第10話 子供の正体はまさかの!?
次の日の朝――。昨日のことが脳裏によぎり、なかなか寝付けないでいたけど、ゼファーと街探索をした時に買った冒険者用の装備と服を思い出し、すぐさま着替えた。
私は水鏡と唱えると、渦を巻いた氷と水がカチ……と姿見の形状へと変わりそこには私が映っていた。水鏡は氷・水魔法を複合させた特殊魔法で私が独学で学んで、身につけた魔法の一つでもある。
(……そっか、やっと冒険者になれたんだ)
胸の奥からふつふつと嬉しさが込み上げてくるのがわかった私は、水鏡を解いたあとパチン!と自分の頬を叩く。
「私はもう、クロエ・スティードじゃないわ」
「冒険者のクロエなのだから!」
――そう笑顔で言葉を零す、沈んだ心が軽い、楽しみで仕方がない。そんな感情ばかりが込み上げてくる胸の中で、カチカチと鳴る時計が視界に入った。
「あ!ゼファーとの待ち合わせしてたの忘れてたわ」
私は時間がないことに気づき、姿見を解いては荷物を慌てて持ちながら部屋を出た。
★★★★★★
息を取り乱しながらギルドに着くと、既にゼファーが掲示板を眺めてる様子に私の心はなぜか少しだけほどけていくのがわかった。
(……この感情がなにかはわからないけど)
(今は依頼の方を勧めなきゃ!)
私はゼファーの元に行くとゼファーも私に気づき、笑って手を振りながら近くまで来てくれた。
「よっ!体調は平気か?」
「ええ」
「それならいいが……」
ゼファーはなぜか目をきょろっとさせては、引きつった笑顔で私に小声で言ってきた。
「ほんと急で悪いが、シオンがギルド長室にクロエも連れて来いってうるさくてさ……」
「依頼前に一緒に来てくれないか?」
不満げそうな顔をしながら言うゼファーに私はなぜか笑みがこぼれてしまう。
(……ほんと、優しい人ね)
(でも、私まで呼び出されるのはなんでかしら?)
ゼファーのコロコロ変わる感情が面白くてなんだか警戒してた緊張がほどけることに私は不思議に思うが、気にせず私は笑顔で了承するとゼファーはリヒトさんに声をかけ、シオンさんがいる部屋まで同伴してくれた。
――そして、リヒトさんがドアを軽くノックするとガチャリと扉が開き、シオンさんが笑顔で招き入れてくれた。
「クロエ!わざわざありがとな」
元気な笑顔で言うシオンさんに私も笑顔で返すと部屋のソファへと座るように言われ、私とゼファーで座るとなぜかリヒトさんが部屋に防音魔法を唱えた。
私はただならぬ雰囲気だと思い真剣な瞳で二人を見つめると、その意図にわかったシオンさんとリヒトさんは真剣な表情をし、なぜか私とゼファーに頭を下げた。
「……昨日の人身売買の件、本当に助かった」
「あの子供は二ヶ月前に行方不明になったゼフィール王国の第二王子、ラヴィア様なんだ」
「私たちギルドも内密に探していたが見つからないところ、クロエが見つけてくれたと聞き本当に助かった」
「感謝してもしきれない」
スっと綺麗な礼で頭を上げた二人に私は胸が重く感じた。
(……そんな大事だと知らずに助けてしまった)
(だけど、あの子が私が言った言葉で光を戻したのは確かだった)
(あれは私のためだったのに)
心がずしりと重くなっていく感情に蝕まされそうになるのを堪え、私は笑顔で二人に言う。
「私は何もしていませんわ」
「私がしたくてしただけですので」
「褒美も何もいりませんよ」
そう心からの言葉を告げたら、リヒトさんとシオンさんは顔を上げ目をパチクリさせては、すぐさまいつもの笑顔になり私に言った。
「……ありがとな」
「もし何か困ったらいつでも言うといい」
「力になれる範囲で助けるからな!」
「僕もですよ、クロエさん」
その瞬間、私は涙がこぼれそうになるのがわかり、必死に抑え笑顔で頷くと二人も笑顔になっていた。
(……誰かに頼っていいって言われるの)
(いつぶりだったかしら)
(私は何もしてないのに)
心の奥の深い、わだかまりが少しづつ溶けていくの感じながら、私は笑顔でいたらゼファーがシオンさんたちに声をかけた。
「んじゃ、俺ら依頼受けなきゃだから」
「行くぞ、クロエ」
そう言ったゼファーはシオンさんたちの話も聞かずに私の手を引き、この部屋から出てはそのまま大広間へと向かった。
「ちょ、ゼファー!」
「そんな慌ててどうしたの!?」
私が少し大きい声で言うと、ゼファーはハッとした顔したと思いきやすぐに手を離し、曇った顔をして言ったあ。
「……すまん」
慌てて言うゼファーに私は首を横に振り、少し真面目にゼファーに聞いた。
「……なにか嫌なことがありましたの?」
「その、今は……言えない」
なぜか苦しそうな様子で言うゼファーに私はゼファーの瞳をじっと見つめ、微笑みながら伝える。
「無理に聞こうとは思いませんから」
「……ごめんな」
私が問い詰めるかと思ったのかゼファーは藍色の瞳を揺らし、目尻が下がった笑顔でまた謝っては苦しそうに笑った。
(……そんなに顔して謝まらなくても)
そう、胸がチクリと痛むが私は見て見ぬふりをし、ゼファーの隣を歩くとゼファーがまた曇った顔で私に問いかけた。
「てか、今日の依頼は薬草調達だけど」
「クロエはわかるのか……?」
「はい、薬草の知識は人並み以上あるのは自負してますので楽しみで仕方ないですわ!」
私が嬉々として答えるとゼファーはなぜか眉をひそめ苦い顔をしたあと、私に笑顔で言った。
「……そりゃよかった」
その表情がなにを表しているのか……私にはまだ分からないけど、今は薬草を探しに行けるのが楽しみで仕方なく私はゼファーと共に歩みを進め、依頼用の薬草がある場所へと向かった。
★★★★★★
「着いたぞ」
馬車に揺られて向かった先でゼファーの声の方に視線を向けると、そこは――水平線のような薬草の宝庫だった。
ここまでの読了お疲れ様でした!
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