第15話 金のゆくえ
レミーリアを無事にバロン公爵のところへ送り届けてから一日が経過した。
いつものように操縦席へ座り、また傭兵ギルドから厄介な指名依頼が来ていないかと確認していると、ピタリとギリアムの手が止まった。
『どうかしましたか、マイロード?』
「おかしい。入金がまだだ」
『調査します。はい、間違いなく、まだ入金されておりません。傭兵ギルドへ問い合わせますか?』
「傭兵ギルドにつないでくれ。できればヒルダに」
『了解です』
こんなことはこれまで一度もなかった。任務が無事に遂行されたことが分かれば、どんなに遅くとも、十二時間後にはギリアムの口座に依頼料が振り込まれていたのである。
それはギリアムだけでなく、傭兵ギルドに所属している傭兵たちのだれもが同じだ。
傭兵はいつスペースデブリになるか分からない。収入を家族や仲間に残すために、速やかなお金の受け渡しが求められているのだ。
悪い予感を抱きつつ、ジリジリしながら待っていると、ようやく傭兵ギルドのギルドマスターであるヒルダと連絡がつながった。
「依頼は達成した。なぜ振り込みがない。まだ連絡が行っていないのか?」
『ギル、落ち着いて聞いてちょうだい。確かにバロン公爵家から、任務が無事に達成されたという報告があったわ。でもね、お金がまだ振り込まれていないのよ』
「どういうことだ?」
『ギルが宙域を離れてからすぐに、バロン公爵の艦隊へ大規模な宙賊の襲撃があったのよ』
「バカな」
宙賊のオンボロ宇宙船が束になったところで、戦艦に勝てるはずがない。それどころか、戦艦の周辺に展開している軍艦にさえ勝つことは難しいだろう。
そんなバカなことをする宙賊はいない。たとえいくらお金を積まれようともだ。
『バロン公爵家の生き残りの兵士たちがそう証言しているわ。その戦いで戦艦が大破して、バロン公爵は亡くなったわ。そしてレミーリア姫は行方不明よ』
「冗談もほどほどにしろ、ヒルダ。戦艦を宙賊が落とせるはずがない」
『そうね。私もそう思うわ』
ではだれが攻撃を仕掛けたのか。聞くまでもなく、すぐに答えは出た。少し前に宙賊に偽装してこちら側に攻撃を仕掛けてきた共和国で間違いないだろう。
どうやらやつらは、宙賊に偽装すれば、何をしてもいいと思っているらしい。
「……まあいい。それで、俺の依頼料はどうなるんだ? まさかタダ働きじゃないだろうな? 俺の依頼は間違いなく達成したぞ」
『……もちろん出すわ。ただ、入金にはもう少し時間がかかるわね』
「そうか。分かった」
ヒルダとの通信を切ると、ギリアムは天井を見上げながら操縦席に寄りかかった。そしてこれまでにないほど、大きなため息をついた。
そんなギリアムの様子に、さすがのHGも何も言うことができなかった。




