第8話 月夜の涙と新たな事件
ゼファーが勧めてくれた宿に泊まり、寝る支度もできた私はベッドの上に座り窓からさす月夜を見上げながらふと思う。
「……シルやアル様、カラム様にも言わず国を出たのまずかったかしら」
ポツリ─と小さく呟くも夜風が言葉をさらってしまう。私は自分の決断力には自信がある方だけど時より迷ってしまう……、特に大切で大事にしてくれた人たちへの想いが本当であるほど考えてしまう。…そんなこと考えても答えがでないことはわかってる、わかってるけど…考えてしまう。
「……私はアル様、カラム様、シルのおかげでここまで生きてこれた。なのに、何も言わず出たのは私にとっていいことだったの?…本当にこれでよかった、かしら。」
その時だった───
頬に優しく雫がつたい、ぽたりと膝にこぼれ落ち自分が泣いていることに気づいた。……いつぶりに泣いたのだろう、泣いても無駄だ─と思ってから数年、我慢して…我慢して堪え前を向いてきたのに、なぜ今私は泣いているのだろう。呼吸が浅く、しゃくり上げてしまうほど涙はとめどなく溢れだす。
「……なかないで。だいじょぶ、だから。」
いつかのように私自身をぎゅ─と抱きしめ声を殺しながら"大丈夫"と心の中で唱える。…唱える続けると不思議に涙も心も落ち着きだした私はその後深呼吸をし、月夜を見つめながら届かない想いを月へとこぼす。
「……アル様、カラム様。今までありがとうございました。二人のおかげで私はここまで生きて、冒険者人生を歩めそうです。素敵な方たちとも出会えました、きっとお二人のおかげです。そしてシル、手紙だけ残して勝手に去ってごめんなさい。シルが幸せになれる選択をできること、私は心から祈ってるわ」
月に微笑んだあと、カーテンを閉め私はベットに寝転ぶ。…明後日から任務だから、明日はゼファーに案内してもらい街探索でもしようかしら。
──ゆらめく視界から瞼を閉じ、眠りの世界へと心地よく沈んでゆく。
★★★★★★
そして次の日──
私はゼファーにセルズの街を案内してもらっていた。どこもかしこも見たことない物や景色ばかりで全てが新鮮だった。
「ゼファー、この国すごいわね……」
私は真剣な眼差しでゼファーを見つめると、ゼファーは優しく微笑んだあと誇らしそうに告げた。
「だろ?…セルズの街はこの国で一番栄えてる街でもあり、貿易も盛んなんだ。市場も他の国で買えないものまで揃ってる、だから色んな人達がいるんだよな。」
最初は楽しそうに話してたのに、最後は伏し目がちな、どこか遠い目をして話をするゼファーに胸がチクリと痛む。……ゼファーは恐らく過去に何かしらあったのだろう、私がそれを知りたいなんて思ってしまうのは…無理な話だろうか。
そんなふうに思い、目を逸らしたその時──
キョロキョロと辺りを見回す挙動不審な女性と手を縛られた子供が路地裏へと入っていくのを目撃してしまい、私は嫌な予感がし走り出してしまった。
「クロエっ!?」
ゼファーの声が聞こえたが今は無理だ。
恐らく…アレは───
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