第12話 スペースデブリ
「時間稼ぎをするってことは、逃げ回ることになるのよね?」
「何を言っているんだ、姫さん。全員、スペースデブリにするに決まっているだろう? ゴミは始末しておくに限る。手間賃程度だが、掃除代も入ってくるしな」
ギョッとするレミーリア。まさかこの人数を相手に戦いを挑むとは思わなかったからである。
共和国軍の船とギリアムが戦ったのを確かに見ていたし、その身で体験した。だが、そのときは三隻。今回は十隻である。しかも中型船まで混じっているのだ。
「だ、大丈夫なの?」
「当然だ。俺をだれだと思ってる?」
「それは……」
『スケベオヤジ』
「断じて違う。いい加減にしないとマザーに訴えるぞ? ほら、今度こそ、口を閉じてろ、姫さん。飛ばすぞ。HG、盗聴開始!」
『サー、イエッサー』
ハイペリオンがさらに速度を上げる。モニターに映る赤い点がドンドン近づき、大きくなってくる。
そのころになると、宙賊はようやく、後ろから急接近する宇宙船に気がつき、その船が普通でないことに気がついた。
『おい、俺たちを追いかけてくる船があるぞ。なんか、速くないか?』
『なんだよこの速度。本当に宇宙船か!? ミサイルか、隕石の間違いじゃないのか?』
『宇宙船だ。それも、とんでもなく速い宇宙船だ! あんな速さで操縦できるのかよ。おい、分散しろ。まとめて狙われるぞ!』
バラバラと宙賊の船が移動を始める。だがしかし、すぐにギリアムたちの乗る船が追いついた。
射程圏内に入ったところで、船首にある二本のレーザーキャノンから、緑色の光線が発射される。
それは一本ずつ、宙賊の船に命中し、瞬く間に爆散した。
「相変わらずもろいな。シールドをケチるからだ」
「すごい……」
そのまま速度を落とすことなく、次の獲物へと接近する。
今度は宙賊の船の間を通り抜けながら、船の上下にある、半天型のレーザー砲をそれぞれ連射する。
レーザー砲の連射に耐えきれず、さらに二隻の船が爆発四散した。
『なんだよあの黒い船。やべえぞ!』
『お、俺、あの黒い船、見たことがあるかも』
『お、俺もだ。あの船、ハイペリオンだよな? ブラックリーパーが乗ってる……』
『ミ、ミサイルだ、ホーミングミサイルを使え! 出し惜しみはなしだ!』
その大きさにゆえに、進路変更に時間がかかっていた中型船のミサイルハッチが開いた。
中型船のレーザータレットからは絶え間なく攻撃が続いているが、回避行動を取っている、ハイペリオンのシールドを削ることさえできていなかった。
「敵さんは虎の子のホーミングミサイルを使うみたいだな」
「さ、さすがにミサイルは当たるとまずいわよね!?」
「まあそうだが、当たらなければ、どうと言うことはない」
「ヒッ」
『心配はいりませんよ、プリンセス。この船のシールドなら、ミサイルの一発や二発では沈みませんから』
そうは言っても、怖いものは怖い。それに、三発当たったらどうなるのか? そう聞くこともできず、レミーリアはシートにしがみついた。
正面の二隻の中型船から、ホーミングミサイルがシャワーのように発射される。いくつもの赤い光が、こちらを目指して飛んできた。
半天型のレーザー砲が射撃を開始し、いくつものホーミングミサイルが破壊される。だが数が多く、すべてを破壊することはできなかった。
残りのホーミングミサイルを回避するべく、船が急角度で曲がる。
これまでにない重力がレミーリアを襲う。だが、声を上げることができなかった。
船が回避行動をとっても、ホーミングミサイルはそれを追いかける。船は今、ホーミングミサイルに追いかけられていた。
「HG、フレアだ」
『フレア、了解』
ハイペリオンの後方から、欺まん用の熱源がいくつも放出される。それを誤認したホーミングミサイルが次々とつられていき、そのまま爆発する。
それでも残っていたホーミングミサイルを、後方までグルリと旋回した半天型のレーザー砲で破壊する。
「ミサイルは全部打ち切ったみたいだな。あとはあの大きなゴミを始末するだけだ」
「シ、シートベルトがあってよかったわ」
「もう少しだけ辛抱してくれ」
中型船に向けて進路を変更する。そこはちょうど中型船からは死角になっており、レーザータレットからの攻撃が届かない位置だった。
そのまま中型船の下に入り込むと、レーザーキャノンを発射して、一隻、二隻と落としていった。
『ありゃバケモノだ。逃げろ! エンジン全開だ!』
『おい、こっちにくんじゃねえ! 向こうに行け! クソ、クソー!』
これ以上はレミーリアの教育に悪いと判断したギリアムは、通信を切った。
だがしかし、ギリアムの追撃は終わらない。ここで宙賊を生かしておくと、犠牲者が増えるだけである。慈悲はなかった。
そうしてギリアムが逃げ惑う宙賊の船を撃墜していると、星系軍が到着した。それにより包囲された宙賊は、ほどなくしてそのすべてがスペースデブリとなったのである。
ハイペリオンの出力を通常航行モードに切り替えたところで岩窟丸から通信が入る。
『助かったぜ。あんたのおかげで命拾いした。報酬はキッチリと払うから、少し待っててほしい』
「了解した。楽しみにしている」
岩窟丸からの通信が途切れ、次は星系軍からの通信が入る。
所属と名前を言ったところで、明らかに態度が変わった。ギリアムの名前は星系軍にも知れ渡っているのである。そして、敵に回してはいけないことも知れ渡っていた。
そのため、事情を話したところですぐに解放され、後処理は星系軍が請け負ってくれることになった。




