第18話 救出
「何よ、今の揺れ。何かあったみたいね。でもこれはチャンス……ねえ、ちょっと、何が起きてるのよ!」
レミーリアが扉をたたく。すぐに扉の前を守っている兵士から返事があった。その様子から、兵士の焦りがレミーリアにも手に取るように分かった。
「お前はその部屋でおとなしくしていろ! 妙なことを考えるなよ!」
「分かってるわよ!」
そう言いつつ、レミーリアはベッドの方へと移動する。兵士に余裕はない。混乱している。この混乱に紛れて逃げ出すのなら今だろう。うまくいけば、小型船で逃げることができるかもしれない。操縦ならギリアムから教わっている。
「まさかあのトレーニングが、こんなにも早く役に立つ日がくるとはね。そしてこれも……」
レミーリアは監視カメラの死角でしゃがみ、靴下に挟んであったレーザーカッターを取り出した。そして足下の金属版の継ぎ目を切断し始めた。
レーザーカッターはその力を十分に発揮し、レミーリアはあっという間に金属板を取り外した。
「うん、私って、才能があるかも。ここから床下の配管を通って移動すれば……」
レミーリアはレーザーカッターを片手に、薄暗い通路を歩き始めた。
しばらく進むと、レミーリアは広くて明るい空間に出た。そこは整備用の通路である。近くから聞こえる足音は、どれも走っているかのようだった。遠くから、何か叫ぶような声も聞こえてきている。
「なんだか、とんでもないことが起きているみたいね。うまく格納庫付近まで移動することができれば、可能性はあるかも。なかった場合は……国に迷惑をかけるわけにはいかないわよね」
「そこで何をしている」
「ヒッ! って、ギル! どうしてここに!? よかったあ。ギル!」
声に驚いてレミーリアが振り返ると、そこにはギリアムの姿があった。それを見て安心したレミーリアは、うれしさのあまり、その感情を爆発させてしまう。レミーリアは思いっきり、ギリアムに飛びついた。
それを慌ててギリアムが抱きかかえる。
「おいおい、少し落ち着くんだ姫さん。ここは敵陣の中だぞ。それに、帝国の姫がやる行為じゃない」
「そんなこと気にしないわ。来てくれると思ってたわ、私のナイト!」
「……何を言っているんだ。俺は騎士じゃない。死神だぞ」
ギリアムはしがみついていたレミーリアを床へと下ろす。感動的な再会シーンかもしれないが、今はそんなことをやっている場合じゃない。
さすがにそのことはレミーリアにも分かっていた。
「どうして私の場所が分かったの? やっぱり愛の力かしら」
「全然違う。姫さんの持っているレーザーカッターだ。それに発信器を仕込んでおいた」
「……ちょっと」
レミーリアの目が細くなった。それは一歩間違えればストーカーではないか。やっていることが、学生証の仕組みと同じである。せめて一言、言ってほしかった。
だがしかし、ギリアムは悪びれることもなく、言葉を続ける。
「こんなこともあろうかと思ってな。姫さんがそれを捨ててなくて助かった」
「捨てるわけないでしょう! ギリアムがプレゼントしてくれた物なのに!」
「おい、だれかそこにいるのか!?」
レミーリアの声が聞こえたのか、整備用の通路の扉が開く。兵士が中をのぞき込んだ瞬間、赤い光が走った。扉を開けた勢いのまま、兵士が倒れる。
その様子をレミーリアが無言で見つめていた。
「姫さん、目をつぶっておいた方がいいかもな」
「大丈夫。見慣れているわ。ホログラム映画でだけど」
「それは頼もしいな。船に戻るまで、俺の指示に従え」
「分かったわ」
整備用の通路に出ると、異変を感じた兵士たちがギリアムを見つける。だが、兵士たちの撃ったレーザーはギリアムには当たらない。その一方で、ギリアムの放ったレーザーは兵士の眉間を撃ち抜いた。
バタバタと兵士たちが倒れて、動かなくなる。周囲の音が急に小さくなった。
「姫さん、出てきていいぞ。あと、戦っているときは頭を出すな。危ないぞ」
「ねえ、どうして相手のレーザーは当たらないの?」
「俺の話を聞いてたか? 当たらなくて当然だ。相手の銃口を見れば、どこにレーザーが飛ぶのかが分かる。だから自分に当たるレーザーからだけ逃げていれば、当たることはない」
「うわ、理論的にはそうかもしれないけど、それを実現できるのは変態だけよ」
「それはどうも。ほら行くぞ。次はあの角まで走って移動だ」
兵士に見つかったことで、自分たちの場所は相手に伝わったとみて間違いない。それならば、少々危険だとしても、船までの最短距離を移動した方がいい。ギリアムはそう判断した。




