第4話 新天地と出会い
空から見える景色を半日以上堪能していたところ、王国の国境が見え、私は飛行を弱めながら森の中でふわりと着地する。
「……ふぅ、さすがに空を飛んでるなんてバレたらめんどくさいわね」
「それにしても、国境までの道のりはあっという間だったわ」
「事前に用意した地味な服装にして正解だったかしら」
私は自分の服装を見る。
襟と袖には藍色の模様が施され胸元からスカートにかけてあさぎ色を取り入れた長めのワンピースに赤茶の動きやすい靴。そしてシルから貰ったお揃いのネックレス。
(……貴族令嬢には見えないわね)
少しの自信をまといながら森を抜け、国境まで歩いて行くとガタイのいい騎士が門まできた私に声をかけた。
「お嬢さん、身分証はお持ちで?」
気さくなおじさんが私に笑顔で手を差し出してきたのに、私は笑顔でゼフィール王国の身分証を差し出すとおじさんは確認し、国境を通してくれた。
「気をつけて行くんだよ?」
「……えぇ」
おじさんは何気なく言ったその言葉に私は目をぱちくりさせたが、すぐさま笑顔で頷き国境を通った。
(……誰かからそう言ってもらえたのは、いつぶりだろう)
ほんの少しだけ、しんみりとした気持ちになった私は首を横に振り顔を上げては、王都にあるギルドへと街の馬車で向かった。
★★★★★★
馬車に揺られて乗り換えて……を繰り返しながら街の人と会話をしたりしていた頃、王都セルズに行きの馬車が目的地に着き私は馬車から降りると、そこはまるで別世界のようだった。
スチュワードでは見れなかった街中に聞きなれない陽気な音楽が流れ、その中にいるのはエルフ・獣人・人間などの色んな人種で人だかりが溢れかえっていた。
その様子を初めて見た私は、じわじわと胸が高なっていくのを感じては、思わずその場で立ち尽く周りを見てしまう。
「すごいわ……」
「っていけない!?」
「ジャスパーギルドを探さないと!」
私は急いで腰にかけてたカバンから地図を取り出したが、自分が今いるここがどこかわからず地図を回しては辺りをキョロキョロとしていたところ……後ろから噴き出すような笑いが聞こえ振り返るとそこには、身なりの良い装いをした細身な男が藍色の髪をなびかせて、屈託もなく笑っていた。
「あー、おもしろ……」
「お嬢さんさ、ジャスパーギルドを探してるなら俺が案内するぜ?」
私は思わず警戒態勢をとり、チャラそうな物言いをする男に一歩後ずさると、その様子に気づいた男はさっきまでの笑顔から一変し慌てて手を顔の前で振りながら言う。
「違うぞ!?俺怪しいやつでも変な奴でもないからな!?」
「確かにあんたの行動がおかしくて笑いはしたが……」
「どう見ても迷子なうえ、ギルドを探してたみたいだから案内しようとしたんだよ!?」
「だから、そんなに警戒しないでくれよ……!?」
焦ったと思いきや次には笑っている……そんなコロコロと変わる表情に私は少しの安堵をし、警戒を少し解いたが警戒心は持ち続け笑顔で男に聞く。
「そうでしたか、それは嬉しいですわ」
「ぜひとも案内して欲しいのでお名前をうかがってもよろしくて?」
私も笑顔で返すと男はすぐに笑みをこぼしながら名を告げた。
「俺の名前はゼファー」
「ゼファーって呼び捨てで読んでくれて構わないぜ?」
「ジャスパーギルドで冒険者しているからよろしくな!」
――名を告げるということは少しは安心していい証拠……だけど、まだ信用はできない。私は今までの経験上、変な輩は名前は告げないか偽名を使うかだったし裏切る者もいた。
だけど、この人は顔に感情が出てしまうようだから悪意はなさそうな気がして私も名を告げる。
「私の名前はクロエ、冒険者になりたくてこの国にいらしましたの」
「仲良くしてくださると嬉しいですわ」
私が藍色の瞳を見つめながら笑顔で言うと、ゼファーは屈託のない笑顔で頷きジャスパーギルドへと案内してくれた。
――この時の私は知らなかった、ゼファーとの出会いが私の人生を大きく揺るがす転機だったと。
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