第9話 事件の匂いと心配
今回少し長いです…!
───人身売買。
それは、幼い子供を攫い貴族などに売り飛ばし、酷ければ奴隷という扱いも受けてしまう極悪非道の行為のことだ。
人身売買は全王国が厳禁している。捕まれば無期懲役にまで上がるというのを本などの知識で知っていた。でも私は、"アレ"が人身売買と確証したのは、あの女の目の動き、行動、仕草、全ての行為が警戒や危険を隠そうとする時に出る行動、なにより手首を縛られ瞳に光がない子供は……、まるで"昔の私のようだった"。
私は気づけば体が勝手に動き、女と子供が入った路地裏へと向かっていた。ゼファーの声が聞こえないほどに……
★★★★★★
路地裏の壁から息を殺しながら覗くと体格のいい男一人、さっきの女が一人、子供が一人
……辺りを見回すも誰もいない。確認で探知を使うが誰もいなかった。……どうするのが正解なの?本当は今すぐにでも動きたい、でも。
そんなふうに思っていた時──
背後から気配がし、振り向くとゼファーが隣にいた。私は驚きで目を見開くもすぐさま冷静になりゼファーに伝える。
「今。人身売買の現場を目撃してここがそれが行われてる場所なの」
私が真剣な目で伝えるとゼファーも納得したが顔はしかめていた、私はゼファーに伝える。
「私は大丈夫です。ゼファーは騎士の人を連れてきて?」
そう伝えたが、ゼファーは目を見開き私の肩をガッ!──と掴んで小声で言った。
「バカなのか!?クロエ一人で行かせるなんて…!!」
そんなことをゼファーが言ってくれたが、今は"後処理"をする人が欲しい。私はゼファーになぜそうするのかを伝えると、納得したようなしてないような顔をするゼファーに最後に伝える。
「大丈夫、下手な真似はしないわ」
私はゼファーの背中を押し"早く行け"と伝えると意図がわかったゼファーは顔をしかめながらもすぐにこの場から離れた。
その時だった───
ドガッ!──何かを蹴る音が路地裏に響き渡り慌てて覗けば攫われた子供が女と男に蹴られていた。
………あー、もう。我慢の限界
私はその後飛行を唱え、三人から見えない空へと飛び、狙える位置から拘束魔法の応用……拘束銃を"無詠唱"で順に放つと見事命中した。そして身動きが取れなくなった二人の元に向かうと、青ざめた顔をしていた。私は飛行を解き、地に足をつけ表情がない顔で拘束された男たちに告げた。
「……人身売買、しましたよね?」
その瞬間──男と女の目が泳いだ。
カマをかけて見たが、その仕草に私は確信した。この外道らは"人身売買をしていた"。……不愉快極まりない行動に胸が焼けるようで気持ち悪い。そいつらを一発殴り返したい──そう思うがグッと堪え、笑顔で終わりを告げる。
「この魔法は簡単には解けませんの。"自白しない限りは"」
そう告げた瞬間───
ゼファーが騎士の人を連れて来たのを見つけ、私はそいつらを受け渡す際に騎士の方へ笑顔で事情説明と魔法の解く方法を告げた。
「なにからなにまでありがとうございます!!」
騎士の方は敬礼をし、子供とその場を去る際に私は幼い子供の手を握り、屈んで言う。
「大丈夫よ。君の未来は明るい、今が辛くてもきっと信じられる人があらわれるわ。これから先、楽しい未来が待ってる。頑張ってね」
優しく、警戒を解くように。笑顔でその子に伝えると涙を浮かべながら笑い、頷いた。
その後──騎士の方がその子を連れていき、この場には私とゼファーしか残らなかった。
「……ゼファー。ありがとう」
私は去っていく馬車を眺めながらゼファーに伝えるが返事は無い。視線を馬車からズラすと、ゼファーは泣きそうな瞳を私に向けていた。
「……強いからって大丈夫とか言うなよ。どれだけ、どれだけ俺が心配したと思ったんだよ!!」
ゼファーは心から叫ぶように私をじっ─とみながらそう言った。……考えたことがなかった、誰かに"心配される"ことなんて。私は強くならなきゃ自分やシルも守れなかった。
私は誰かが"心配してくれる"ことに胸がじんわりと熱くなると同時に、罪悪感が増してきてゼファーに謝る。
「ごめんなさい」
涙をこらえるのに必死で、俯きながら言うとゼファーは優しい声色で私に伝えた。
「よく頑張ったな。……明日から冒険者の初依頼だろ?今日は宿でゆっくり休め」
そう言ったゼファーはその後何も言わず宿まで一緒に来てくれて、笑顔で宿を去った。……頑張ったのか、私は。なぜかゼファーの声が心に住み着くようで離れない、でも心地がいい。今日は休もう、明日に備えて。
──クロエの感情はまだモヤで隠れてるが、いずれ知るようになるのをこの時のクロエは知らない。
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