第13話 王太子からのお礼
次の日の午後───
王宮の応接室に通された私とゼファーはただお互い静かにソファに座っているだけだった。……正直、怖い。自由な冒険者の立場を奪われるのじゃないかと思ってしまう。思考が渦を巻くように流れるが、無理やり思考を止め前を向く。
その時。応接室の扉がノックされカチャ─と開くと、白銀の長めの短髪に濃いアクア色の瞳。なにより優しそうな顔立ちが淡く儚い雰囲気を纏っていた。
その隣には恐らく側近の方だろう、色素が薄い黒の髪に片目は黒の眼帯で隠されている。淡い黒の瞳にはなにかを見抜く力があるような感じがした。
私とゼファーは立ち上がり礼をするが、その方は私たちに穏やかに言った。
「そんなかしこまらなくていいですよ。お礼をしたいのはこちらの方なので」
そう仰りながら笑顔で告げたリヴィア様に私とゼファーは礼を告げた。だけど私にはリヴィア様が笑顔を無理に貼り付けてるように見えてしまった。……私もそうだったから人の事言えないわ、王太子という立場なら常に警戒してないといけないのは確かだから。
そんな風に思っていた時──バタン─!!
とドアが開く音がし慌てて見れば十二歳くらいの男の子が息を切らし、顔を私に向けた時私はそこで確信した、光が戻った──と。
私は泣きそうなほど嬉しく、家族からも愛されたのだろう。と思いながらラヴィア様に微笑み返す。するとラヴィア様は目を泳がせリヴィア様の元へと走り、傍についた。
その時──リヴィア様の表情は優しい慈愛に満ちた笑顔でラヴィア様の頭を撫でていた。……このご兄弟は本当に仲がいいのね。そんなふうに思っていた時、リヴィア様が私たちに優しく…けれど強く言った。
「ラヴィアを助けて下さり、本当にありがとうございました。褒美も何もいらないというのはギルド長から聞きましたが、会って直接お礼をしたかったのです。…この度お越しくださり、本当にありがとうございます」
真剣な瞳で伝えられたその言葉に嘘は何一つ無かった。私は緊張が安堵に変わり優しく微笑み返しながらリヴィア様に告げる。
「いえ、私がしたくてしたまでですのでお気になさらないでください。この度はお呼びくださり誠に感謝いたします……」
私も笑顔で礼を告げるとリヴィア様は安堵したのか優しい笑顔で話し出した。
「本当にお優し方ですね。──アルの言ってたことがわかった気がする」
「え…?」
「いえ、なんでもありませんよ。ゼファーも来てくれて助かりました」
……小声でリヴィア様が何かを言ったが私には聞こえなく、話題をそらされてしまった。その時だった──
「……ク、クロエさん!」
言葉がつまりながらも大きな声が部屋に響き、声をするほうを見ると小刻みに震える手がリヴィア様の袖を掴んでいた。それでも真っ直ぐな瞳で私を見ながらラヴィア様が告げた。
「僕は、あなたのおかげで兄上の元に…か、帰れました。た、助けて下さり…ありがとうございます!!」
ハッキリと意志を持ちながら告げられた言葉に、私の胸の奥に矢が刺さるようで熱くもあたたかかった。……この子はこれから先強くなるんだろうな、無理はしないといいけど。
そんなふうに思いながら私はラヴィア様の背丈に合わせ笑顔で優しく告げる。
「こちらこそ。元気なお姿が拝見できて安心と同時に私自身も元気をもらいました、どうかお気になさらないでくださいね」
優しく、笑顔でラヴィア様に告げるとにっこりした笑顔で頷いてくれた。……この子はもう大丈夫、頼りになる方がいるのだから。
そして私たちはソファに座り、軽く話したあと王宮を後にした───
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