興味はないですよ」

T「そうか。大変な時に邪魔して悪かったな。何かあれば連絡くれよ」

私「お忙しい中ありがとうございました。何かありましたら私にも気兼ねなくご連絡下さい」

Tは優しく微笑みながら帰って行った。


リハビリが始まると地獄だった。

膝から下が硬直してしまい、関節が動かなくなってしまっていた。

脳から「曲がれ!!」「歩け!!」とどんなに指示を出しても、異物がついているかの様に伝令が伝わらず、歩くイメージが出来なくなってしまっていた。

このままではダメだ。と思いリハビリ時に私を支えるのではなく隣や前で歩き、関節の使い方などを脳に疑似的に伝える方法に変えた事により、一気に歩けるようになった。私は言われるより見て覚える方が得意なのでは?と初めての気づきもあった。


しかし足首より下を怪我してはいけない一番の理由の壁が私を阻んだ。

抜糸後、傷口が完全に塞がると内出血した血液が散らばらず、足首から下に溜まったままになるのだ。

足はうっ血によりパンパンに膨張し、皮膚が限界と言っているのに、まだ膨張しようとするのだ。

痛みに耐えられず何度も血抜きして欲しいと訴えたが、何度血抜きしても重力で内出血した血は足に溜まってしまうし、足は治りにくく細菌が多い為、傷口を作る行為は危険なので出来ませんと断られてしまった。

看護師さんは「他の部位だと内出血の血は毛細血管を通して散らばっていくけど、足は重力の力もかかって散る場所が無いから時間がかかるんだよね」と説明をしながら励ましてくれていた。

うっ血による膨張は治る気配がなく、リハビリしていても体重をかけるだけでビリビリとした痛みが走り歩行困難な状態が3カ月たっても改善しなかった。


松葉づえで歩けるようになった所で退院となったが、実家からYに連絡はなかったようでYは私が入院している事すら知らないようだった。

数カ月ぶりにYと顔を合わせると

Y「その怪我どうしたの?」

私「実家からの帰り道に貰い事故したの」

Y「なんで連絡一つしなかったんだ!!」

私「相当な事故だったから。お父さんと長男が事故処理してくれて私は直ぐに病院に運ばれて手術になった。あんなに仲良くしてたから実家の誰かが伝えると思ってたけど誰からも聞かされなかったんだ」

Yは悔しそうにしながら部屋を出ていき、看病をしたくないYは一切帰って来なくなった。

Yがいなくなり、せいせいした。


退院してから毎日リハビリに通うようになったが、保険会社から松葉づえで歩けるなら公共機関での移動が可能とされタクシー使用の許可が出なかった。

その為、会社に出勤するにも満員ラッシュに乗り誰かに足を踏まれないか恐怖しながら通勤していた。

ある日エリアマネージャーから「松葉づえで通勤は大丈夫か?」と聞かれ「正直通勤ラッシュに乗るの怖いです」と答えるとすぐに保険アドバイザーに連絡をし、保険会社にクレームを入れてタクシー移動OKの許可を取ってくれた。

私「ありがとうございます。大変助かりました。どうやったんですか?」

T「保険会社が一緒って聞いてたからな。事故が原因で足を負傷しているのに、保証しないのはおかしいだろ?正しい主張をしただけだ」

私「何度も助けて頂き本当にありがとうございます」


うっ血は治らず退院してから半年程たっても靴を履くことが不可能な程、膨張していた。

何とかスリッパを履けるようになっても、スリッパで締め付けられる部分が常に痛み松葉づえが無いと歩けない生活は1年以上も続いた。


まわりの助けもあり何とか仕事はこなしていた。

退院後3カ月程たち忘れた頃に父から電話が来た。

父「足は結局切断になったのか?」

私「なってない。リハビリしてる」

父「まだ入院してるのか?」

私「退院した」

父「職場復帰はしたのか?」

私「通院しながらだけど復帰した」

父「普通の日常を送ってるって事か?」

私「まだ松葉づえ無いと歩けない」

急に父は激高した

父「いつまでそんなもん使ってんだ!!甘ったれた事してるから歩けないんだろ!!そんなもん病院に返却して自力で歩けよ!!」

私「それは私じゃなくて医者が決める事でしょ」

父「本人が必要無いって言えば済む話しだろが!!」

私「言いたい事はわかったよ。何を言いたくて連絡してきた訳?」

父「そろそろ農作業出来るだろ?帰って来い!!」

私「やっぱり。内出血した血が足に溜まってパンパンに腫れあがっているの。靴もまだ履けない状況だし、運転も出来ないし、車も買いなおしてないし、リハビリと経過観察で通院しないといけないから、まだ帰れる状況じゃないよ」

父「役立たずだな!!」

私「そうだね。役立たずを頼ろうとしないで」

ガチャ切りで終わった。


松葉づえが取れ何とか自力で二足歩行が出来るようになるまで退院から1年以上かかった。

しかし、うっ血は引かず腫れあがっている足を無理やり靴に納める形でやっと痛みを我慢できる状況になった程度だった。

この間に母の精神状況は更に酷くなっていったようだった。

Yはチャンスとばかりに、相変わらず生活費も入れず財布からお金を抜き、車代も払わず日常を過ごし、松葉づえで掃除が大変だと言う文句に怒り家には寄り付かなくなっていた。


怪我は大変だし会社にも迷惑をかけてしまっていたが、実家からの干渉もなくYも寄り付かない。一番いい時間を過ごしたと思えた。


病院から完治を告げられ、足に後遺症が残ってしまったが車を運転しても問題ないと診断して頂き、また私の人生が変わる時が迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ