第11話 大草原で想い馳せる
私はこの広大な草原に目を奪われた。どこまでも続く青空に心地よい風が木々や草をさらっていゆく……、しかも。カラム様がおっしゃってた珍しい薬草からスチュワード王国にはなかった薬草が今目の前にある。
『クロエ嬢は本当に薬草がお好きなのね。わたくしの薬草知識でこんなに喜んでくれた方は今までいなかったわ』
……幼い時、王宮の出入りが可能だった頃。カラム様が優しい表情で私にそう言ったのを今でも覚えてる。薬草のお陰でカラム様やアル様と交流できたことは今でも忘れないほど、あの方々は私にとって命の恩人だったから。
ふと笑みがこぼれると不思議そうな顔をしたゼファーが私に声をかけた。
「…クロエは楽しそうだな」
またさっきと似たような表情をするゼファーに胸が苦しくなるが、笑顔で私は尋ねた。
「ゼファーは楽しくありませんの?」
私の問いにゼファーは頷いた。……私だけ楽しいのかしら、それはそうよ。薬草なんて薬師や医師が詳しいもの…。その後ゼファーはなぜ楽しくないかを口にした。
「俺はどんなに強くても薬草の知識だけは一切ないんだ。初依頼の時も取らなかったし今も取ったことがない、クロエと出会うまでは一人で冒険者をしてたからな」
笑顔で言うゼファーだけどその姿は強いのに、どこか淋しそうだった。なぜ一人で冒険者をしてたのか…喉元までその問いかけが出そうになるがグッ─と堪え笑顔でゼファーに言う。
「なら私がゼファーに依頼用の薬草と、依頼ではない薬草を教えますわ」
……カラム様が幼い時の私にしてくれたように、薬草の知識はあって損はないですもの。優しく笑うとゼファーもさっきの笑顔とは裏腹に心から笑う笑顔で頷いてくれた。
★★★★★★
「これが依頼用の薬草、ミレーナ草とレジーナ草ですわ。この薬草の効能はかゆみを止めたり、傷口を塞いだりする効果がありますの。……向こうの木々の近くで生えている薬草はララ草といって風邪の特効薬とも言われてるのですよ」
私は順に説明しながら言うと、ゼファーは物覚えがいいらしく頷きながらも新鮮な瞳をしており、とても楽しそうだった。
「他にもこの草原には私がいた国ではない珍しい薬草も沢山ありますの、もしまた時間がありましたら一緒に薬草探ししませんか?」
その問いかけにゼファーは目を見開きながらもどこか嬉しそうな表情をし、笑顔で頷いた。その後ゼファーは草原に寝転び、座っている私をみながら問いかけた。
「クロエはさ。なんで薬草の知識があるんだ?」
真剣な表情で言うゼファーに私はカラム様やアル様を思い浮かべながら伏し目がちな瞳で答える。
「……幼い時、私の命の恩人方が薬草の知識を私に授けてくださったのです。その当時の私はどれにも希望も楽しさも見いだせなかったので、とても新鮮で夢中になって聞いてましたの。…ですが、私が十二の時にその方々は多忙になってしまい滅多に会えなくなってしまいましたの」
……今でも覚えてる。頼れる人がいなくなった時私は知識はあっても無力だったこと、その時にシルが義弟になったこと、大事な弟のために魔法や剣を独学で学び始めたこと、あのクソ親父やバカ王子の元から開放されたかったこと、全てがそこから始まった。だけど、アル様やカラム様と出会えたことは私にとって一生忘れられない出来事だった。
その時だった───
頭に手が乗る感覚がし、振り向けばゼファーが苦しそうな表情で私をじっ─と見て私に告げた。
「……よく耐えたな。」
……あー、なぜだろう。ゼファーの言葉はすごく暖かくなり、同時に胸が苦しくなる。泣きそうになる、生きててよかったって思える。そう思うのはなぜなのだろう…。
目頭が熱くなるのが分かるがグッ─と堪え、笑顔でゼファーに言う。
「……ありがとうございます。そろそろ行かないと日が暮れますのでギルドへ向かいましょう」
私が立ち上がるとゼファーも立ち上がり二人並んでギルドへと向かった。
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