第89話 ためらう感情と本気の想い
その合図と共に、サティーニャ嬢は詠唱を唱えた。
「飛行!」
「風刻魔法!」
声高く言った彼女の身に風が吹きあげ纏うようにサティーニャ嬢を覆い尽くし、浮遊しては次の詠唱を唱えると、容赦なくその攻撃は僕に目掛けて飛んでくるのに僕は慌てて詠唱をした。
「水柱防御!」
間一髪、サティーニャ嬢の攻撃が水柱に当たったおかげで僕はそのまま攻撃を食らわずに済んだが、いきなり攻撃するサティーニャ嬢に僕は少しイラッときてきた。
(……話も聞かなければ、先に攻撃するとかなんなんだよ!?)
そう思ってしまう僕だが、名家出身の彼女には下手な真似は出来ないため、攻撃することが拒まれるせいで守りに徹するしかない。その様子に気づいたらサティーニャ嬢は僕への攻撃を辞め浮遊しながら腕を組み僕に言った。
「何をそんなに考えてるのです?」
「さっさと攻撃してくださらない?」
また不服そうな顔をしていうサティーニャ嬢に僕は少しだけ声のトーンを下げながら腕を組んで言う。
「さすがに名家のサティーニャ嬢には攻撃できないよ」
「しかも、女の子に怪我させてたら……傷跡が残っちゃうかもじゃん!?」
そう、サティーニャ嬢に言うとぽかんとした顔をしては次に声を上げて笑っていた。
「ゼフィール様はそんなことを気にしてましたの?」
「……そうだけど悪い?」
「いえ、悪くはありませんわ」
「ただ……」
その瞬間サティーニャ嬢の目は冷え、風刻魔法の攻撃の一部を僕の真横に落としてきた。
(……え?)
(今、攻撃……した?)
僕は頭が追いつかないなか、サティーニャ嬢の方を見ると冷えきった瞳のまま僕に告げた。
「心配してくださって嬉しいのですが……」
「あたくしの家柄が古代から続く魔術系なのはご存知で?」
「う、うん」
「……そう」
その時、サティーニャ嬢の瞳が酷く濁りきっては強く睨むように僕言う。
「では、家柄の事は触れないでくれます?」
「過去にゼフィール王国への多大なる貢献や功績を残し、王家でさえ手が出せない家柄だとしても」
「あたくしはあたくしの力でこのフレアリス魔法学園に入学しましたの」
「先程もおっしゃいましたが、権力や名誉など気にせずあたくしと戦ってくださらない?」
「あたくしはゼフィール様の実力を本気で知りたいのですわ」
その時、僕は思った。――濁りきった瞳なのに、どこか悲しさを隠せずにいる口元に微かに震える指先……この子は本気で権力や名誉を嫌ってる、そして僕と本気で戦いたいと。
「あー、もう!」
「本気でやればいいんだね!?」
「後悔しても知らないよ!」
僕は最後の忠告をするも、今度はキラキラとした瞳で僕を見てはコクコクと嬉しそうに頷くその様子に僕はため息を吐き、本気で戦う姿勢に入った。
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