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私の話  作者: M
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第二の職業 第四章

家族に会社を否定され、孤独な私には仕事しかなかった。

どんな理不尽な事を言われようと、人格否定されようと仕事に誠実に向き合い、がむしゃらに働いた。

残業や休日出勤をすればするほど、給料でしっかり反映してくれる会社だった。

医療系しか知らない世間知らずな私は覚える事しかない。

私が勤務する支店では何の問題もなかったが、海外・全国に支店をもつ会社だ。

業務の過酷さに連絡が途絶え、消えていく社員や、顧客からの支払金を持ち逃げする社員などが度々現れた。

その為、社員調査を細目におこなう会社だった。

エリアマネージャー・支店長が社員を評価し、社員がエリアマネージャー・支店長を評価する、役職を持っても下からの支持率と統率力を評価される、最高な調査をしていた。

私が正社員になり、1年程たった頃、我慢の限界に達した社員が動いた。

「これは正直に提出しないといけない。支店長を支持しない人は支店長を引きずり落すのを手伝ってくれ」

それまでは、全ての項目を5段階評価で3にしてコメント欄には何も記載していなかった。そうゆう物だと思っていた。

私「そんな事して良いんですか?調査票って本当に誰が提出したかバレないようになっているんですか?」

OH「人事部に直接聞いたから、絶対にバレないようになっているのは確かだよ」

誰一人として支店長を庇う人は現れず、全員が賛同し、正直な思いを調査票に記載し提出した。

会社の対応は早かった。

提出期限の翌日には支店長に会長から直接電話が入り、本社に呼ばれた。

面談内容はわからないが、社長と会長2人が揃い、調査票をもとにかなり詰められたようだ。

そして、支店長は代理店勤務となり事実上クビとなった。

代理店は社名の使用許可を得ただけで、給料などは一切会社から出ず、個人事業主となる。

クビになった支店長の代わりにOが支店長に昇格した。

エリアマネージャーも管理不足となり違うエリアのエリアマネージャーとして転勤となった。

役職は一緒だが、事実上左遷という地域への配属だった。

役員不足により、本社の営業課の主任がエリアマネージャーとして赴任してきた。

職場環境が一気に良くなった。

残業は減らなかったが、社員が毎日笑顔で仕事するようになった。

エリアマネージャーも人柄が良く、偉ぶるどころか低姿勢でお客ウケも最高だった。

役職者は役職手当が出る代わりに残業代が出ない。

その為役職が就くと残業をしないのが当たり前だった。

しかし、新しく赴任してきたエリアマネージャーは違った。

「自分がいる時は女性社員よりも先に帰らない。深夜に帰っているのを知っているから、せめて女性社員が無事に会社を出るのを見届けてから帰宅する。家までは送ってあげられないけれど、女性が一人で深夜に歩く事に危機感を持つように」

という考え方をする人だった。

その為、残業をしている平社員、男女関係なく大人気だった。

男性社員は「僕らの心配はしてくれないんですか?」と冗談交じりに笑いながら言うと「男どもの事は知らん。自分の身は自分で何とかしろ」と冗談で笑いながら返していたが、聞くとエリアマネージャーは一番最後に帰宅していた。

支店長になったOもエリアマネージャーも愉快で明るい人だった。

当月売り上げが目標金額に到達すると、月末を待たずに会社でピザを発注し、営業にお酒を買いに行かせ仕事中に会社でパーティーを開いてしまうような人だった。

エリアマネージャーがいる時はエリアマネージャーが、支店長しかいない時は支店長が全額ポケットマネーで行ってくれていた。

前支店長の時から社内環境が一気に良くなり、社員の士気も上がった。

その為、私が勤務する支店は毎月目標達成した。

本社からの要求も高くなり、目標額も上げられたが、落としたのは数える程で、ほぼ達成していた。

内勤のボーナスは半年間の達成率によって金額が支給される。

その為、給料だけでもじゅうぶん貯金出来ていたが、ボーナスと言う大きい金額も貰えるようになった。

目標達成・給料・ボーナス全てに反映され、社内の士気はどんどん上がり一つにまとまりつつあった。

しかし、みんな同じにOHのプライドが許さなかった。

OHは支店長Oと肉体関係を持つようになり、エリアマネージャーにも本社での会話をひっきりなしに話し、みんなと自分は違うというアピールが強くなっていった。

OHはOと付き合っていると豪語していたが、実際はセフレのような感じで面倒な事を嫌うOに都合よく使われているようだった。

OHもOも独身だった為、仕事に持ち込まなければ、どうでも良かった。

社内恋愛禁止の会社ではない。

恋愛に興味もなく、人を愛する事を知らない私は社員を異性として見た事もなかったし、会社の人はあくまで仕事の付き合いと割り切っていたのでプライベートでも一緒という感覚が良くわからなかった。

OHの言動は業務に関係ない事はスルーして、自分の業務に毎日励んでいた。

会社は仕事をする場所。プライベートと仕事は無関係。という考え方だった。

実家への帰省も重なり、仕事で迷惑をかける訳にはいかない。

ケアレスミスを起こさないように仕事には毎日全力投球で打ち込んだ。

長年会社に勤め定年でパートになったベテランTさんから、まだ3年しかいなかったんだ!もう10年は努めているぐらいの貫禄だよと大げさに褒められるようになった。

そしてTさんから私の価値観にはなかった事を言われる。

T「Mさんって人の見た目や容姿について絶対に悪く言わないし、誰にでも分け隔てなく同じ対応できるよね。それってあなたの凄い長所だよ」

私「え?仕事に容姿は関係ないですし、私は人を差別できるような立ち位置にはいませんよ?」

T「そう。それ。仕事しているとね。必ず不平不満がでるの。そして人間って不満を誰かにぶつけるようになるの。でもMさんは入社してから下に新入社員が入って来て自分の業務が増えても文句ひとつ会社で漏らさず、上にも下にも同じ対応なの。働くと人は自分の立ち位置を見失って、自分勝手な不満が出るの。でもMさんは入社してからずっと自分の立ち位置を見失わず、人に平等に接する事が出来る。これは育ちの良さだよ」

私「私は決して育ちは良くないです。田舎育ちで世間知らずな人間なだけですよ」

T「もったいないよね」

私「何がですか?不快にさせてしまったでしょうか?申し訳ございません」

T「違う。違う。Mさんって褒められる事に慣れてないでしょ?」

私「そうですね。怒られることが多いです」

T「Mさんはもっと自分に自信を持った方が良い。褒めている事が伝わってない。褒められている事に気付けないのはもったいないよ」

私「褒めて頂けたんですね!!嬉しいです!!ありがとうございます。もっと仕事頑張ります。ただ私は差別をしないって当たり前の事をしているだけなので、あんまりよくわかってないです」

T「もっと素直に受け入れられるようになれば褒められている事にも気付けるし自信にもつながると思うから、Mさん自身が自分を認める努力をしたら良いと思うよ」

私「自分を認める努力ですか。まだまだですね。もっと仕事覚えて仕事量もこなせるようになったら自分を認められるかもしれないですね」

T「仕事の事だけじゃないよ。プライベートも含め全ての自分を認める努力をするの」

私「私の価値観にはなかった考え方です。できるかどうかはわかりませんが努力してみます。ご指導ありがとうございます」

T「私はMさんの事が大好きなの。相談にものるし弱音を吐かないMさんが心配でもあるの。プライベートな事でも何でも話し聞くから、悩みがあったら相談してね。私の影響力は知っているでしょ?」

私「影響力って怖いですよ。その時が来たら宜しくお願いします。本当にありがとうございます」


自分を認めてあげる…


家族からも同級生からもYからも否定されてきた。

今さらどうやって自分を肯定してあげられるのだろうか。

会社にいたら褒めてくれる社員や頼ってくれる社員がいる。

だが、会社を出たら私には否定の声しか向けられない。

仕事に集中している時だけ解放される。

仕事が終われば消えたいと消え方ばかり考えてしまう。

とてつもない超難問を出された感覚だった。

自分を認めてあげる方法がわからない。

私は私の事が大嫌いだ。

だが尊敬しているTさんの言葉をないがしろに出来ない。

その日はモヤモヤした気持ちで過ごしたが、仕事が終わり帰宅すると、その言葉は消えてしまう。

私は自分を認める事が出来なかった。


ある時、営業の一人から一杯だけ付き合ってとお願いされた。

いつもの事だ。

30分~1時間程話しを聞くだけだと思い承諾した。

そこで聞かされたのは衝撃だった。

支店長が変わり雰囲気が良くなり、みんな仕事に励んでいたので何の不満もないと思っていた。

しかし現状はOHの事をかなり疎ましく思っている人が多く、社内はOH派と私派で派閥が出来てしまっているという事だった。

飲んだ営業Aは私一筋だと笑っていた。

A「僕はMさんの後輩で入社しました。入社した時から仕事量の多さと残業量、覚える事が多くて何度も挫けそうになりました。ここまで続けられ独り立ちできたのはMさんがいたからです。Mさんは間違った事は違うとはっきり言うので最初は怖いと思った時もありました。でもMさんは嫌がらせだったり、いじわるで言ってない。愛情のある否定だとすぐにわかりました。困った時Mさんに相談したら何時でもMさんは真剣に話しを聞いてくれて、Mさんが努力して得た知識を惜しみなく簡単に教えてくれました。Mさんは新人に対しても上司に対しても同じ対応で新人からすると新人というより一人の人間として扱って貰える事が本当に嬉しかったです。俺は絶対にMさんを裏切りません」

という内容を聞かされた。

仕事を教えるのは先輩として当然だ。

上司だからといって媚びる事はしない。自分の仕事をするだけだ。

自分だって新人だった。Sさんがいなかったら今の自分はいない。

営業Aが言っている事は全て当たり前と思っていたので、感謝される意味が分からなかった。

私「Aくんの気持ちは素直に嬉しいよ。ありがとう。でもね私はトップになる器ではないの。だから派閥が出来る事は不愉快だな。みんなOHに従ってくれるとありがたいんだけど、どうかな?」

A「無理ですね。現状2:8ぐらいで8割がMさんを支持してしまっています」

私「そんなに⁉」

A「僕含め先輩達もOHには頼るな。借りを作るな。Mさんを頼れって動きが強まっています」

私「参ったな。私は力になってあげられないのに…私がいる事で会社の雰囲気悪くしちゃってるかな?私会社辞めた方がみんなの為になるかな?」

A「Mさんが辞めたらOHの天下になってしまうじゃないですか。誰もついていきませんよ。Mさんが辞めたら僕含め辞める社員多発しますよ」

私「ただでさえ人手不足で常に求人出している状態なのに独り立ちした社員が辞めてしまうのは困るなぁ。私は何をしたら良いと思う?できれば派閥なんて無くしてみんなで目標達成を目指して、達成したらみんなで喜ぶ。それだけでじゅうぶんなんだけどな」

A「OHが生まれ変わって、あの傲慢で自分勝手で自信過剰な態度を改めないと無理ですね。派閥だって作ろうと思って出来たのではなくて、気づいたらOH派とMさん派が出来ていたとう感じなんで、誰かが指揮をとって作った訳ではないんです。ちなみにパートのTさんもMさん派です」

私「Tさんも⁉Tさん程の人がそんな、くだらない派閥に参加すると思わなかったよ」

A「Mさん役職持つ気ありませんか?」

私「それは無理だよ。OHさんの方が先輩だもん。後輩の私が先に役職持つなんてOHさんが許さないし、何されるかわかったもんじゃないよ」

A「真剣に考えてみて下さい。OHの暴走を止めるにはMさんを役職者にして絶対的立ち位置を明確にしようという声も出ているんです。この会社は社歴で役職がつくわけではなく、推薦があれば統率力ありと見なされ役職がつくそうなんです」

私「ごめん。現状の私達って残業代で稼いでる部分が多いでしょ?役職持つと役職手当に変更され残業代がなくなってしまうから、生活が厳しくなるかもしれない」

A「金額の問題ですか?給料が同額であれば考えてくれますか?」

私「どうして後輩のAくんがそこまで聞くの?」

A「僕は代表で聞いているんです。僕たちの派閥には今は名前を出しませんが役職者もいるんです」

私「そうなの⁈なんでAくんなの?役職者がそうゆう話をしてくるなら私も信じられるけど、現状Aくんの話しのみを鵜呑みに出来ないかな」

A「Mさんがその気にならなければ、役職者は名乗り出る気はないそうです。もしこの話がOHに伝わってしまって、役職者も芋づるにバレてしまった時にOHは発狂するのがわかっているので、慎重になっているんです」

私「そっか。役職者になっても給料は同額に出来る力を持った人が派閥にいて、私派の人は私に役職を与えたいって事で良いのね?」

A「給料は同額じゃなくて昇給するって言ってましたよ。結論あってます」

私「考えとく。とりあえず拒否したって事にして貰えないかな?」

A「結論はいつ出ますか?」

私「会社の雰囲気が悪くなって、このままだと売り上げに影響が出るって事になったら真剣に考えるよ」

A「もうなっているんですけどね。今日は検討中にしておきます」

私「断った事にはしてくれなんだ」

A「しませんね」

私「わかったよ」

だた毎日自分の仕事をしていただけなのに派閥が出来ていた事、しかも派閥争いの中心にされていた事、全てが理解できなかった。

私はOHの後輩だ。

面倒な事には巻き込まれたくない。

毎日仕事して給料を貰う。

それだけで良かったのに。

それ以上を求めてなんていなかったのに。


そして私は実家に帰省しながら新たに発生した派閥問題を抱える事となった。

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