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レミーリア姫の黒騎士  作者: えながゆうき


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第3話 ラピスⅠコロニー

 アラームが鳴り、ギリアムはベッドから起き上がった。そのままキッチンへ向かうと、軍用レーションを食べる。

 そんなにおいしい食事ではないが、日持ちするためにギリアムは常用していた。

 食事を終えると、身だしなみを整えるべく洗面台へと向かった。


 鏡に映るのは両サイドを刈り込んだ短い髪。そして無精ヒゲ。四十代の男としては標準的に違いない。

 お姫様に会うのなら、もう少し身だしなみを整えた方がいいだろうか? そう思ったギリアムは丁寧にそのヒゲを剃った。


 これでよし。これなら若い子にも、不潔だなんだと言われることもないだろう。

 そのままコクピットへやって来たギリアムを見て、HGは眉をひそめた。もっとも、HGはAIなので、顔なんてものはないのだが。


『まさか、その顔でレミーリア姫に会うつもりじゃないですよね? 間違いなく、レミーリア姫にほれられると言明します』

「どうしてそうなるんだよ。年齢差を考えろ。そもそも、正面から会うつもりはない」

『その行為は危険です』

「仕事だ。許可はもらっている」


 今回の任務について、HGに話すべきだろうか? だが、マザーがザザン共和国とつながっていないという保証はどこにもない。

 HG、いや、この銀河に存在するすべてのAIは、何かしらマザーとつながっているのだ。余計な情報を与えるのはよくない。


『申し訳ありませんが、これ以上のサポートはできません。マザーから切り離されない限りは』

「それでいい。ここからは俺の仕事だ」


 予定どおりに惑星ミランダの一つ前の惑星に到着したギリアムは、その惑星を周回するコロニーへと宇宙船の進路を向ける。

 そこは傭兵ギルドがある円柱型のコロニーではなく、ドーナツ型のコロニーだった。


 宇宙港からコロニー内へ入ると、そのまま買い出しへと向かう。そのついでに、ラピスⅠコロニーにある学園について調べた。

 学園については、特に秘密にされているということはない。だが、学生名簿については閲覧することができなかった。


 ギリアムは次々と建物の構造や、どこに何があるのかを頭の中へ入れていった。AIが使えないのであれば、自分の力でどうにかするしかないのだ。

 もちろん、AIから切り離された電子機器なら使うことができる。無線通信を行わなければ、マザーに気づかれることもない。


「姫様の部屋がどこなのか分かればよかったんだがな。こればかりは現地に行って調べるしかなさそうだ」


 そう結論づけたギリアムは、念のため、売店で発信器を追加で購入する。

 HGが知らないことから、今回の任務はまだ、だれにも知られていないと判断した。それはつまり、共和国にもまだ知られていないということである。

 救出作戦が成功する可能性は高い。レミーリアのじゃじゃ馬度にもよるが。


 ギリアムはついでに近隣の勢力図についてもザックリと調べた。あまり深く調べると怪しまれる可能性がある。動きすぎるのはよくない。

 しっかりとカモフラージュしつつ、特に共和国の戦力について調べておいた。


 ラピスⅠコロニー付近に大規模な戦力は展開していない。それは銀河帝国も同じである。お互いが通商連合に配慮した形である。

 そのため、通商連合の艦隊数も、それほど多くはない。通商連合の艦隊の目をかいくぐりながら逃げきることは可能だ。

 ギリアムの乗る宇宙船に追いつくことができるのは、軍の中でも、最新鋭の宇宙船だけである。そのことはHGを通して、すでに確認ずみだ。


 準備を整えたギリアムは船に戻ると、進路をラピスⅠコロニーへと向けた。

 ここからさらに本格的に調査を開始することになる。願わくば、救出作戦が終わるまで、共和国に動きがないのが望ましい。だが仮に動きがあったとしても、それはそれで強奪すればいいだけなので、なんとかなるだろう。そう思っていた。


 ラピスⅠコロニーに到着したギリアムは船を宇宙港に停泊させると、コロニー内を歩き回った。

 もちろん目的地である学園がある場所は調査ずみである。コロニー内を歩きつつ、どこから侵入するか、どこから逃げるか、どこから自分の船に乗るかを計算していた。


 HGに調べてもらったレミーリアの写真も役に立った。ブロンドの短い髪に、少しつり上がった目。見た目は誇張なしで美しく、間違いなく、男性からの受けもいいだろう。

 そう思って調べてみると、すぐに情報が手に入った。レミーリアはそれなりに派手に動いているようだ。


 それなら共和国の目についてもおかしくはない。何せ学園には、共和国からの学生も通っているのだから。その中には、お偉いさんの子供もいるに違いない。

 普通なら、身の安全のために、目立たないように行動するように思えるのだが、レミーリアは違う感覚をお持ちのようだ。

 なるほど、HGがじゃじゃ馬姫と評価するわけだ。ギリアムは納得した。


「念のため拘束具を買っておいて正解だったな。HGからは白い目で見られたような気がするが」


 もちろん気がするだけである。HGにはカメラはあっても、目などはないのだから。

 学園とレミーリアについての情報を探る際、もちろんギリアムはヘルメットなど被っていない。服装も黒から、紳士服に着替えていた。


 下準備を終えたギリアムは一度船に戻ると、ラピスⅠコロニーから旅立った。

 逃げる際に、宇宙港から逃げることはできない。すぐに閉鎖される恐れがあるからだ。そのためギリアムは別のルートから、再度、ラピスⅠコロニーへ入ることになる。

 正規のルートではないので、侵入する、と言った方が正しいだろう。


『馬子にも衣装ですね』

「それはどうも。だが、サービスタイムは終わりだ」


 すぐにいつもの戦闘服に着替えると、ラピスⅠコロニーのレーダーに感知されないように、レーダージャマーとミラージュ迷彩のスイッチを入れる。これでギリアムの宇宙船は、極めて発見されにくくなった。


 その状態で、エンジンを起動させたときの慣性を利用して宇宙船を操り、音もなくラピスⅠコロニーに張りついた。

 現段階で、ギリアムの船がラピスⅠコロニーに張りついていることに、だれも気がついていなかった。

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